フランス政府は7月14日の革命記念日、外国人向けにフランスの情報を提供する公式Webサイト「France.fr」を公開した。観光国として有名なフランスがこれまで国として外国人向けの公式Webサイトを持っていなかったことも驚きだが、満を持してオープンしたはずのサイトは数時間後にあっけなくダウン。4日後の18日現在もサイトにアクセスすると、「現在利用できません」とするページが表示される。アクセスが集中したというより、技術的問題が原因のようだ。

France.frはフランス初の外国人向け公式Webサイト。旅行者はもちろん、学生、企業、報道関係など外国人向けにフランスに関する情報を5言語(フランス語、英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語)で提供するポータルだ。外国へのイメージアップを図るショウウィンドウ的なポータルという位置付けとなり、知る、訪れる、住む、学習する、働く、など6つのカテゴリに分け、6,000以上のWebページへリンクを張っているという。今後さらにコンテンツを充実させ、最終的には1万2,000のリンクを持つポータルサイトに膨らませる計画という。

プロジェクトを手がけているのは、首相下にある政府の情報サービス部門SIG(Service d'Information du Gouvernement)。フランス政府がFrance.frのドメインを取得したのは約2年半前、その後すぐに作業に着手しなかったにせよ、長い時間とコスト(費用は86万ユーロといわれている)をかけて開発/構築し、フランスで一番重要な日である革命記念日にお目見えした。

だがFrance.frは数時間後にダウンした。15日ごろまではサイトにアクセスすると、「現在利用できません」とあり、その下には、「サイトは成功の犠牲となり、多数の訪問者がアクセスしたためにサーバを増強する必要があるため」と説明していた。

その後、この理由文は修正され、「サーバ設定の問題が発生したため」に変更された。現在チームはシステム全体を再調査しているところだという。14日にFrance.frのオープンをツイートで報告した未来予測・デジタル経済開発担当大臣のNathalie Kosciusko-Morizet氏は17日、Twitterで「バグを絶対に回避したいので、時間がかかるだろう」と述べている。

だが、オープンして数時間内にサイトにアクセスできた人によると、France.frはアクセス可能だったときからクオリティに問題があったようだ。TechCrunchなどによると、翻訳の質は悪く、英語版とフランス語版が一部混在しており、バグも多かったという。

18日時点、サイトはまだ閉鎖されている。フランスはストなどで物事が機能しないことがある国だが、表向きの顔となるWebサイトでも国民性のようなものはでるのだろうか。技術レベルは高い国だと思うが、フランスらしいという苦笑も聞こえてきそうだ。

今もなお、Unavailableな状態が続くフランスの公式サイト

実はフランスは、欧州連合(EU)の中で外国人向けのWebサイトを持たない数少ない国の1つだった。スペイン、イタリア、ドイツなどの主要国はすでに外国人向けのWebサイトを公開している。フランスは世界一の観光国で、2009年には世界から約7,400万人が訪れた。

サイト公開が遅かった上、数時間後にダウンしたという事態について、フランスのイメージを悪化させたという声もあれば、いまのフランスを象徴しているという声もある。フランスは先に南アフリカで開催されたサッカーの世界大会「FIFA World Cup」で無残な成績を残し、国内ではNicolas Sarkozy大統領の汚職(違法献金)疑惑が持ち上がっている。

サイバー関連では時期を同じくして、外務省の公式サイトが偽造されるという事件も起こっている。7月16日に『The Independent』が報じたところによると、フランス外務省のWebサイト「diplomatie.gouv.fr」にロゴや外見がそっくりなWebサイト「diplomatiegov.fr」が公開されており、「(旧植民地の)ハイチがフランスに支払った賠償金を全額返済する」など、真実と異なる情報や動画が掲載されていたという。このそっくりサイトはすでに閉鎖されている。フランス外務省側は現在調査中としながら、法的手続きも辞さない姿勢を示している。

このようにサイバー空間でトラブルが続くフランスだが、行政では積極的にデジタル化を取り入れていく方針だ。予算・公会計・国家改革大臣のFrancois Baroin氏は7月初め、行政のモダン化を初め、政府のデジタル関連の取り組みをいくつか打ち出している。

これはインターネットの活用やデジタル化によるコスト削減、行政サービスの質の改善を目指すもので、10万規模のポストを削減し、3億ユーロを削減するとしている。また、米国にならいCIO職を設け、公共部門の調達を一元化し、ITサポートの合理化を図る。これにより、さらに7億ユーロを節約できると試算している。

デジタル化されればこれまでのように、得たい情報が得られずたらいまわし状態になったり長い列にいらいらすることが少なくなるのかと期待したくもなる。だが、France.frのようにサービスに支障をきたす可能性があることも覚悟しておくべきかもしれない。