Excelに入力したデータをもとに、様々な分析を行う場合もあるだろう。このような場合に「条件付き書式」を活用することも可能だ。「条件付き書式」は、指定した条件に合うセルの書式を自動的に変化させてくれる機能となる。注目すべきデータを分かりやすく示したい場合などに活用できるので、ぜひ使い方を覚えておこう。
「セルの強調表示ルール」を使った条件付き書式の指定
まずは、最も簡単な指定方法から解説していこう。Excelの[ホーム]タブには、「条件付き書式」を手軽に指定できるコマンドが用意されている。この機能を使って「条件付き書式」を指定するときは、以下の手順で操作を行えばよい。
最初に、「条件付き書式」を指定するセル範囲を選択する。続いて、[ホーム]タブにある「条件付き書式」をクリックし、「セルの強調表示ルール」の中から「条件の種類」を選択する。
すると、条件となる数値を指定する画面が表示される。ここに適当な数値を入力し、条件に合うセルの強調方法(書式)を選択すると、「条件付き書式」の指定が完了する。
たとえば、上図のよう条件と書式を指定した場合、数値データが「300より大きいセル」を「濃い赤の文字、明るい赤の背景」で表示できるようになる。単に数値データを羅列した状態と比べると、データの傾向を把握しやすくなるのを実感できるはずだ。
もちろん、数値データを変更すると、それに応じてセルの書式も自動変更される。たとえば、D10セルの値を350に変更すると、そのセルが「濃い赤の文字、明るい赤の背景」で表示されるようになる。
このように、注目すべきデータを自動的に強調できるのが「条件付き書式」の魅力となる。もちろん、数式や関数の計算結果も「条件付き書式」の対象となるので、計算処理を含む表にも「条件付き書式」を活用できる。
手作業で書式指定を行い、同様の結果を得ることも不可能ではないが、そのつど書式を指定するのは手間がかかるし、強調すべきセルを見落としてしまう危険性もある。「条件付き書式」を使ってセルを強調した方が、間違いが少なく、スマートに処理を行えるだろう。
そのほか、[ホーム]タブの「条件付き書式」には、「上位/下位ルール」という項目も用意されている。この項目には「上位10項目」や「上位10%」といったサブメニューが並んでいるが、必ずしも「10項目」や「10%」が条件になる訳ではない。この部分の数値は自由に変更できるので、「数値が大きい順に5項目を強調する」とか、「上位20%のデータを強調する」といった条件を指定したい場合に活用するとよいだろう。
条件と書式の指定画面(「上位10%」を選択した場合) |
条件付き書式の解除
続いては、指定した「条件付き書式」を解除するときの操作手順を紹介しておこう。この場合は「ルールのクリア」を選択し、「条件付き書式」を解除する範囲を選択する。
条件と書式の指定画面(「上位10%」を選択した場合) |
「シート全体からルールをクリア」を選択した場合は、ワーク―シート上にある全てのセルから「条件付き書式」を解除できる。一方、「選択したセルからルールをクリア」は、あらかじめ選択しておいたセル範囲から「条件付き書式」を解除する場合に利用する。「条件付き書式」を指定しなおすときに必要となる操作なので、念のため覚えておこう。
条件と書式を自分で細かく指定する場合は…?
[ホーム]タブに用意されているコマンドは手軽に「条件付き書式」を指定できるのが利点となるが、細かな指定が行えないという欠点もある。たとえば、「300より大きい」という条件は指定できるが、「300以上」を条件に指定することはできない。また、強調表示するセルの書式を自由に指定できないことも弱点といえる。
このような場合は、「新しいルール」を使って「条件」と「書式」を指定することも可能だ。順番に解説していこう。
まずは、「条件付き書式」を指定するセル範囲を選択する。続いて、「条件付き書式」→「新しいルール」を選択する。
すると、条件を指定する画面が表示される。数値データの範囲を条件とする場合は、「指定の値を含むセルだけを書式設定」を選択し、「条件の種類」と「数値」を指定すればよい。続いて、「書式」ボタンをクリックすると…、
「条件に合うセルの書式」を指定する画面が表示される。ここでは、文字の書式を「フォント」タブ、セルの背景色を「塗りつぶし」タブで指定すればよい。
以上で「条件付き書式」の指定は完了。「OK」ボタンをクリックすると、条件に合うセルだけが指定した書式で表示されるようになる。今回の例では、数値データが「300以上」のセルを「文字色:赤、太字」で表示するように「条件付き書式」を指定してある。
条件付き書式の追加と管理
指定した「条件付き書式」の内容を変更したい場合は、そのセル範囲を選択した状態で「条件付き書式」→「ルールの管理」を選択すればよい。
すると、以下の図のような画面が表示され、選択したセル範囲に指定されている「条件付き書式」が一覧表示される。この画面で「条件付き書式」をダブルクリックすると、条件と書式の指定画面を呼び出すことができる。
また、「新規ルール」ボタンをクリックして、同じセル範囲に「別の条件付き書式」を追加することも可能である。以下は、数値データが「400以上」のときに「文字色を白、背景色を赤」で表示する、という「条件付き書式」を追加した場合の例となる。
このように、複数の「条件付き書式」を指定することで、より見やすい表に仕上げていくことも可能だ。ただし、それぞれの「条件付き書式」に優先順位があることに注意しなければならない。先ほど示した例の場合、「条件付き書式」を逆の順番で指定すると、以下の図のような結果になり、思い通りの結果を得られなくなってしまう。
このような結果になってしまうのは、
(1)「300以上」のときは「文字色:赤、太字」
(2)「400以上」のときは「文字色:白、背景色:赤」
という優先順位で「条件付き書式」が指定されていることが原因。この場合、数値データが400以上のセルは「300以上」の条件も満たすため、「文字色:白、背景色:赤」の書式が指定された後、さらに「文字色:赤、太字」の書式も指定されることになる。その結果、文字色の書式が上書きされ、「文字色:赤、太字、背景色:赤」という書式になってしまう。
このような不具合を解消するには、「▲」や「▼」のボタンを使って「条件付き書式」の優先順位を入れ替えなければならない。
複数の「条件付き書式」を指定するときは、後から指定した「条件付き書式」ほど優先順位が高くなる、という決まりを覚えておく必要があるだろう。慣れるまでに少し時間がかかるかもしれないが、データを分析する際に便利に活用できる機能なので、「条件付き書式」の効果的な使い方を各自で研究しておくとよいだろう。