FX.php/APIの違い - レコード検索(7)

FX.php/APIの違い - レコード検索(2), (3)で作成した2つの検索/一覧PHPを使用し、動作のパフォーマンス・サーバにかかる負荷を比較する。検索パフォーマンス比較の最後は、レコード総数を500,000件に増やした環境下で結果を検証する。

今回比較した環境について

これまでの検証結果から「ソート」や「計算・集計フィールド」、「配置するフィールド」の使い方に注意することで、総レコードが50件でも5,000件でもそこまでパフォーマンス差は表れないことがわかった。

FileMakerはレコード数が多いとパフォーマンスが落ちやすいとよく言われる。FileMaker Serverで公開されているファイルをFileMaker Proでネットワーク越しにアクセスした場合、とくにリスト形式や表形式のレイアウトを表示すると画面描画がもたつく印象がある。Web公開の機能も総レコード数が多いと影響を受けるのか。そこで今回は、総レコード数を5,000件から500,000件に増やした状態でテストをおこなってみた。

FileMakerファイル環境 - I～M共通

• 総レコード数: 500,000件
• レスポンスレイアウトに配置しているフィールド数: 9
• 計算・集計フィールドの有無: なし
• ソート指定の有無: なし

FileMakerファイル環境 - I

• 1リクエストのレコード取得数: 10件

FileMakerファイル環境 - J

• 1リクエストのレコード取得数: 20件

FileMakerファイル環境 - K

• 1リクエストのレコード取得数: 30件

FileMakerファイル環境 - L

• 1リクエストのレコード取得数: 40件

FileMakerファイル環境 - M

• 1リクエストのレコード取得数: 50件

レコード総数を5,000件から500,000件に拡大。レコード取得数($max)は前回同様、10件ずつ増やしていく。クライアントPCからApache JMeterを使用し、(2), (3)で作成したfx_find.phpとapi_find.phpにアクセス、応答速度などを計測する。

• 同時使用ユーザ数(スレッド数); 10, 20, 30, 40, 50
• リクエスト回数: 1回
• ループ数: 100

クライアントPCパフォーマンス - fx_find.php - 環境I

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	463	82	7064	360.92	20.4	82.22	00:48.80
20	2,000	1079	67	20770	2237.07	17.4	70.1	01:54.98
30	3,000	1315	69	19973	1451.79	21.2	85.67	02:21.13
40	4,000	1828	67	33214	2383.13	20.3	81.72	03:17.22
50	5,000	2127	67	47040	4312.42	20.3	81.99	04:05.83
	平均	1362.4	70.4	25612.2	2149.07	19.92	80.34

クライアントPCパフォーマンス - fx_find.php - 環境J

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	609	96	1560	111.43	16	97.23	01:02.37
20	2,000	1343	94	20009	2224.32	14	85.06	02:22.72
30	3,000	1806	111	16994	1326.4	15.9	96.66	03:08.41
40	4,000	2478	95	35758	2562.08	15	91.36	04:25.81
50	5,000	2996	95	46395	4406.64	15	91.09	05:33.32
	平均	1846.4	98.2	24143.2	2126.17	15.18	92.28

クライアントPCパフォーマンス - fx_find.php - 環境K

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	872	122	14200	918.68	11	95.69	01:30.67
20	2,000	1775	121	20326	2328.24	10.7	92.74	03:07.42
30	3,000	2363	121	19098	1470.95	12.2	106.05	04:05.96
40	4,000	3278	121	41041	2927.27	11.5	99.92	05:48.12
50	5,000	4110	134	48557	4660.47	11.3	98.15	07:22.95
	平均	2479.6	123.8	28644.4	2461.12	11.34	98.51

クライアントPCパフォーマンス - fx_find.php - 環境L

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	990	366	2156	186.5	9.9	117	01:40.03
20	2,000	2079	146	20052	2099.5	9.4	109.15	03:35.30
30	3,000	2818	288	25704	1567.15	10.2	120.21	04:53.23
40	4,000	4007	148	40503	3180.1	9.5	112.05	06:59.77
50	5,000	5158	157	51821	4679.83	9.2	108.63	09:01.28
	平均	3010.4	221	28047.2	2342.62	9.64	113.41

クライアントPCパフォーマンス - fx_find.php - 環境M

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	1131	203	2293	173.97	8.7	129.69	01:54.56
20	2,000	2442	175	20218	2126.79	7.9	117.9	04:12.24
30	3,000	3370	225	25315	1662.5	8.6	128.47	05:47.32
40	4,000	4764	175	40021	2928.5	8.1	120.05	08:15.74
50	5,000	6133	176	159254	5100.72	7.7	115.33	10:45.08
	平均	3568	190.8	49420.2	2398.5	8.2	122.29

クライアントPCパフォーマンス - api_find.php - 環境I

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	578	120	948	89.9	16.9	68.43	00:59.09
20	2,000	1145	103	11143	673.3	16.8	67.93	01:59.25
30	3,000	1710	92	21882	1745.58	16.6	67.2	03:00.89
40	4,000	2374	91	36978	2875.63	15.6	63.1	04:16.86
50	5,000	2941	91	49655	4514.74	15.5	62.86	05:22.35
	平均	1749.6	99.4	24121.2	1979.83	16.28	65.9

クライアントPCパフォーマンス - api_find.php - 環境J

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	825	149	1356	102.13	11.9	72.57	01:23.43
20	2,000	1645	148	3049	407.05	11.9	72.52	02:47.97
30	3,000	2369	142	25721	2487.79	11.7	71.44	04:15.79
40	4,000	3358	134	39038	3515.36	11.2	68.49	05:55.81
50	5,000	4256	143	48733	4140.66	11.1	67.68	07:30.18
	平均	2490.6	143.2	23579.4	2130.6	11.56	70.54

クライアントPCパフォーマンス - api_find.php - 環境K

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	1101	190	1747	133.39	9	78.05	01:51.52
20	2,000	2234	179	5113	520.52	8.8	76.86	03:46.70
30	3,000	3268	196	26730	2285.39	8.8	76.42	05:42.15
40	4,000	4706	177	39416	3229.58	8.2	71.2	08:09.79
50	5,000	5809	188	53396	4832.8	8.2	71.2	10:09.62
	平均	3423.6	186	25280.4	2200.34	8.6	74.75

クライアントPCパフォーマンス - api_find.php - 環境L

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1,000	1101	216	15214	639.7	7	81.95
20	2,000	2770	215	20015	1382.08	7	82.14
30	3,000	4214	217	19910	1421.99	7	82.24
40	4,000	5757	507	30614	2152.02	6.8	79.77
50	5,000	7534	438	48397	3762.62	6.8	77.74
	平均	4275.2	318.6	26830	1871.68	6.92	80.77

クライアントPCパフォーマンス - api_find.php - 環境M

同時使用ユーザ数	総リクエスト数	Average[ms]	Min[ms]	Max[ms]	Std. Dev.	Throughput/sec	KB/sec	Time
10	1000	1201	284	3047	309.72	5.8	85.81	02:53.21
20	2000	3568	422	11507	956.5	5.5	82.54	06:00.67
30	3000	5565	441	28205	2167.69	5.3	78.6	09:28.48
40	4000	7120	263	40373	2912.94	5.4	81.19	12:14.08
50	5000	9119	259	50131	4149	5.3	79.08	15:42.15
	平均	5314.6	333.8	26652.6	2099.17	5.46	81.44

FX.php Average集計表

同時ユーザ数	$max=10	$max=20	$max=30	$max=40	$max=50
10	463	609	872	990	1131
20	1079	1343	1775	2079	2442
30	1315	1806	2363	2818	3370
40	1828	2478	3278	4007	4764
50	2127	2996	4110	5158	6133

FileMaker API for PHP Average集計表

同時ユーザ数	$max=10	$max=20	$max=30	$max=40	$max=50
10	578	825	1101	1101	1201
20	1145	1645	2234	2770	3568
30	1710	2369	3268	4214	5565
40	2374	3358	4706	5757	7120
50	2941	4256	5809	7534	9119

前回同様、ソートをおこなうと1リクエストあたりの応答時間が50分を越えるという現実的ではない処理時間になるため、計測対象外とさせていただいた。

ソート・計算/集計フィールド未使用ならほとんど差がでない

一度に取得するレコード数を増やせば増やすほど、FX.php・FileMaker API for PHPともに応答速度が長くなるのは前回検証した結果と同じ。注目したいのはレコード総数が増えても、ソートを使ったり、索引の作成できない計算/集計フィールドを使わなければほとんどパフォーマンス差は出ないというところ。レコード総数5,000件と500,000件とで同時ユーザ数が10のとき、FX.php/APIともに約0.09～0.1秒ほどしか遅くなっていない。APIの一部の結果は、レコード総数が500,000件のほうが早く動作している。

ソートを使った場合、1フィールドのソートだけで応答速度が50分を越えるというとんでもない結果となってしまった。ソートについてはFileMaker Serverを使用せず、FileMaker Proでファイルを直接開いた場合は高速に動作する。FileMaker Serverで公開・共有しているFileMakerファイルをネットワークで開いた場合は同様に遅くなる。これらのことから、FileMakerの作り自体になにかしらの遅くなる原因がありそうだ。この問題が解決しない限り、レコードを大量に扱うWebアプリにおいてソートを用いるべきではないだろう。

計算・集計をどうしても使いたい場合は、この「総レコード数が多くても、ソートや計算・集計フィールドを使わなければパフォーマンスは落ちない」特性を利用して、集計単位別の結果を保持する中間テーブルを用いるのが良いだろう。FileMakerで中間テーブルを利用する方法については、バックナンバー「スピードアップのための徹底チューニング(4) 集計には中間テーブル」を参照してほしい。