iPodで音楽を聞き、Wiiでゲームを楽しみ、デジカメを持って旅に出て、ビジネスマンはみなノートPCを持ち歩いている…これは日本だけの現象でしょうか。いえいえ、米国もまったく同じです。米国のモノは日本に渡り、日本のモノは米国に渡り、人々は国の違いにかかわらず似たようなモノを持って暮らしています。物質文化という点では日本と米国はかなり近い国どうしではないでしょうか。

ところが、精神文化という点では驚くほど大きく違います。そして、この違いは英語を聞く/話す/読む/書くときすべてに影響してきます。文法的には正しいはずの自分の英語をどれだけわかってもらえるかは、文化の違いをうまく英訳できているかにかかっています。今回は英語を使う場合にどのような精神文化の違いに気をつければいいかの話しましょう。

"What is the point?" - 要点を先に言うクセ

まず最初に、英語を書く/話す場合には「何が要点なのか」を明らかにすることから始める点に気を付けましょう。日本語の場合、「これこれしかじかで、……なので、こういうことになります」という順番になりがちですが、これは英語ではやってはいけません。英語はwhat-is-the-point cultureですから、これからはじめるスピーチの、あるいは読んでもらうドキュメントのポイントは何かを最初に言います。英語でドキュメントを書いたり、スピーチを準備する場合は、ためしに「The point is...」というフレーズで言ってみてください。このフレーズに続けられるような内容でスピーチが始まっていればa good startです。ニュースを見聞きしていると、概要を説明したあとレポータに「What is the point?」といきなり聞くニュースキャスターは少なくありません。「なぜ自分はこの英文を書いたのか」を冒頭で述べているかどうか、自問してみてください。

ポイントの次はそのポイントのサポートや実例ですから、「the reasons why readers/audiences must read/listen to my document/speech」の答えを明確に複数挙げているかをチェックしてください。最初に述べたポイントとの関連が明らかであるかどうかも重要なチェック項目です。これだけではわかりにくいでしょうから、簡単な例で説明しましょう。

英語で会社を休むのはタイヘン!

「風邪をひいたので、会社を休みます」がとても日本語的な表現だということはわかるでしょうか。英語の視点では、「風邪をひいた」という表現はあいまいで、そのあとに「会社を休む」と続けるにはギャップもあります。英語だったら、「会社を休みます。というのも、熱が37.5度あって平熱よりもずいぶん高くて、くしゃみや鼻水も出るんです。仕事をしても効率は悪いと思うし、風邪だったらほかの人に移してはいけないし、医者にも行った方がいいと思っています」となるでしょう。

まずは「会社を休む」というポイントを述べて、「熱」「くしゃみ・鼻水」「効率」「うつす」「医者」の合計5つの明確なサポートを行っています。これが英語的なものの言い方です。このようないい方は理解するだけではなかなかできないものです。慣れるためには日本語でいいので、ポイントに続くサポートを言ってみるトレーニングをするといいかもしれません。たとえば、自分の好きなプログラミング言語、あるいは開発環境を1つだけ選んで、次に好きな理由を10挙げてみるなどです。

英語で仕事をしなければならない場合には英語らしいもののいい方だけではなく、business ethicsと言われる、精神文化の理解も必要かもしれません。たとえば、日本社会には「そのようなことを言ったら角が立つ」と、モノをはっきり言わずコトを円満に進める文化がありますが、米国にこの文化はありません。米国では、自分の意見/要求をはっきりと主張するのがよしとされています。正しいかどうか、ふさわしいか、効果的か、などは意見を述べる時点では重要ではないのです。

正しいかどうかは、意見を述べたあとで行われる討論の結果で判断されるのが一般的のようです。誰もが「自分はこのように考える、その理由はあれに、これに……」のように自分なりの考えを持っていて、いろいろと説明できるところはすばらしいのですが、討論がエスカレートして言い争いになることも珍しくありません。そうした言い争いが嫌で、東アジア的な和を重視するethicsに憧れを感じる人もいるほどです。ただし、ほとんどの米国人は「和」を重視する社会に違和感を持ちます。英語のクラスで日本と米国のbusiness ethicsの違いについてスピーチを行ったことがあるのですが、米人の先生からは「自分はアメリカでよかった。他人との和を気にするなんて考えられない」との感想をいただきました。

"違う"からこそfriendlyで行こう

誰もが自分の意見を主張し合うような社会だからかもしれませんが、米国では同僚がfriendlyであるかどうかを重視する人は多いようです。いっしょに仕事をする人はfriendlyな人じゃないと嫌だと思っているほどです。誰かに会ったら必ず「Hi! How are you?"(若い人なら "What's up?")」と挨拶をし、時間が許せば、自分の家族の話や最近あったことなど、実にさまざまな話をして親交を深めます。米国は"diversity"という言葉を頻繁に見聞きするところ、誰もが違うので、お互いを理解し合うために話をする必要があるのかもしれません。ですから、そこで話しに加わらない人はfriendlyであると思ってもらえないので、機会があったら何でもいいので話をしてみてください。自分のことを理解してもらえる度合いが上がるのではないでしょうか。

日本人社会は比較的均質で、同じような価値観を持ち、同じように感じ、行動しています。すべてを言わなくても「わかるでしょう、ね?」で通じてしまう部分すらあります。ところが、米国は違う価値観を持ち、違う宗教理念に従い、違う出身国とその文化の中で暮らしている人々が集まっているところです。できるだけ多くのことを明解に言い、説明し、自分を理解してもらうのが習慣になっています。米国人と仕事する場合はこうした精神文化の違いを理解して、言葉だけではなく、文化も含めた英訳に気を付けると、より自分の英語をわかってもらえるようになるのではないでしょうか。

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