3回にわたり、英語でプレゼンテーションをするにはどのように話を組み立てるかという話題を取り上げてきましたが、問題は「プレゼンテーションを行っているそのとき」という方は多いかもしれません。とにかく緊張してしまって、言うべきことを言い忘れたり、頭が真っ白になってしまったり…と、大変な思いをした経験があるかもしれません。そして、最大の難関はQ&Aの時間でしょうか。しゃべり慣れない英語でなんとかプレゼンテーションを乗り切ったとしても、その後のQ&Aはどうする? という不安は多いにあるでしょう。今回は、プレゼンテーション時の緊張を少しでもなくすにはどうすればいいかという話をしましょう。

緊張するのは日本人だけ…ではありません!

実はプレゼンテーションで緊張するのは米国人もまた同じなのです。"College of Fine Arts Career Center: Strengthen Your Presentation Skills"の中ほどにある"What if I Get Nervous?"のセクションにこんなことが書いてあります。

Americans' second greatest fear is the fear of dying. Their first fear is speaking in public. Whether it's sweaty palms, a pounding heart, or a queasy stomach, nervousness often plays a part in public speaking.

これは私が持っているプレゼンテーションのテキストにも書いてあったことで、やはり人前で話をするのは誰にとっても緊張することのようです。ただ、その緊張がわかるのは話をしている本人だけで、聞いている人たちには意外とわからないものです。プレゼンテーションのクラスでは、よくこの話を聞かされましたし、自分も経験しました。また、"Presentation Skills Success" の"Overcoming Presentation Anxiety"のところでも触れられています。緊張するな、は無理ですが、落ち着く努力だけはするといいでしょう。

さて、前出の"What if I Get Nervous?"のセクションにはどうすればいいかのアドバイスもあります。簡単にまとめると、

  • 自分のトピックについては聴衆よりも自分のほうが知っていると自信を持つ
  • 普段、よく話をする人を聴衆の中から見つけてその人に向かって話をする
  • プレゼンテーションを成功させる! という思いで準備をすすめる

となります。いかがですか? テクニカルなプレゼンテーションを英語で行う状況を考えると、1つめは問題ないでしょう。2つめは自分から聴衆を敵にまわしたりせずに、フレンドリな思いで聴衆ひとりひとりをとらえると良い、という内容も含まれていますが、これは役に立ちそうですね。そして、なんといっても成功させるつもりで準備することは大切です。最初から「失敗したらどうしよう」という不安だらけで準備していても、いい内容のプレゼンテーションにはなりそうにありません。

Q&Aのカベ - 慣れない英語で質問されたらどうしよう!!!

では、Q&Aについてはどうでしょうか。"How to Handle Questions & Answers - presentation skills"にとても役に立ちそうなアドバイスが多数あります。タイトルには"Dreaded Questions & Answers Period"(恐怖のQ & Aタイム)という表現がありますが、本文にも" it can be their worst nightmare."とあり、米人であってもQ&Aは苦手な人が多いことが伺えます。ここに列挙されているのは、

  1. 答え始める前に質問すべてを聞く
  2. 質問を理解するための時間をとる
  3. 質問してくれた人に敬意を表する
  4. 正直に答える
  5. 相手が知りたかった内容を答えているか確認する

です。ではひとつずつ見ていきましょう。

上記のポイントはどれも重要なのですが、中でも質問をすべて聞くのはとても重要です。ネイティブスピーカの質問は単語数が圧倒的に多く、いったいいつ質問が終わるのかと思うような長い質問に出遭うことがよくあります。本連載第8回の最後から2つめのパラグラフで、米国社会はdiverse communityなので自分の意図が正しく伝わるように多くを語るという話をしましたが、これはプレゼンテーションのQ&Aでも言えることのようです。また、本連載第34回の最後から2つめのパラグラフで、よきリスナーであるためには「質問することで自分が知っている情報を与える」ことに触れましたが、これを実践している場合もあるでしょう。長い質問を英語で聞いているのは楽ではありませんが、聞いているうちによい返答が思い浮かぶかもしれません。最後まで、しっかりと聞きたいものです。

質問をすべて聞いても、何を言っているのかその英語そのものが理解できなかったらどうすればいいでしょうか。もしも、声が小さかったり、話し方が速すぎたりした場合は、"Would you speak louder/more slowly?"と要求しましょう。決して失礼ではありませんので大丈夫です。そのような問題がなく、英語がわからない場合は、技術的な用語を手がかりに、おそらくこのようなことを聞きたいのではないかと思われる返答をした後に、5.にあるように、質問として"Does that answer your question?"や "Is that the kind of information you were looking for?"をしてみるといいのではないでしょうか。少なくてもプレゼンテーターはそのトピックのエキスパートのはずですから、何かは答えられるのではないかと思います。ただし、4で触れられているように、正しい答えを知らなかったら「わかりません」と返答することも忘れないでください。「わからないから、調べて後で答える」と返答すべきというセオリーは、私はプレゼンテーションのクラスでも聞きました。

その他、3には、質問してくれた人に敬意を表して"That was a great question,"や "Glad you asked that question"のようなことを述べるとありますが、これは最初の一言としてもよいので、覚えておくとなにかと使えるでしょう。また、とりあえず、このように言いながら、何を答えるか考えるとよいとも言われています。2.では質問を理解する時間をとることと、質問を繰り返すというアドバイスがありますが、質問を繰り返すのはおそらく非常に難しいでしょう。本連載第40回などで取り上げたNeal Gafter氏のプレゼンテーションを見ると、Gafter氏は必ずこれを行っていますが、そのためには、質問をsummarizeしてparaphrase(自分の言葉で言い直す)する作業を伴います。そこまで無理をしなくてもいいかもしれません。

いかがですか? 少しはanxiety(不安な気持ち)が薄れたでしょうか。今回、紹介した3つのサイトにはこの記事で触れた部分以外にもとても参考になりそうなアドバイスがいくつもあるので、英語でプレゼンテーションをすることになったら、ぜひご覧になってください。