Javaの世界では最大のイベントであるJavaOneが今年も先頃、開催されたところです。その様子を随所で公開されているブログを読んで、すごいと思ったり、それほどでもないと思ったり、いろいろな感想を持たれ方がいるかもしれません。

今や、主要な情報源となっているブログ、私は日頃から英語/日本語両方でいろいろなブログを読むようにしていますが、読者の方々はいかがでしょうか? 英語のブログを読んでいると、日本の中にいるとなかなか気がつかない外からの視点が見えてきて面白いものです。そして、英語と日本語の両方を読んでいると、文化の違いがブログに反映されているのも見えてきます。違いの中には、本連載でこれまでに何度か取り上げてきたthesis中心の書き方がひとつつですが、ブログに掲載する写真など、個人情報の公開範囲もあります。ブログを書いている人自身に無意識のうちに刷り込まれた文化が垣間見えるのですが、お気づきでしょうか。今回は、ブログをはじめとしたソフトウェアの世界にも影響している文化の違いについて話をしましょう。

日本人が日本語でブログを書いて、読むのも日本語がわかる人だけ、となるとなんだかとてもマイナーな世界のような感じがしますが、"Japan: Number 1 Language of Bloggers Worldwide"によると、投稿数では日本語ブログが堂々世界第1位の座を獲得しています。約1年前のやや古いデータなので現在も1位かどうかはわかりませんが、それでも日本語を読み書きできる人口を考慮すると、驚異的な数値ではないでしょうか。日本は世界最大のブログ国だったようです。

この記事では世界一となった投稿数について分析されていますが、その中に「あまり自己プレゼンをしないかわりに、文章を介すくらいの距離感のコミュニケーションがちょうどいいのかも」という引用があります。本連載第34回「発言しない日本人、自己主張が強い米国人」で、assertiveで公の場での口論も珍しくない米人に対して、控えめで協調をよしとする日本人の話をしましたが、日本人好みの控えめな表現にブログはぴったりなのかもしれません。

これほどのブログ大国となると、ブログ、そしてmixiのようなSNSにはビジネスチャンスがあると見るのは当然で、ご存知のように、米国のSNS大手であるMySpaceはすでに進出済み、そしてFacebookも日本に進出することを決定しています。注目されるのは、"米国系のSNSが日本ですでにかなりのシェアを獲得しているmixiに勝てるのか?"でしょうか。ちなみに、"japan.internet.com デイリーリサーチ"によると、現在、圧倒的にmixiの一人勝ち状態です。

Facebookの若き創設者兼CEOのMark Zuckerberg氏は日本でもFacebookを成功させられるのか!?(5月19日の日本での記者会見にて)

このFacebookの日本進出に関して、"Tokyotronic: Can Facebook make it in Japan? Pros and Cons"に私の考えを代弁してくれているようなブログエントリがあります。とても興味深い分析ですし、難しい英語ではないので、一読してみてください。ここに取り上げられているPros & Cons(良い点、悪い点)はどれもうなずけるものですが、特に、Consの2つ目の" The Japanese are the most quality conscious people in the world."はまさにそのとおりと、日頃、感じているところです。日本人はほんとうにquality conscious(品質に敏感)なので、モノばかりではなくソフトウェアも完璧じゃないと不安で使えない感覚を持っているのではないでしょうか。これに対して米国製はどうでしょうか。本連載第12回で「あたりまえのように間違い(errorやflaw)が発生する国」と触れたように、何事も完璧ではありません。人々はassertiveになってその間違いを修正してもらって日々を過ごすのがあたりまえです。

そして、このブログエントリのコメントには日本人は秘匿性を好むので、個人情報をすべて公開することをウリにしているFacebookが受け入れられるかどうかを疑問視する書き込みがあります。たしかに、日本人のブログの写真は本人の顔写真ではないことが多いですし、公開しているのは名前程度のものもよく見かけます。個人情報を公にしたがらないのは東アジア人の価値観らしく、韓国人や日本人はこの傾向がありますが、ヨーロッパや南米など他の地域の人には不思議な感覚らしく、なぜ隠したがるのかというdiscussionをESLのクラスでしたことがあります。日本人の文化にFacebookが受け入れられる可能性は、"Can Facebook …"のブログのConclusionにあるように、少ないのかもしれません。

最近、日本のブログを読んでいると、日本のソフトウェア業界が海外進出できない話題を目にするのですが、逆もまた真で、海外のソフトウェアが日本で受け入れらにくい事実もあります。日本文化の中で育った、日本文化をよく知っているソフトウェアでなければ日本人に受け入れられにくいのもひとつの理由かもしれませんが、日本製のソフトウェアで十分満足できるので外国製を必要としていないのも理由でしょう。悪くいうと閉鎖的ですが、ソフトウェアの世界でも独自文化が花開いている国です。

とはいっても、この連載の読者には海外でもやっていけるようになるために英語を勉強している方もいるでしょう。アドバイスとしては、海外で、特に米国で成功するためには何といってもassertiveに主張を繰り返せるようになることでしょう。この文化がない国で価値観がすりこまれてしまった私には、とうていできるようになるとは思えないくらい、米国人はassertiveです。あたりまえのようにerrorsやflawsがあっても、です。同時に、assertiveになれないとつまらない人&モノという第一印象を与えるようです。例えば、International Herald Tribuneの記事"Facebook wants to avoid getting snatch up"に掲載されているFacebookの創設者 Zuckerberg氏のコメントはこうでした: "Zuckerberg said he was confident that Facebook could lure Japanese users…" 自信を持って「できる」と主張しています。これが彼らの文化です。

さて、いきなり、assertiveに英語で主張するのは難しいはずなので、まずは、英語でブログを書いて何かを主張する練習をしてみてはいかがでしょうか。きっと、よい英語のトレーニングになるはずです。