フィンランドNokiaとルクセンブルグSkype(米eBay傘下)が2月、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2009」で発表したNokiaのハイエンドライン「Nseries」への「Skype」搭載に対し、一部のオペレータが反感をあらわにしている。「モバイルインターネット」「モバイルブロードバンド」とはいいながらも、通信事業者が手放しでモバイルインターネットを受け入れる時代はまだ先のようだ。
既報の通り、NokiaとSkypeは、Skypeプリインストールで提携したことを発表している。Skypeを搭載したNseriesは、まずは今年第3四半期、Nokiaの最新フラッグシップ端末「Nokia N97」で登場する予定だ。Skypeはすでに米Microsoftの「Windows Mobile」で利用できるが、同社は"Skype Anyware"戦略の下でモバイル戦略を拡大しており、米Googleの「Android」携帯電話や英Sony Ericssonの「Xperia X1」など、Nokia以外の端末でも対応を発表している。
だが、Nokiaは欧州で高いシェアを誇るため、SkypeとNokiaの動きは地元オペレータの反発を買ったようだ。
英国の携帯電話情報サイト、Mobile Todayによると、英O2と仏Orange(ともに英国をはじめ、欧州の複数国で展開している)はNokiaのSkypeバンドルを非難し、N97の提供を見合わせる用意もあるとしているようだ。両オペレータは、幹部レベルでのNokiaとの話し合いで反対意見を表明したという。
2社が強いシェアを持つ英国では、すでに3G専業オペレータの3が"Skypeフォン"こと「3 Skypephone」を展開している。SkypeのCEO、Josh Silverman氏によると、Skype携帯電話の販売台数は50万台を超えており、3に新規顧客をもたらすなど肯定的な結果を出しているという。「他のオペレータも同様の提携に関心を示している」とSilverman氏は述べたが、明らかにO2とOrangeは違うようだ。
端末購入とオペレータとの契約が切り離されている欧州では、オペレータと端末メーカーは長い間、愛憎関係にある。これまでも、オペレータが強くなったり、端末メーカーが強くなったりを繰り返している。英Vodafone、Orangeなどのオペレータは2002年ごろからNTTドコモのiモードにならい独自ポータルを展開する一方、Nokiaは独自ブランディングやサービス事業を展開している。
だが、2年前の米Appleの「iPhone」は、微妙な力関係を無視し、端末メーカー(Apple)がオペレータを選ぶというまったく逆の行為に出た。
このところのNokiaのサービス強化はiPhoneの影響を受けてのものだが、これまでも、サービスに進出するNokiaの動きに対して、オペレータの心中は穏やかではなかった。
最も有名な例がOrangeだ。同社はNokiaが2007年8月にマルチサービスポータル「Ovi」戦略を発表すると、音楽ストアの競合から反発した(Orangeは自社ポータルで音楽ダウンロードサービスを提供している)。結局2社は、2008年に一応の和解に至り、サービス収益の共有、一部Nokia端末での「Orange Signature」対応(Orangeサービス用に画面をカスタマイズ)、OrangeのポータルでのNokiaサービスへのリンク、「Nokia Maps」提供などで合意した。
だがNokiaは、音楽無制限ダウンロードサービス「Nokia Comes With Music」では、携帯電話チェーン店のCarphone Warehouseと提携している。
今回のSkype搭載について、Mobile Todayではあるオペレータからの情報源として、「Nokiaが自社エコシステムを確立しようとする例であり、オペレータを単なるパイプ役にしようとする動きだ」「ブランディングに年間4,000万ポンドを費やした後で、パイプ役に回れといっても無理だ」などのコメントを引用している。
Appleはオペレータにパイプ役を命じた。だがAppleのブランド力と潜在市場から、2社は、オペレータに不利といわれるAppleの出した条件をのんで、O2は英国で、Orangeはフランスでの提供パートナーとなっている。
オペレータがSkype搭載で恐れることは、音声通話収益の損失だ。だが、長期的に見れば、Wi-FiでネットブックやノートPCを利用すれば簡単にSkypeが利用できる環境が整っているし、HSPAモジュールはノートPCにも搭載されている。今回の抵抗によって失うものと得るもののバランスは、短期的に推し量ることはできないと思うのだが。