先週はモバイル業界で大きなニュースが続いた。フィンランドNokia Siemens NetworksがカナダNortelのCDMAとLTE資産を6億5,000万ドルで取得というニュースで週が明け、23日には米IntelとフィンランドNokiaが「スマートフォン、ノートPC、ネットブックを超えるモバイルプラットフォーム」という、あいまいだが無視できない提携を発表した。そして25日、スウェーデンEricssonが社長兼CEO Carl-Henric Svanberg氏の突然の退任を発表し、市場を驚かせた。

まずはモバイル機器ベンダの動きから。この市場は仏Alcatelと米Lucentの合併など、数年前から統合が進んでいるが、この流れの中で2007年に立ち上がったNokia Siemensが、破産保護申請をしたNortelの無線資産を取得する。モバイル機器分野でNokia Siemensは第2位、Nortelは第5位だが、Nortel取得によるシェア値の拡大はそれほど見込めそうにない。Nokia Siemensの最大の狙いは、北米市場強化と思われる。

モバイル機器分野は現在、最大手Ericssonが33%のシェアでトップ。2位のNokia Siemensは20%、そして中国Huaweiが15%と続いている(Dell'Oro調べ)。台風の目はHuaweiとZTEの中国組。Huaweiは成長市場の中国だけではなく、欧州など世界各地で契約を獲得しており、とうとう今年、仏Alcatel-Lucentから第3位の座を奪った。

トップのEricssonを6年間率いてきたのがSvanberg氏だ。Svanberg氏がCEOを務める間、Ericssonの売上高は年平均成長率12%という目覚しい成長を遂げた。小型企業買収により補完技術を得るという戦略の下、大企業どうしが合併したNokia SiemensやAlcatel-Lucentが統合に手間取る中、トップの地位をさらに固めた。

Svanberg氏はEricssonを退任後、石油大手のBPの会長に就任する。そういえば、Nokiaが携帯電話分野で現在の地位を獲得した立役者である元会長兼CEO、Jorma Ollila氏も、2006年にNokiaを離れ、同じく石油会社Royal Dutch Shellの会長に就任した。

気になるのは、IntelとNokiaの提携だ。「IAベースのモバイルコンピュータ端末とチップセットアーキテクチャの開発」を共同で取り組むというもの。このビジョン実現にあたり、スマートフォン、ノートPC、ネットブックの先を行くモバイルプラットフォームを定義するという。Intelはまた、NokiaのHSPA/3Gの技術をライセンス取得する。

プラットフォームでは、Intelは「Moblin」(プロジェクトはLinux Foundationに移管)、Nokiaは「Maemo」を持つ。共にLinuxベースのオープンソース技術で、MoblinはAtom搭載ネットブック向け、MaemoはNokiaのインターネットタブレットで利用されている。2社は発表資料で、MoblinとMaemoの両プラットフォームプロジェクトで利用できる共通技術を開発していくとしている。

Intelの狙いは、ネットブック/携帯電話への拡大だろう。携帯電話用プロセッサでは現在、英ARMが独占しており、Intelは後を追う立場になる。「iPhone」「Android」「BlackBerry」などが話題をさらっているが、Nokiaは携帯電話でシェア35%以上を持つのだ。この発表の翌日、IntelのテレコムセクターグローバルディレクターのJohn Woodget氏がEricssonのイベントに登場したので聞いてみたが、「現時点で話せることはない」とのことだった。また、WiMAXについてもこれまでの戦略を続けていく意向を示した。

一方、Nokiaの狙いはわかりにくい。Nokiaは携帯電話では、非営利団体のSymbian Foundationを支援しているが、今回の提携に「Symbian」の文字はない。翌日、ネットブックでQuanta ComputerとCompal Electronicsと契約したといううわさが流れていることもあり、ネットブックへの拡大を狙うと見るのが妥当かもしれない。Androidの例でわかるように、ネットブックとスマートフォンの境界はあいまいになりつつある。Symbianが、iPhone、Android、「Palm Pre」を前に話題をさらえないところで、フォーカスをMaemoに絞ってまったく新しい端末を出す、ということも、ありえないわけではなさそうだ。なお、今年2月の「Mobile World Congress」で、Nokia幹部はMaemoとネットブックの可能性を否定していない。

調査会社IMS Researchによると、ウルトラモバイル端末、3Gスマートフォン、ノートPCの2009年の予想出荷台数はそれぞれ5,000万台、1億5,000万台、1億2,000万台。5年後には、ウルトラモバイル端末は2億1,200万ドルに成長すると予想している。

「Maemo」を搭載したNokiaのインターネットタブレット「Nokia N810」。Intelが推進するWiMAX版の製造は中止された