英Sony Ericssonは8月17日(英国時間)、社長交代など人事異動を発表した。新たに社長に就任するのはスウェーデンEricsson出身のBert Nordberg氏。現社長の小宮山英樹氏は退任となる。Nordberg氏は、シェアが低迷し、業績悪化が続くSony Ericssonを再建できるのか - Sony Ericssonの課題を分析してみたい。
Sony Ericssonの社長は2009年10月15日付けで、現社長の小宮山氏からNordberg氏にバトンタッチとなる。Ericssonとソニーが50%ずつ出資するSony EricssonのCEOには代々ソニー出身者が務めており、Nordberg氏は初のEricsson出身者となる。Sony Ericssonは同時に取締役会長の交代も発表、こちらはEricssonのCEO、Carl-Henric Svanberg氏からソニーのCEOであるHoward Stringer氏と、CEOとは逆にEricssonからソニーにバトンタッチとなった。
調査会社Gartnerが8月12日に発表した携帯電話市場報告書(2009年第2四半期)によると、Sony Ericssonは現在、シェア第5位だ。シェア順位は2008年第2四半期と変わらずだが、シェア値は7.5%から4.7%と大きく縮小している。
小宮山氏の前任となるMiles Flint氏時代にはシェア3位入りを目標にしていた同社のFlint氏の下、2007年にはシェアが8%に達したこともあった。絶頂期に退任したFlint氏を引き継いだ小宮山氏時代は、世界的な不況もあってシェア値が下がり、業績も悪化した。Sony Ericsson側は社長交代は小宮山氏の意志であることを示唆するコメントを発表しているが、Gartnerのアナリストなど、小宮山氏の自らの意志と解釈するのは不自然と見る向きも一部にあるようだ。
Nordberg氏はEricssonがシリコンバレーに持つ拠点にてIP/インターネット、ソフトウェア開発プラットフォームなどを担当してきた。その前の2002 - 2003年にはEricssonのグローバルセールス マーケティングを統括、無線ネットワークで同社が1位となるのに大きく寄与した人物という。EricssonのCEOであるSvanberg氏は、Nordberg氏の経営面での経験やスキルを高く評価しているようだ。
同氏の下で新しく出発するSony Ericssonは、すでに着手しているリストラ計画と製品ポートフォリオの見直しを進めていく必要がある。
リストラでは、2008年7月に約2,000人規模の人員削減を含むリストラ計画を発表、今年に入っては、第1四半期の業績発表と共に、追加で2,000人を解雇する計画を明らかにしている。大規模なリストラの効果もあって、第2四半期の業績は2億1300万ユーロの純損失を計上したが、赤字幅は第1四半期と比較して縮小した。
製品ポートフォリオは、同社が長期的に生き残り、事業展開する上で深刻な課題だ。Gartnerの数値では、Sony Ercissonの第2四半期の携帯電話の出荷台数は約1357万台、これは前年同期の2295万台から約40%もの減少となる。ちなみに、同期の総出荷台数の減少率は6.1%だった。上位5社のうち、同期出荷台数を増やしたのは、2位の韓Samsung、3位の韓LGの2社。Sony Ericssonのほか、1位のフィンランドNokiaと4位の米Motorolaの3社は減少となった。
もちろん、Sony Ericssonのシェアを奪っているのは、3位争いを続けてきたSamsung、LG電子だけではない。米Apple、カナダResearch In Motion(RIM)などの新規参入スマートフォンベンダだ。Sony Ericssonは伝統的に、安価なローエンド機種よりもハイエンド機種に焦点を置いてきたことから、AppleやRIMの猛攻は同社の販売台数に大きく響いているとみていいだろう。
携帯電話市場の中でも急成長中で注目度の高いスマートフォンセグメント、ここでは、Sony Ericssonだけでなく、NokiaやMotorolaなど、もともとスマートフォンカテゴリを作ってきたベンダが新興ベンダに押されている状態だ。Sony EricssonはスマートフォンではSymbian/UIQ一本化戦略だったのを、「Windows Mobile」を搭載した「Xperia」から多角化戦略に変更、米Googleの「Android」採用計画も発表している。Sony Ericsson側はこれについて、製品にあわせて柔軟にOSを採用していくと説明している。Sony Ericssonは、音楽ケータイ「Walkman」、カメラが特徴の「Cyber-shot」など従来の携帯電話の発想を抜け出し、さらにはユーザーに与える自社イメージを変えていく必要がある。なお、Sony Ericssonの製品側の最近の話題としては、「Saito」といわれる3.5インチの画面や12.1メガピクセルカメラなどの特徴を持つハイエンド機種開発のうわさがある。
今回の人事では、ソニーのStringer氏が会長となることから、Ericssonが撤退に向けて準備をしているのでは?という見方が再度浮上している。また、過去にも噂されてきたPSP電話がいよいよ開発か?という話もある。いずれにせよ、同社の今後は予断を許さない。