米Microsoftは7月24日、欧州委員会(EC)が進めているEU競争法違反調査の対策として「Browser Ballot Screen」という画面を提供する案をECに提出したことを発表した。EC側も、この提案を歓迎するとする声明文を出している。だが、31日に発表された「Windows 7」の「Family Pack」および「Windows Anytime Upgrade(WAU)」の欧州・英国価格は明らかに米国より高く、ユーザーからはMicrosoftやECに対し怒りの声が上がっている。

Ballot Screenとは直訳すれば「投票画面」だが、ここではWebブラウザを選択できる画面をいう。Microsoftの提案によると、欧州経済圏内で0.5%以上のシェアを持つWebブラウザ10種類以下を説明文、アイコン、ダウンロードボタンとともに並べるもの。横一列(平等)に並べるが、シェアが多いトップ5は目立つように配置されるとのことだ。

新規の場合、設定後、インターネット経由でこの画面が配信され、一度選択した後もユーザーはこの画面に戻って別のブラウザをインストールすることができるという。これにより、(「Internet Explorer(IE)」をバンドルした)「Windows 7」は世界で同じものを提供できるという。また、クリーンインストールを求める"E"の場合、アップグレードができないという問題も回避できる。

このBallot Screenは、「Windows XP」「Windows Vista」の既存/新規ユーザーにも提供される。既存ユーザーの場合、ECが提案承認後、3 - 6カ月で「Windows Update」経由で配信されるという。

Microsoftが公開しているBallot Screenのプロトタイプ

Microsoftは同時に、PCメーカーはIEバンドルは強制ではなく、IEをバンドルしないWindows PCの場合はBallot Screenは表示されないため、Ballot ScreenによりIEから他社製ブラウザにシェアが流れることはあっても、他社からIEに流れることはないとしている。

以前紹介したように、Microsoftは6月に、IEをインストールしない"E"バージョン計画を発表していたが、7月31日にMicrosoftの副法務顧問であるDave Heiner氏が記したところによると、Ballot Screen案が受け入れられれば、"E"バージョンは廃止となるようだ。Eバージョン計画を発表時、ECは"Webブラウザを搭載しないのではなく、選択肢を与えるように"とする見解を示しており、Ballot Screenであれば、ECを満足させられると見ているようだ。なお、Ballot Screenは当初、ECの提案だったといわれている。Heiner氏は、Ballot Screenが承認されなかった場合は、"E"を含め再度代案を出すとしている。

7月31日にHainer氏がBallot Screenや"E"に関する最新情報を発表したのと同じ日、Microsoftは世界レベルで、Windows 7のFamily Pack(3台までHome Premiumライセンスを含む)と上位エディションにアップグレードできるWAUの詳細情報を発表した。

WAUは6種類のパターンが発表されているが、「Windows 7 Starter」から「Windows 7 Home Premium」にアップグレードの場合、米国では79.99ドルであるのに対し、EU価格は74.99ユーロ、英国の場合は69.99ポンドとなる。これらをドル換算するとそれぞれ、約106.8ドル、約117ドルとなり、米国価格よりはるかに高いことがわかる。Home Premiumから「Windows 7 Professional」の場合、米国価格は89.99ドル、EU価格は179.99ユーロ(約256.3ドル)、英国価格は119.99ポンド(約200.1ドル)と、倍以上となっている。

情報サイトNeowinによると、Microsoftは各国価格の違いについて、「その国や地方の市場の状況、パートナーの利益、税、為替レートなど、多くの要因により決定される」と説明しているという。

Family Packについては、欧州・英国では2009年内に提供される予定はなく、Micrsoftは米国・カナダ以外の価格を発表していない。

これに対し、当然だがユーザーは不満だ。インターネットのサイトには、ECに従いBallot Screenを提供しながら一方で価格を吊り上げるMicrosoftに対し、リベンジだとする声もあれば、ECがMicrosoftに厳しい態度を示したために、欧州ユーザーは高い価格を払う羽目になったとECを責める声もある。

米国と比べて欧州の価格が高いのは、米Appleの「iTunes Store」など珍しいことではない。だが、今回は時期的にもユーザーの注意を引いたようだ。