Excelを使えば、縦棒グラフなんてあっという間に作成できるが、そんな風に「ただ作る」のではなく、その「グラフで何を伝えたいのか」、目的と趣旨を意識した上で、その意図が「伝わる」ようなグラフを作成したい。そのために、基本的なルールを満たした縦棒グラフに仕上げる方法を紹介しよう。

伝わりやすい縦棒グラフの基本形をおさえよう

縦棒グラフは、データ範囲を選択して[挿入]タブから[集合縦棒]をクリックすればいい。

データ範囲を選択して、通常の縦棒グラフは[集合縦棒]を指定して作る

Excelのバージョンによって多少の違いはあるが、Excel 2007以降は、こんな感じの縦棒グラフができあがる。自分だけが確認するためだけに使用するなら、このままでもかまわないが、資料として作成するなら、ひと手間加えて、伝わりやすいグラフに仕上げたい。初期設定のままの縦棒グラフは、棒が細くてなんとも頼りない印象だ。また、Excel 2007/2010の場合は、データ系列が1つしかなくても「凡例」が表示されたりするが、データ系列が1つしかないのなら、凡例は不要なので削除したい。つまり、必要な情報を過不足なく表現するように加工するのだ。

初期設定のままの縦棒グラフ

グラフは、いくらでも凝りようがあるが、凝れば凝るほど、それだけ時間もかかる。そこら辺も考慮しながら、縦棒グラフとして基本的なルールを満たしたものを作るとするなら、次のような書式が縦棒グラフの基本形と言えるだろう。ここでは、この基本形の縦棒グラフを作るための設定方法を紹介する。

ここで作成する縦棒グラフの基本形

縦棒グラフの棒を太くする

一般に、棒グラフの棒と棒の間は、「棒の太さの半分」くらいを目安にするといいといわれている。そのほうが安定感がある印象を見た者に与えるからだ。初期設定の棒は、細すぎるので、まずは、この棒を太くしてみよう。 棒の太さは、[データ系列の初期設定]で行う。棒の内部を右クリックして、[データ系列の書式設定]コマンドを実行するのがいいだろう。

棒の内側を右クリックして[データ系列の書式設定]コマンドを実行する

[データ系列の書式設定]ダイアログ/パネルが表示されたら、[系列のオプション]を表示してみよう。棒グラフの場合は、ここで[系列の重なり]と[要素の間隔]というのが設定できる。この[要素の間隔]というのが、棒と棒の間隔を設定する項目で、この値を小さくすれば、結果的に棒が太くなる仕組みだ。先に、棒と棒の間は「棒の太さの半分」が目安と述べたように、この値を「50%」~「70%」程度に設定するといいだろう。

棒の太さは[要素の間隔]で設定する。初期値はこの値が大きいので、棒が細くなっている

全体のグラフの横幅や、全体の棒の数にもよるのだが、たとえばこの場合、「50%」に設定すると、図のような状態になり、どっしりと安定した印象になる。この場合、もう少し細く設定してもいいだろう。

たとえば「50%」に設定すると、このようになる

なお、上図では[系列の重なり]を「0%」に設定しているが、この場合はデータ系列が1つしかないので、この設定を変更してもグラフの結果は変わらない。上では、単になんだか気持ち悪いので「0%」に設定しただけだ。

この設定で変化が出るのは、複数のデータ系列をグラフにしたときで、この設定をプラスに設定すると図のように、他の系列同士が一部重なるようになる。Excelの縦棒グラフは、このように複数の系列を縦棒グラフに描けるので、ただの「縦棒グラフ」ではなく「集合縦棒」という名称になっているのだろう。ただ、一般には、複数系列の縦棒を描くことはほとんどないので、この「集合縦棒」という名称には、ピンと来ないだろう。複数系列のデータを示すなら、「集合縦棒」よりも「積み上げ縦棒」グラフのほうが適している場合が多いし、「集合縦棒」グラフを使う場合でも、[系列の重なり]の初期設定のように、マイナスの値を指定して棒同士を離すことはほとんどないし、通常は「0%」にくっつけるか、下の図のようにプラスの値を設定して、少し重ねるようにするかのどちらかだ。

複数系列の棒グラフを描く際には、[系列の重なり]をプラスに設定することで、棒同士が少し重なるようにすることができる

縦棒グラフは左から大きい順に描画するのが原則

時系列のデータを描く場合などを除き、通常、縦棒グラフは、左から順に大きいデータから並べて描画するのが基本だ。なぜ、そうするのか話は単純で、並べ替えることによって、それぞれの棒の背比べが容易にできるようになり、どのデータがどれだけ大きいのか、すぐにわかるようになるからだ。

複数のデータ系列を描いているような場合は、[データソースの選択]ダイアログボックスを利用することで、各系列の描画順を変更することができるが、グラフの機能で、同一系列内のデータの順番を変更するということは基本的にはできない。無理矢理やろうと思えばできなくもないのだが、その場合はグラフデータの参照範囲の設定が複雑になり、再設定が困難になるので決しておススメできない。

では、どうするのだが、ここは発想の転換で、元データを並べ替えてしまえばいいのだ。データの並べ替えは、通常通り、セル範囲を選択して[データ]タブに用意されている[降順]ボタンをクリックすればいい。「大きい順」にしたいので「降順」だ。ただし、数値の入ったC列のセルがアクティブセルになるように、C3セルからドラッグを開始して、合計行を含めないようにセル範囲を選択しておくのがポイントだ。並べ替えを実行する際は、並べ替えのキーにする単一のセルを選択した状態で、[昇順]や[降順]ボタンをクリックすることも多いかと思うが、そうすると、並べ替えの範囲に合計行も含まれてしまうので要注意だ。

数値の入ったC3セルからドラッグして合計行を含めないようにセル選択したあと、[データ]タブの[降順]ボタンをクリックする

[降順]で並べ替えたので、表とグラフが大きい順に並べ変わった。これで、微妙な大きさの差だった「大阪」と「福岡」も、わずかに「大阪」のほうが売上が大きいことがすぐにわかるようになる。

元の表を並べ替えることで、表と連動してグラフも並べ変わる

なお、たまに「表とグラフは連動させないで、グラフだけの並び順を変更したい」という相談を受けるときもあるが、その場合は、元の表をコピペして、複製した表からグラフを作成するのがオススメだ。その表は、グラフの後ろに隠してしまえば、見た目には何も変わらなくなる。ただし、さらにひと工夫しておかないと、別の人が使用した際、「元の表の数値を変更したのに、グラフが変わらない」なんてトラブルになりかねないので、そこら辺も考慮して作成しておくといい。

グラフの枠線を表示する

これは細かいところだが、Excel 2007から、グラフの外枠の線が描画されなくなった。正確に言えば、グラフのいちばん外枠になる「グラフエリア」の線は、描画されるのだが、その内側の「プロットエリア」の線が描画されなくなったのだ。「プロットエリア」は、縦軸や横軸の内側の実際にグラフが描かれる領域で、図で選択した部分となる。

グラフ全体の内側の、実際にグラフが描画されるエリアが「プロットエリア」だ

Excel 2007以降もバージョンによって、若干状況が異なるのだが、Excel 2007/2010の場合は、左端の縦軸と下端の横軸の線に加え、横の目盛線も描画されるのだが、プロットエリアの線が描かれないため、図のように右端の線だけ欠けているようなグラフになる。

Excel 2010で描いた棒グラフ。右端の線だけ欠けているように見える

一方、Excel 2013/2016の場合は、縦軸と横軸の線も描かれなくなっているため、既出の図のように、両サイドの線がない状態に見えるグラフになる。 これを解決するには、プロットエリアの枠線を設定してやればいい。プロットエリアを右クリックして[プロットエリアの書式設定]コマンドを実行し、「線」の設定をするのだ。

プロットエリアを右クリックして、[プロットエリアの書式設定]コマンドを実行する

[プロットエリアの書式設定]パネル/ダイアログで、「線」の設定を行えばいい

ただし、Excel 2013/2016の場合は、図のように下線だけ、違う色になってしまう。

見た目上、プロットエリアの下線だけ違う色になってしまっている

これは、横の目盛線のほうが前面に描画されるようになっている一方で、横軸の線も「なし」に設定されているからなのだろう。目盛線の色をプロットエリアの線の色と統一させる方法もあるが、横軸の線をプロットエリアの線と統一させて設定したほうがいいだろう。同様に横軸の線を右クリックして[横(項目)軸の書式設定]コマンドを実行し、パネル/ダイアログで「線」の色を設定すればいい。

横軸の線も、プロットエリアの線の色と同じ設定にしておく

これで、図のようにグラフの周囲を枠線で囲むことができる。

プロットエリアと軸の線を設定することで、グラフを囲む線が設定できた

棒の上に元データの数値を表示させる

グラフを作成しても、「元の数値も知りたい」と言われる場合がほとんどだ。印刷する際などは、元の表とグラフを一緒に印刷できるようにレイアウトすることが多いが、もう1つ、縦棒グラフの場合は、棒の上に、直接数値が書き込まれているのを見たことがある人も多いのではないだろうか。あれはExcelでは、「データラベル」という機能で、簡単に表現することができる。 操作も簡単で、基本的に棒を右クリックして、[データラベルの追加]コマンドを実行すればOKだ。

グラフ内の棒を右クリックして、[データラベルの追加]コマンドを実行する

データラベルは、棒の内側に表示したり、いくつか所定の位置に表示するように設定することもできるのだが、通常の縦棒グラフなら、棒の上に表示するのがふつうなので、基本は、既定値のままで大丈夫だ。

すると棒の上に数値が表示されるようになるので、基本はこれだけでOKだ

ただ、この例の場合、横軸の目盛線やグラフの枠線と数値が重なってしまい、若干見づらい。なので、データラベルの背景を「白」で塗りつぶしておくといいだろう。書式設定のやり方は、基本的に同じだ。データラベルを右クリックして[データラベルの書式設定]コマンドを実行し、[データラベルの書式設定]ダイアログ/パネルで、「塗りつぶし(単色)」を「白」に設定すればいい。

データラベルの「塗りつぶし」を「白」に設定する

後は、グラフタイトルをわかりやすい内容に変更したりすれば完成だ。これらの設定を完了すれば、最初に示した完成グラフのようになる。手順が多いようだが、実際に操作してみるとそれほどでもないので、縦棒グラフを作成するなら、この程度の設定を施しておく「気配り」をオススメしたい。

グラフタイトルをクリックして、文字を編集する