3G iPhoneいよいよ登場!

いよいよiPhoneが日本でも販売されるということで、読者のみなさまも気になってるところではないでしょうか。こちら米国では7月11日に$199という低価格でiPhone 3Gが登場するので、かつて$399で売り出されたiPhoneと何が違うのか、と話題になっているところです。The New York Times紙にも"For iPhone, the 'New' Is Relative"という記事が掲載されています。販売されてから1年も過ぎているのにiPhoneはいまだに注目の的であり続けています。

さて、この「…は注目の的です」を英語にしてみるとどうなるでしょうか。簡単な言い方なら、"Many people has been interested in iPhone since 2007."のようになるかもしれませんが、ちょっと主語を変えると"iPhone has attracted a lot of people since its first release back in 2007."とも言えるかもしれません。主語を変えただけで、雰囲気が変わるのがわかるでしょうか。今回はこの「主語」について話をしましょう。

主語を書き換えるトレーニングで表現力up!

英語の文章で主語、とくに文章をより洗練された雰囲気にしてくれる適切な主語を使うのはとても重要です。主語を省略しがちな日本語と違い、主語がないと文章が成り立たない英語では、何を主語にしてどのように文章を組み立てるかといったトレーニングは欠かせません。

やっかいなのは、主語の選び方はテキストでは解説されていないことでしょう。文法のテキストにもなければ、ライティングのテキストには効果的な文章の始め方の説明はあっても、主語の選び方までは解説されていません。できるだけ多くの英文に触れて、自分なりによい主語とは何かを学ぶしかありません。

さっそくお手本になりそうな、先ほどのiPhoneの記事で何を主語にしているのかを見てみましょう。冒頭に並べられている短い文章、4つですでに

  1. …, our nation was swept by iPhone Mania.
  2. TV news coverage was relentless.
  3. Hard-core fans camped out to be the first in line.
  4. Bloggers referred to Apple's new product as …

といったさまざまな主語が使われています。4つとも短いながら、状況をうまく表現している文章で感心させられますね。とくに2つめの文章の主語は絶妙で、日本語を英文に直している限り、けっして書けそうにない文章です。おそらく日本語では「テレビのニュースで大々的に報じられた」でしょうから、" It was reported broadly on TV news."がせいぜいでしょうか。"TV new coverage"という主語を思いつくにはかなり英文に慣れていないとできません。

ただし、読者の方々はプロの英語のライターではありませんし、そうなろうと思っているわけではないでしょうから、適度にバラエティに富んだ主語を使えるようになればいいのではないかと思います。そのためにはまず、一度書いた文章の主語を書きかえてみる練習をするといいでしょう。たとえば、"iPhone 3G will be sold in Apple stores."という文章を思いついたら、"Apple stores will sell iPhone 3G."と書き直してみます。とくにこの例のように、passive voice(受動態)をactive voice(能動態)に書き直すトレーニングはぜひトライしてほしいトレーニングです。英語の場合、passive voiceをいくつも書きつらねた文章は、説得力のないつまらない文章と評価されます。本連載で何度か触れてきたように(第12回第34回第43回第50回)、assertiveに主張することを良しとする文化が英語ですから、より強い主張になるような主語選びを心がけたいものです。

子どもの英語から大人の英語への脱却はいかに!?

書き言葉ではさまざまな主語を使って変化をつける努力をするのがよい英語とされていますが、話し言葉ではどうでしょうか。さすがに、書き言葉ほどはバラエティがありません。たとえば、言語的にはまだ発達段階にある12歳(!)の少年、Dmitri Gaskin君がJavaScriptのライブラリであるjQueryについて行っているプレゼンテーションをご覧になってください。日本の高校で勉強する英語は米国のレベルでは小学校の中高学年くらいですから、ちょうど日本の高校を終わったくらいで、このGaskin君くらいの英語力になるのではないかと思います。つまり、読者のみなさまにとっても、このくらいは話せるのではないかというレベルです。いかがですか? この年齢でこんなプレゼンテーションができるなんて、本当にびっくりするようなa smart boyですが、注意して主語を聞いていると "I" "you" "this" "those"といったシンプルな単語が多く使われているのがわかるのではないでしょうか。

大人の英語はどうでしょうか。今度はjQueryの作者であり、Mozilla CorporationのJavaScriptエバンジェリストでもあるJohn Resig氏のプレゼンテーションをご覧になってください。やはり言語能力という点では明らかに違います。たしかに"I"や"you"は頻繁に使われていますが、1分55秒付近で"DOM Traversal is absolutely a core of the library."、2分25秒付近で"jQuery is focused on breaking down into two parts. The first part is selecting something. The second part is to perform an action against it."のように、難しいものではありませんが、変化に富んだ主語が使われています。主語以外でも、relative clauses(本連載第47回)を利用したブツ切れではない文章が多く、より英語らしい表現になっています。

ただし、プレゼンテーションのようにスライドがあり、あらかじめ準備ができる場合はスピーカはさまざまな主語を使えますが、ふだんの会話では"I" "we" "you" "he/she"などはとてもよく使われる主語です。NPRの記事"Life on the Space Station"では、宇宙ステーションにいる2人の飛行士に短いインタビューを行っていますが、飛行士は"I" "we"という主語を頻繁に使っています。後半、日本の実験施設である"Kibo(きぼう)"に言及しているあたりで、他の主語が登場している程度です。

バラエティに富んだ主語を駆使して、英語らしい表現ができるようになれたらなぁ……という希望を実現するためには、ひたすら英語に慣れる努力をするべきでしょう。12歳の英語から大人の英語になるまで、ネイティブスピーカでも6年以上の月日を費やしています。一朝一夕にできるようになるものではありません。英語を読む機会があったら、主語は何を使っているか、冠詞は、関係代名詞は、etc.…といろいろ考えながら英文を眺めてみるくせをつけるといいかもしれませんね。新しいiPhoneがあったら、いつでもどこでも英語のトレーニングができるかもしれません。