韓国のロボットメーカーROBOTIS(ロボティズ)から、新型のロボットキット「Engineer Kit1」(以下、EK1)が発売された。ロボットは、メカ、エレキ、ソフトを統合したシステムであり、近年は、学校での教材としても非常に注目が高まっている。この製品ではどんなことができるのか、これから詳しくレビューしてみたい。

  • Engineer Kit1

    ROBOTISから発売された「Engineer Kit1」。日本での店頭価格は約13万円だ

Engineer Kit1の特徴は?

"ROBOTIS"と聞いても、日本では知らない人の方が多いかもしれないが、同社はロボット業界において、世界的な有名メーカーである。ロボット用のサーボモーター「Dynamixel 」シリーズのほか、研究用の等身大ヒューマノイド「Thormang」シリーズなど、様々な製品を提供している。日本法人も設立されているので、サポートも安心だろう。

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    同社からは、より小型の「Mini」も発売中。6万円台と安くて買いやすい

EK1は、そんな同社が開発した最新のロボットキットである。まず注目したいのは、市販のロボットキットとしては世界で初めて、2軸サーボを採用したことだ。

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    これが2軸サーボ「2XL430-W250」。直交した2つの回転軸を持っている

この大きなメリットは、組み立てがより簡単になることだ。通常の1軸サーボだと、たとえば足首の関節を作る場合、前後に動かすピッチ軸と左右に動かすロール軸が必要になるため、2つのサーボモーターを繋げて2軸にしている。しかし2軸サーボであれば、この繋げる部分の手順が不要になり、作業時間を短縮できる。

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    通常、直交軸のためには2個のサーボモーターを使うことになる

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    2軸サーボだと、これ1つだけで直交軸が構築できて非常に簡単だ

EK1には、サーボモーターが7個しか入っていないのだが、このうちの6個が2軸サーボのため、これだけで最大13軸のロボットを作ることができる。本格的なロボットとしては、比較的、部品点数も少ない印象だ。

この2軸サーボ「2XL430-W250」は、名前から分かるように、従来の「XL430-W250」2個を一体化したもの。そのため、トルクやスピードは従来通りなものの、一体化によって、体積は3分の2に、重量は86%に、小型軽量化も実現している。

作りたいのはどのロボット?

もう1つ、大きな特徴として紹介したいのは、拡張性の高さだ。EK1は、追加パーツを買わなくても、標準のセット内容のまま、いろんなロボットを作ることができるよう考えられている。マニュアルに書かれているのは、以下の3タイプだ。

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    3タイプは上から、「MAX-E1」、「SPI」、「Dr.R」となる

AIロボット「Dr.R」

3タイプの中で、最もユニークなのはこの「Dr.R」だろう。上半身のみのため、移動はできないものの、頭部にスマートフォン(別売)を乗せて、画像認識や音声認識で動かすことができる。Googleの機械学習ライブラリ「Tensor Flow」も使えるので、人工知能(AI)技術を学習したい場合には特に良さそうだ。

ヒューマノイドロボット「MAX-E1」

ロボットといえば、「やはり2足歩行のヒューマノイドじゃないと」という人も多いだろう。この「MAX-E1」は、全身で13軸と、ヒューマノイドとしてはやや少なめの自由度ながら、脚部に平行リンクを採用したことで、安定した歩行を実現している。バトルやサッカーなど、様々な目的で使うことができる。

多脚ロボット「SPI」

「SPI」は、6本脚を持つ、まるでクモのようなロボットだ。2足歩行だとどうしても転びやすく、故障のリスクはそれだけ増えるが、多脚型であれば、少しくらい障害物があっても平気で乗り越えていけるだろう。背中に何かモノを乗せて運んだり、走破性能を重視する場合には良い形態と言えそうだ。

もちろん、ユーザーの工夫次第で、これ以外のロボットを作ることも可能だ。モーション作成ソフト「R+ Task 3.0」のサンプルファイルを見ると、ジンバルや4足ロボットの例が出ていたので、上記の3タイプを一通り試した後は、こういったオリジナルのロボットに挑戦してみても良いだろう。

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    ソフトの画面にあったジンバルの例。こういうものも作れる?

ヒューマノイドでバトルに挑戦

では、実際にロボットを作るところから始めてみたい。個人的には、Dr.Rがすごく気になるところなのだが、今回、2足歩行ロボットのバトル競技会「ROBO-ONE Light」に出場するという目標があったため、スケジュール的にも、まずはMAX-E1から開始することとなった(ちなみに作り始めたのは大会開催の3週間前……)。

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    これは完成したMAX-E1。オールブラックのボディがかっこいい

ROBO-ONE Lightは、公認の市販ロボットまたは重量1kg以下の自作ロボットが出場できるクラスである。MAX-E1は2020年2月8日に開催された第20回大会より公認ロボットになったため、マニュアル通りに組み立てれば、そのまま出場することができる。

ロボットに限らないが、学習なり趣味なりで続けていくためには、モチベーションの維持が非常に重要である。モチベーションのポイントは人によって様々だろうが、競技会への参加は非常に有効だと筆者は感じている。

勝ち/負けという明確な形で結果が返ってくるので、負けたら悔しいし、勝ったら嬉しい。筆者などは昔から負けず嫌いなので、負けたら「次は勝とう」と、操縦を練習したり、新しいモーションを作ったり、本気で努力する。それに、会場で出会う他の出場者は、同じロボット好き。大きな刺激を受けるのは間違いない。

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    今回の決勝戦は2機とも自作機だったが、市販機が優勝することも結構ある

ROBO-ONE Lightは、市販ロボットでそのまま参加できるので、ハードルは低い。「バトルはどうも……」という人もいるだろうが、ほかにも、徒競走やダンスなどがある「アスリートカップ」(主催:ロボットゆうえんち)など、様々な大会が開催されているので、好みに合ったものを探すと良いだろう。

ROBO-ONE
ロボットゆうえんち

まずはお約束の「開封の儀」から

作り方の本格的な紹介は次回からにしたいが、まずはセット内容だけ見ておきたい。パーツは、重箱のように、2段の箱の中に入っている。前述のように、EK1は2軸サーボを採用しているため、パーツ数は比較的少なめ。しかもこの中には、SPI用の脚なども入っているので、MAX-E1で使うパーツはさらに少ない。

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    主要パーツその1

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    主要パーツその2

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    ただ、ネジなどはそれなりの数がある。心が折れるのでこれは見なかったことにしよう

それぞれの箱には、パーツの名前が書かれた一覧のパネルが付いているので、マニュアルと見比べれば、必要なパーツを探しやすい。こうしたちょっとした工夫は嬉しいところだ。

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    パネルには各パーツの名前が書かれているので、位置を見つけやすい

マニュアルは、紙に印刷されたものが付属している。残念ながら日本語版はなく、英語版を見るしかないので、小中学生の場合は大人が手伝って欲しい。ただ、ほとんどは図で説明されているので、作業内容自体は理解しやすいだろう。

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    付属するマニュアル。CGの図で手順が示されるので分かりやすい

(次回に続く)