前回の連載では、メール作成の負荷を削減する4つのコツをご紹介しました。第3回目となる今回は「メールマーケティングへのAI(人工知能)活用」がテーマです。
2022年11月に「ChatGPT」がリリースされて以降、各社から無料で使えるAIツールが続々と開発されています。それに伴い、さまざまな媒体でAIを使った業務効率化手法が紹介されるようになり、実際に業務で使っている人も増えていることと思います。
メールマーケティング業務においても、AIを活用することで効率化できる部分は多くあります。そこで今回は、筆者が実際に検証したAIツールの活用方法をご紹介します。
生成AIを活用して業務を効率化しよう
AIツールの活用方法やプロンプトを紹介したコンテンツも普及しており、日々の業務にAIツールを活用している企業も多いでしょう。
SEO記事やマニュアルの作成、クロスレビューなどさまざまな用途で活用でき、業務を効率化してくれる便利なAIツールですが、メールマーケティング業務においても有効なツールです。
前回の記事でも、メールの本文作成にAIツールが活用できるという話はしていますが、それ以外にもステップメールのシナリオ作成、コンテンツ提案などさまざまな場面でAIが活用できます。
メール配信業務でAIが活用できる4つのシーン
今回は、メールマーケティングのどのような業務でAIツールが使えるかをご紹介していきます。
セグメント配信の提案
メールマーケティングは、お客様が欲しい情報を最適なタイミングで届けて、お客様と良好な関係を構築することが大切です。そのため、一人ひとりのユーザーに最適化したコンテンツを送る上でセグメント配信は有効な手段です。
しかし、「どのような情報でセグメントするといいのだろう」と悩んだことはありませんか。そんな時はAIツールを活用して、セグメントのアイデアをもらうことができます。
一般的にどのような情報でセグメントするのかといったざっくりした提案はもちろん、メール配信の目的やゴールを入力することで、より実用的なアイデアをもらうことができます。
件名・本文の作成
メールの件名や本文は非常に重要です。お客様は件名の内容を見て、メールを読むどうかを判断するので、魅力的な件名でなければいけません。また本文は、お客様に遷移させたいページへのクリックを促すために興味をもってもらえる文章を作ることが大切です。
しかし、「件名や本文に何を書けばいいかわからない」「文章作成が苦手」という人も多いでしょう。それゆえに、メール作成に多くの時間を費やしてしまっているのではないでしょうか。
そんな時は、AIツールにメール配信の目的やターゲット情報を与えることで、キャッチ―な件名や本文を作成してくれます。指示を出す際に、文字数や文体についての条件をつけておくと、より精度の高い回答が得られます。
シナリオ作成
メール配信手法のひとつである「ステップメール」は、あらかじめ設定したシナリオ通りにメールを自動で配信できる便利な手法です。セミナー参加やサービス購入など顧客の特定の行動を起点に、設定したスケジュール・シナリオ通りにメールが配信されるので、業務の効率化にも寄与します。
しかし、どのタイミングでどのようなメールを送るかといったシナリオ作成に苦戦される方も少なくないでしょう。ですが、このステップメールのシナリオもAIツールを活用することで簡単に作成ができます。ステップメールの目的やターゲットの情報、商品購入やサンプル申し込みといった起点となるタイミングを与えれば、起点となる日から何日後にどんなメールを送るといいのかを提案してくれます。
コンテンツの提案
前述の通り、メールマーケティングではお客様の欲しい情報を届けることが大切です。そのためには、お客様にとって有益な情報や欲しい情報は何かを検討してコンテンツを決めなければいけません。
「どのようなコンテンツを送ろう」「どんなコンテンツなら興味を持ってもらえるのだろう」というよくある配信担当者の悩みもAIツールで解決できます。
・ターゲット
・配信目的もしくはゴール(どうなってほしいか)
・ターゲットの状態(商材への興味度合いや、購買歴の有無など)
の3つを与えることで、どのようなコンテンツを提供するといいのかを提案してくれます。メールのコンテンツとしてだけではなく、今後作成するコンテンツ案としても活用できます。
AI活用における3つの注意点
AIツールはさまざまな場面で活用できる便利なツールですが、使用する上で注意すべき点がありますのでご紹介します。
機密情報を入力しない
AIツ―ルに送信した情報は、学習データとして利用されることがあります。また、開発者にその情報が見られることもあるため、社外に漏れたら困る機密情報や個人情報などは入力しないよう注意が必要です。場合によっては情報漏洩として大きな問題に発展する可能性もあります。
ツールによっては、入力した情報を機械学習に活用しないよう設定できるものもありますので、必要に応じて設定しておきましょう。設定した上でも外部に漏れたら困る情報については取り扱いに注意して利用することを推奨します。
校正・校閲は必須
さまざまな業務を請け負ってくれるAIツールですが、その精度にはまだまだ課題もあります。
文章を作成する場合は、「てにをは」や文章のつながりがおかしいこともあります。コピーしてそのまま活用するのではなく、必ず人の目で校閲・校正を行うようにしましょう。
あくまでも「たたき」として活用する
AIツールは、セグメントやコンテンツの提案など、メール配信業務の基盤となる部分も考えてくれますが、これを鵜呑みにしてはいけません。
配信目的や自社サービス、ターゲット情報を提供したとしても、自社サービスの特徴や強み、ターゲットがどのようなニーズを持っているかをAIツールが理解することはできません。
AIツールによって得られた回答はあくまでもたたきとして活用しましょう。
AIの特性を理解して上手に活用しよう
AIツールを活用することで、自分では思いつかないアイディアが得られるだけでなく、業務の効率化にもつながります。
メールマーケティングは、送ればすぐに成果が得られるというものではなく、中長期的に継続して運用していくことで成果を得ることができます。継続するためにはこうしたツールを活用して、できるだけ業務を効率化していくことも大切です。
とはいえ、AIツールも万能ではありません。本記事で紹介した注意点を考慮して、うまく業務で活用するようにしましょう。
次回は、今回ご紹介した各シーンで実際に活用できるプロンプトと、精度の高い回答を得るためのコツをご紹介します。