スマートフォン向けのフリマアプリ「メルカリ」が人気を集めている。2013年7月のサービス開始から、わずか2年でアプリのダウンロード数は1800万を突破し、年内には2000万DLへと到達する見通しだ。
1日の出品数は数十万品まで拡大し、2014年9月からはアメリカでのサービスを開始するなど、急速に事業を拡張している。そんな同社は、サービス開始時期からFacebook広告を活用しているという、同社のプロモーショングループ・シニアマーケティングスペシャリストの鋤柄 直哉氏に話をうかがった。
ローンチ当初は、若い女性層に的を絞ってアプローチ
「メルカリ」は、スマートフォンのユーザーが、不要になった服や本、雑貨などを売ったり、出品された商品を購入したりできるサービスで、利用にはアプリが必要となる。広告を見て興味を持った人を直接アプリのダウンロードページに誘導できるFacebookのモバイルアプリ広告は、導入を始めた当初から効果を実感できたという。
「アプリのローンチ直後から利用したのは『モバイルアプリインストール広告』です。モバイルのニュースフィード上に表示する広告で、F1層(20歳~34歳までの女性)に向けて広告を配信しました。メルカリは若い世代の女性と親和性が高いサービスで、最も反応がいいと考えていたからです。実際に、狙い通りの効果が得られたと思います」(鋤柄氏)
最近は、若い女性だけでなく、男女を問わず幅広い世代のユーザーを獲得しているメルカリ。ユーザー層を拡大するうえでは、テレビCMも大きな役割を果たしたという。
「テレビCMを最初に放映したのは2014年5月。その後、2014年の10月・11月、今年の3月・4月と、これまでに3回キャンペーンを行いました。テレビCMを放映すると、インストール数がすごく伸びるのですが、同時にオンライン広告の効果も上がるという相乗効果が得られます。それは事前に想定していたことではありますが、特に初回のテレビCMでは想定をはるかに上回る効果を測定できました。アドネットワーク経由でのインストールも伸びましたが、やはり広告在庫的にFacebook広告での伸びが著しかったです」(鋤柄氏)
テレビCM放映中は、通常の画像とテキストの広告に加えて、動画広告も配信しているという。テレビCMは15秒だが、それを30秒に拡大した動画をオンライン広告用として制作し、配信することもあるそうだ。幅広い層に向けたプロモーションにより、ユーザー層を拡大し、現在では、Facebook広告でターゲットとするユーザーの男女比は、ほぼ半々だという。
通常の広告に比べて約1.5~2倍の効果を得られるカルーセル広告
多彩な種類があるFacebook広告の中で、メルカリにとって「欠かせない存在になっている」というのがカルーセル広告だ。カルーセル広告とは、複数の画像を表示できる広告形式で、スマートフォンユーザーは、横にスワイプすることで、それらの画像を見られ、リンク先に進むことができる。
「メルカリではファッションだけでなく、家具や家電、ゲーム、コスメなど、いろいろな商品を扱っています。商品カテゴリの豊富さを、しっかり見せることができるので、カルーセル広告は弊社のサービスと非常に相性が良い広告だと捉えています。実際にカルーセル広告では、Facebookの通常の画像に比べて、ROAS(広告の費用対効果を測る指標)が1.5~2倍になるなど、非常に良い効果を得られています。カルーセルを始めたのは今年の5月からですが、今ではFacebookへの広告出稿費の50%以上をカルーセル広告が占めています」(鋤柄氏)
今年の7月からは「Facebookオーディエンスネットワーク」も活用している。これは、Facebook上だけでなく、他のモバイルアプリにも広告を出せるサービスで、ターゲティングに合わせて、ネットワークにある他のアプリにも自動で配信される仕組みだ。
「オーディエンスネットワークについては、まだROASでの測定ができないのですが、CPI(インストールを獲得する単価の指標)は、Facebookのニュースフィードに表示する広告よりも20%安く獲得できています。ボリュームについては、Facebookと比べるとまだ1割程度ですが、今後、連携するメディアが増えていくことを期待しています」(鋤柄氏)
「リエンゲージメント」で休眠ユーザーのアプリ再訪を促進
モバイルアプリは、インストールした人に長く積極的に活用してもらう必要がある。そのために同社が利用しているのが「モバイルアプリエンゲージメント広告」だ。すでにアプリをダウンロードしてある人にエンゲージメントや再利用を促すもので、「カスタムオーディエンス」というターゲットを細かく絞り込んだアプローチができるFacebookならではのターゲティング機能と併用できる広告だ。
「弊社では、たとえば30日間アプリを起動していない人など、いわば"休眠"しているユーザーに、もう一度使っていただくために利用しています。まだ、明確な効果分析ができる段階ではないのですが、休眠ユーザーの活性化は今後の課題と捉えているので、これからも活用方法を模索していきたい広告です」(鋤柄氏)
新しいユーザーを獲得するためのカルーセル広告や、既存ユーザーの利用を促進するためのモバイルアプリエンゲージメント広告など、「今後も、オンライン広告のメインとしてFacebookを活用していきたい」というメルカリだが、アメリカ向けの広告も日本でハンドリングしているという。
「アメリカ向けのサービスも、基本的には日本向けのサービスと目標とする指標は同じなので、アメリカ向けのFacebook広告も日本でハンドリングしています。ただし、クリエイティブの部分では、ネイティブの感覚がある人のチェックは必須にしています。また時には、社内の翻訳担当者が関わるなど、しっかり現地のユーザーに訴求できるように配慮しています。また、アメリカ向けには、すでにInstagramでも広告を配信していますが、日本でもInstagram広告を導入する準備を進めています(※取材後に日本でもInstagramの広告を開始)」(鋤柄氏)
また、メルカリは年に数回、リアルのフリーマーケットも開催している。その目的についてもうかがった。
「数年前までは、フリマは代々木公園など大きな公園で毎週のように開催されていましたが、最近は徐々に減ってきています。フリマ本来の楽しさを体験していただき、フリマという文化の裾野を広げるために開催しています。参加者の多くは『メルカリ』のユーザーですが、そうしたイベントを機に『メルカリ』を知ってくださる方もいますよ」(鋤柄氏)