木材建築が多くみられる日本だが、実は日本の特殊性はその工法にも表れている。ではその理由はどこにあるのだろうか。また、木材流通におけるビジネス的構造にも注目すべき点がある。今回は、木材流通の川下、すなわち建築や工務店の立場から「木材を使うこと」について見ていこうと思う。

画一的な木材で効率化するアメリカ、資源を最大限活用する日本

下図を見ても分かるように、日本の戸建住宅は木造が主流だ。木造といっても軸組工法や2×4工法、木質パネル工法などさまざまな手法があるが、中でも国内では軸組工法が古くから浸透している。

2×4工法は、2インチ×4インチの断面寸法を多用して建材とするのに対し、軸組工法は柱・梁・桁・垂木・間柱・土台など、場所に応じてさまざまな寸法の木材を用いる。この多様な断面寸法から形成された軸組工法が日本の住宅の多くを占めており、コストの効率化を阻んでいるとも言える。

  • 日本国内における新設住宅着工個数と木造率の推移を表したグラフ

    日本国内における新設住宅着工個数と木造率の推移を表したグラフ(出典:令和元年度 森林・林業白書)

  • 平成30年度の新設住宅着工戸数における建て方・構造別のグラフ

    平成30年度の新設住宅着工戸数における建て方・構造別のグラフ(出典:国土交通省「住宅着工統計」)

2×4工法はアメリカから輸入された工法であり、建築の手間やコストなどにおける合理化が図られた工法だ。一方の軸組工法は、前述したとおり複雑で手間のかかる工法である。

しかし、ここで見方を変えてみよう。

丸太からできるだけ多くの建材を得るために、製材する方向や位置を決定することを「木取り」という。この木取りが効果を最大化すれば、1本の丸太からより多くの建材を得ることができる。日本で軸組工法が広まった要因として、1本の丸太から柱・垂木・板物をとるなど、資源を最大限活用するために、さまざまな断面寸法の木材を使用することになったという見方もある。そして、複雑な寸法を適切に組み合わせ、建築物の構造的な安全性を確保する工法こそ、軸組工法ではなかろうか。

すなわち、丸太の最大活用から考えられた建築が軸組工法、という見方に変えることもできる。これらを踏まえると、日本は丸太を無駄なく使うという思想から生まれた工法が浸透しており、それを可能にする木材生産体制が整っている国とも捉えられる。

国産材を使うことで川上の事業者は潤うのか

資源の活用体制が整っているともいえる日本において、国産材を使うことはよいことなのか、について改めて触れてみたい。前回の記事でも触れたが、現状日本において丸太価格は低空飛行を続けており、補助金ありきの木材生産体制だ。では、丸太価格を上げれば川上が潤うのだろうか。

たしかにそれも1つの解であろう。ちなみに、丸太1本あたりの価格を皆さんはご存知だろうか。末口(木の先端側の径)24cm、長さ4mの丸太で、スギの丸太価格が13,000円/m3と仮定すると、

  • 材積(m3):242×4×10-4≒0.23
  • 価格:13,000(円/m3)×0.23(m3)=2990円

となる。つまり、1本あたり約3000円だ。

約半世紀かけて育てた丸太がこの価格だ。この価格に対して高いと感じるか安いと感じるかはさておき、丸太価格を上昇に転じさせれば川上が潤う可能性もありそうだ。

そして、平均的な木造住宅に投じられる木材量は約24m3とされている。住宅すべての部材を4mの丸太でまかなえると仮定し、丸太から製材品にする際の歩留まりを60%だとすると、1棟あたり約52万円分の丸太が使用されることになる。つまり計算上では、住宅価格を約52万円上昇することができれば、丸太の価格を2倍にできるのだ。