春うらら、いい季節になりましたね。そして日本はゴールデンウィークですから、どこかにお出かけの方も多いことでしょう。"Right now, Japanese people must enjoy days off this week, which is called Golden Week."と、うらやましい気持ちを込めて一言いいたくなるときです。アメリカにも1週間のお休みくらいなら、ThanksgivingやEaster、年末のお休みに、あれにこれに……といろいろあるはずなのですが、自分は休みじゃないのに他人は遊んでいると思うとなぜかとてもうらやましくなります。ところで、上の英文で使っている"カンマ+which"の言い回しは英語では何というか覚えていますか? そうです、関係代名詞でしたね。英語ではrelative clausesあるいはrelative pronounsと呼ばれる文法のひとつです。今回はこのrelative clausesについて話をしましょう。

ぶつ切れの文章はネイティブに嫌われる

読者の皆様の中にはrelative clausesは難解だと思っている方がいるかもしれません。なんといってもこれがあると、文章が長くなって何がどうなっているのかよくわからないという印象があるのではないでしょうか。ですが、英文に慣れるにしたがって、特に英文を書くようになると、relative clausesは必須です。使わないと、小学生の文章であるかのように幼い印象になるうえに、読む人の思考がピリオドで停止するので、何をいいたいのかわかりにくいと思われる可能性が大きいのです。この文法をマスターするには解説を理解するよりも、実際に書いて使ってみることが一番です。ぜひお試しください。

では、どのような場面でrelative clausesを試してみればいいのでしょうか。Relative clausesを使う目的は主に2つあります。ひとつは流れるような文章にして、読む人の思考停止を避けること、もうひとつは誰が読んでも誤解のないクリアな内容になるように情報を追加することです。

たとえば、極端な例ですが、

MySQL is a database management system. MySQL is famous. MySQL is an open source product. We can store various kinds of information in MySQL.

のように書かれた英文はいかがですか。ピリオドで思考が停止するのがわかるのではないでしょうか。加えて、読んでいるうちに、"So what?"と言いたくなりませんか? 日本語は英語に比べるとひとつの文章が短いので、日本語を英文に置き換えただけの場合、このようなブツ切れの文章を知らない間に書いていることがあるので気をつけたいところです。このようなブツ切れの文章は英語ではchoppyであるといい、とても嫌われます。

このchoppy sentencesを流れるような文章にするにはいくつかの方法がありますが、そのひとつがrelative clausesを利用することです。上記の文章の場合、何度も出てきている"MySQL"という単語をwhichで置き換えていくと、おそらく第1段階としては、

MySQL, which is a famous and open source product, is a database management system, and we can store various kinds of information in it.

のような文章になるでしょうか。少しは大人の英文らしくなったのではないでしょうか。ここでは、nonrestrictive(non-defining) relative clauses(非制限的関係詞節)という文法を使っていますが、これはwhich節で情報を追加するときに使います。このように情報を追加することで2つめの「誤解のないクリアな文章にする」目的も果たしています。

かなり良くなったとは言えますが、MySQLが"it"に姿を変えて出てきていますし、後半の文章は無理矢理つなげた感じがするので、もう一歩進んだ文章を考えてみましょう。

One of well-known, open source database management system is MySQL in which we can store various kinds of information.

この文章はどうでしょうか。ここで行っているのは形容詞を利用したこと、主語を変えたこと、そしてin whichで始まるrelative clauseを使っていることです。よく目にする英文みたいになったのでないかと思います。このように実際に文章を書いてみると、たとえ長い英文でも何がどうつながっているのかがわかるので、和訳するときにも役に立つでしょう。

制限的用法と非制限的用法の違い - カンマひとつでエラいことに!?

ひとつ、注意しておきたいのはrestrictiveとnonrestrictive(definingとnon-defining)の違いです。

  • My husband who works in the U.S. will come back this fall.
  • My husband, who works in the U.S., will come back this fall.

わかるでしょうか。1つめはrestrictiveなので、複数のうち特定の何かを限定するために使いますから、「何人かいる夫のうちアメリカで働いている夫はこの秋に帰ってくる」意味になります。そういう国、あるいは地域は地球上に存在するかもしれませんが、通常はとても奇妙な響きです。2つめはnonrestrictiveで、情報を追加しているので、「私の夫はアメリカで働いているのですが、この秋に帰ってきます」という、とても普通の文章です。

文章を書く点からrelative clausesを見てきましたが、この文法は話し言葉でも使われているので、具体例を聞いてみましょう。Software Engineering Radioの"Episode 93: Lessons Learned From Architecture Reviews with Rebecca Wirfs-Brock"の中で、Wirfs-Brock氏はよくwhichというrelative pronounを口にしています。たとえば、冒頭の自己紹介で"… responsibility driven design, which is a way of thinking …"や "… sourcing those out, which is a purpose (that) we are going to talk about today."のようにnonrestrictiveな用法で使っています。ほかにも何度も出てきているので、注意して聞いてみてください。また、聞き手のMarkus Volter氏も5分45秒付近で、"… people to whom you show what you have …"のようにrelative clauseを使って質問しています。この"to whom"ですが、アナウンサーなどは比較的よく使う文法でNRPを聞いていると耳にすることは多いのですが、ほかではあまり聞きません。おそらく、とてもformalな言い方だからでしょう。

  1. He encouraged his new student to whom he instructed yesterday.
  2. He encouraged his new student whom he instructed to yesterday.
  3. He encouraged his new student who he instructed to yesterday.

1→2→3の順番でformalからinformalな言い方になるので、話し言葉の場合、最後の言い回しか、あるいはwhoも省略していることがあります。

もうひとつ、具体例を聞いてみましょう。同じSoftware Engineering Radioの"Episode 89: Joe Armstrong on Erlang"です。冒頭から3分10秒くらいのところで、Armstrong氏がとてもゆっくり、はっきりと"Erlang is a language which makes concurrent programming painless."と言っています。これは「いくつかある言語の中でErlangは」というrestrictiveな使い方ですね。

今回は、関係代名詞の使い方にごく簡単に触れましたがいかがだったでしょうか。この記事でrelative clausesすべてについて語ることはできないので、"relative clauses"や"relative pronouns"をキーワードにして検索してみてください。おそらく、Relative pronouns – The OWL at PurdueHow to Use a Relative Clausesがわかりやすいのではないかと思います。いずれにせよ、とてもよく使う文法である上に、使いこなせると英語らしくなってくるので、ぜひインターネットのサイトで勉強してみてください。