今回はData Domain Virtual Edition(DD VE)のユースケースと構築方法について解説する。

1. ユースケース

最初のユースケースは、リモートオフィスや支社を持つ企業を対象としており、このユースケースではリモートオフィスに複数のDD VEインスタンスを導入し、災害復旧に備えて中央のデータセンターに有する大規模なData Domainにレプリケートすることができる。

DD Replicatorを使用することで、一意のデータだけがDD VEからWANを介してDRサイトのData Domainシステムに転送されるため、標準的なレプリケーション方法で必要とされる帯域幅を最大99%軽減することが可能だ。

さらに、帯域幅スロットリングにより、WANを介してデータを送信するタイミングをスケジュールすることや、レプリケーションに使用できる帯域幅の量を制限することができ、リソース使用率の向上が図れる。また、DD VEはDD VEから物理DD、物理DDからDD VE、DD VEからDD VEといったレプリケーションをサポートする。

図1. ユースケース例1

2つ目のユースケースは、エントリークラスの物理Data Domainでは大きすぎた小容量のワークロードを効率的に保護することだ。これには、小規模な企業や、大企業の一部門でありながら独自の保護ストレージソリューションを必要とするケースが考えられる。

例えば、ある小規模な企業は数台のサーバを所有しており、数種類のアプリケーションを実行し、データの総量はせいぜい3TBかもしれないが、そのデータは保護が必要な重要なデータであることに変わりはない。

そこで、DD VEを使用することで、既存のインフラストラクチャを活用しながら、保護ストレージのメリットを小さい設置面積で享受することができる。DD VEのライセンスは1TB単位で購入可能なため環境の成長に応じて容量を増やすことができる。

図2. ユースケース例2

3つ目のユースケースでは、サービスプロバイダとコンバージドインフラストラクチャの新しいユースケースへの拡張が挙げられる。サービスとして、より安全なデータ保護を提供するため、DD VE3.0では安全なマルチ テナンシーへ機能が拡張されている。ネットワークの分離機能はテナント間での厳格なデータ アクセスの分離強制を提供する。データ アクセスはテナントユニットのIPアドレスを通したテナントユニットのストレージリソース(Mtrees/Storage Units)に制限される。

特定のリモートIP(クライアント)のみがDD VEのネットワークファイアウォールを通り、特定のテナントユニットのIPアドレスにアクセスできる。プライベートクラウドを介したエンタープライズでのローカルバックアップ例では、この分離機能により、ほかのビジネスドメインからのユーザーが重要なバックアップデータにアクセスすることはできない。

また、DD VEは安全なマルチテナンシーのためのSSL証明書ベース認証を採用しており、強化された認証により安全なレプリケーションを実現し、パブリックインターネットを介したDD VEによるレプリケーションの安全性を確保するため、サービスプロバイダーまたはエンタープライズはテナントレベルでの監査を実行できる。

さらに、監査ログの新しい機能拡張はテナント固有のログにロールベースのアクセスを提供する。これにより、テナント管理者が指定されているユニットに属する監査ログしか表示できないようにし、DD VE管理者は非SMT関連の監査ログに加えて、引き続きすべてのテナントユニットに対して監査ログの表示を可能としている。

図3. ユースケース例3

将来的にはアマゾンウェブ サービス(AWS)およびマイクロソフトアジュール(Azure)のクラウドコンピューティングプラットフォームへのデプロイがサポートされる予定だ。

2. DD VE仮想環境導入

DD VEは容量モデルごとに仮想環境要件(図4)およびストレージ性能要件(図5)があるため、これらの要件を満たす必要がある。また、パフォーマンスに関する問い合わせは、これらの要件を満たしていないとサポートを受けることができない場合があるため、注意が必要だ。

図4. 仮想環境要件(例 VM Ware環境)

図5. ストレージ性能要件

実際にDD VEの構築方法についてビデオで紹介する。

DD VEを構築方法を紹介する動画のイメージ

いかがだったろうか。簡単に作成ができることが理解されたかと思う。Try And BuyとしてDD VEの容量を0.5TBまで無期限でフルバージョン試用版を提供しているため、活用してみるのもいいだろう。なお、Try and Buyのサポートはコミュ二ティ限定(英語)となる(リンク先はECNのData Domain Community)。

3. まとめ

データ保護のランドスケープが進化し続ける中で、企業は要求の厳しいSLAの遵守と同時に、厳しさを増すITコストの削減圧力に直面している。DD VEは導入が容易であり、必要に応じて拡張可能な仮想環境の効率性を有するソフトウェア デファインド保護ストレージを提供し、シンプルで柔軟かつ効率的なソリューションの実現をもたらすだろう。

EMCジャパン株式会社
システムズエンジニアリング本部 プロダクトソリューション統括部 データ プロテクション ソリューション部 シニアシステムエンジニア
愛甲 成一
現在、DELL EMCのデータ プロテクション ソリューション部にてデータ保護製品を販売するプリセールスとして活動。今後も増え続ける重要なデータを効率よく、安全に保護し、確実に復旧できるソリューションを提供し続けて参りますのでデータ保護は、お任せ下さい。