2月16日から4日間、モバイル業界最大のイベント「Mobile World Congress 2009」が例年通りスペイン・バルセロナで開催された。不況の中、出展社の中には参加をとりやめたり規模縮小したところもあったようだが、はじまってみるとそうでもないというのが個人的な印象。レポートする側としては充実した4日間だった。
今年の各社のニュースをまとめてみる。
- Sony Ericsson、ハイエンド「Idou」(コンセプト名)発表、「PlayNow」で動画サービス開始へ
- Nokia、アプリケーションマーケット「Ovi Store」発表、Eseries2機種を投入し電子メールにフォーカス
- Microsoft、「Windows Mobile 6.5」発表、端末を「Windows Mobile」ブランドで統一、アプリケーションマーケット「Windows Marketplace for Mobile」と同期サービス「My Phone」発表
- Acer、スマートフォンに進出、年内に11機種一気投入
- NokiaとQualcommが提携、共同で端末開発へ
- Skype、Nokiaの「Nseries」に搭載へ
- Yahoo!、携帯電話向けスタートページ「Yahoo! Mobile」発表
上記は筆者がカバーできたものを挙げただけで、そのほかにも発表は盛りだくさんだった。たとえば、端末ベンダではSamsungやLGも発表を行っているし、ネットワーク側もLTEやHSPA+などに対応した製品を発表している。
端末側のトレンドとしては、とにかく「タッチ、タッチ、タッチ!」 - 大きな画面を全面に搭載したストレートタイプが主流で、そうでなければスライド式。折りたたみ式は姿を消した感じがした。
その流行を感じたのは、新規参入Acerの発表会。紹介した8機種すべてがタッチだった。Acerは本気で、スマートフォンでトップ5入りを目指すと述べている。
おもしろいところでは、GPSなどナビゲーション端末で知られるGarminが台湾ASUSと組んだスマートフォン「Nuvifone」第2弾となるM20を展示していた。
ハードウェア側ではないが、音声検索というトレンドも感じた。Google、Yahoo!は共に音声検索を披露、デモで見る限りは精度も悪くないようだった。
3日目、Googleの基調講演のためにメインホールに行った。スピーチはGoogleらしく、自分たちの戦略を売り込むよりも、「Webの標準を使ってモバイルインターネットを実現しよう」という呼びかけ。Androidをアピールすることはなかった。
Googleの後にはSkypeのCEOが登場した。2004年に初の正式版が公開以来、通信業界の敵だったSkypeがWCMに登場するなんて、数年前にだれが予想できただろうか。それでも、Skypeをモバイルでと売り込み、英3の「Skypephone」の成功をアピールするSkypeのCEO、Josh Silverman氏に対し、豪オペレータのTelstra、Sol Trujillo氏は厳しい。「われわれのユーザーがSkypeを使いたいとは思えない」と懐疑的な姿勢を崩さなかった。
SkypeはNokiaと提携し、NokiaのNseriesにSkypeが搭載されることになった。SkypeのS60対応はなかなか進まなかったから、Nokiaユーザーには朗報だ。そのNokiaは、長年対立していたQualcommと提携。QualcommはNokiaが支援するSymbian Foundationにも参加するなど、方向転換を図っている。
そのQualcommのブースでは、同社チップ「Snapdragon」を搭載した東芝製「TG01」、HSPA+にフォーカスした展示などが見られたが、これらに並んでワイヤレスチャージャのコンセプト「eZone」を披露していた。Magnetic Resonance(磁気共鳴)という技術を利用することで、他の金属に電力を吸収されないのだそう。
携帯電話メーカーはどこも、最大の課題はバッテリと認めている。こんなワイヤレスチャージャが実現し、あちこちに普及すると、それほど大きなバッテリを搭載する必要はなくなるかもしれない。
チャージャといえば、MWCを主催する携帯電話業界団体のGSM Association(GSMA)は会期中、共通の充電器に向けたイニシアティブを発表している。
このようにトピックスを挙げるときりがない。だが、プレスルームでは不況を痛感した。今年のプレスルームは初日こそ席を探すのに苦労したが、2日目以降、かなり空いていた。そのせいか、プレスルームが閉まる時間も例年より1時間早かった。GSMAによると、プレス登録者は約400人。これは、昨年のざっと半分である。