筆者は、昨年夏にICT支援員の資格を取得しました。ただ、企業に勤めている都合上、リアルに学校を支援することはできません。そこで、夜な夜な教育の未来を考えていこうと企画しました。最初は、「デジタルスクール」というテーマで、小さな机にパソコンを置くとほかに教材やノートが置けないなぁ……そこで、「デスクトランスフォーメイション(DX・・)だ」と書こうと思い立ちました。

前回に続き、「まなびのOS」周りについて夜な夜な考えていきたいと思います。「個人最適なまなび」や「協働のまなび」を成立させるには、「考える生徒」をモニターすることが必要です。そのためには、取り組みの姿勢や考え方など、学習の過程と結果をデジタルの目で観察しなければなりません。センシングやAI分析の領域となります。まずは、EQについて。

Emotional Intelligence

IQとは、いわずと知れた知能指数(Intelligence Quotient)です。高い知能や学習能力、先天的才能を持つ人を「ギフテッド」と呼ぶなどしている指標です。これとは別にEQというものがあります。EQは、アメリカの社会心理学者のピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士によって提唱されました。

EQは感情知能指数(Emotional Intelligence Quotient)という指標で、「心の知能指数」とも言います。心の知能とは、「自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す」とあります(Wikipedia参照)。

- 自分の感情を知覚・コントロールする力 - 他人の感情を把握する力

学術的にはEI(Emotional Intelligence)、「情動知能」と訳され、自分や他者の情動・感情を理解し、そこから得られた情報を、自分の思考や行動に活用する能力といわれています。この他人の感情に気づける能力の有無が、コミュニケーションの食い違いや誤解を生んでしまい、我慢や洞察力、解決力を養うために必要なものとされています。

IQよりもEQのほうが重要

EI(Emotional Intelligence)は、知識として身につくようなものではなく、他人との関わりの中で、経験的に磨かれていくスキルです。指標となるEQが低いと、KY(空気が読めない)となり、人間関係がぎくしゃくするでしょう。加えて、対人関係能力(ヒューマンスキル)が低いということでもあるので、他者と良好な関係が作りにくい可能性があります。

EQは、知識やスキル(IQ)を最大限に発揮するために必要な能力であり、リーダーシップを発揮するためにも欠かせないスキルといわれています。「個別最適なまなび」はIQ、「協働のまなび」はEQなのかもしれません。

余談ですが、さらに重要なSQ:Social Quotient(社会的指数)や、AQ:Adversity Quotient(逆境指数)、CQ:Curiosity Quotient(好奇心指数)があります。

通知表を出さない学校

筆者が興味を持った記事に、「通知表をやめた公立小学校、2年後どうなった? 子ども同士を『比べない』と決めた教員たちの挑戦 - 47NEWS」があります。

この記事では、「子ども同士を比べる根拠がない、テストの目的は、理解していない問題を把握して次の学習につなげること」、とあります。確かにそうですが、小職からすれば、「通知表は先生の成績表であって、一定の学習の到達点に達していない生徒がいることを認めている!」――そんな先生の反省書だとも思います。

つまり、全員を一定の学習到達点へボトムアップするのが先生と「苦手科目の個別最適」の役割です。それ以上の深い学習は「得意科目の個別最適」になるのではないかと考えます。

また、テストもデジタル化すれば、即時採点(採点とはいわず、理解度評価か?)し、テスト内容を忘れてしまう前に、効果的に即効的にフィードバックがその場でできます。したがって、テストの時間は授業時間の7割くらいが適正になるのかもしれません。理解度が分析された結果を用いて、先生がすぐに説明してもよくなります。

- 通知表やテストという学校風物詩も、その在り方を変えていく必要があるかもしれません - 生徒のあゆみとなるように、学習記録ログ(スタディ・ログ)が蓄積される必要があります

一人一人1人1人に合わせる教育

「「教育データ利活用ロードマップ」令和4(2022)年1月7日 デジタル庁」のロードマップのポイント③には、「中期(~2025年頃)は『学習者が端末を日常的に使うようになり、教育データ利活用のためのログ収集が可能…(中略)…ICTを活用した個別最適な学び・協働的な学びの実現状況」とあります。

ここで言うログから踏み出して考えると、「個別最適のまなび」を最良の状態にするには、常に生徒をセンシングし、学習環境を改善することを回し続ける必要があります。それは、アクティブ・ラーニングとパーソナライズド・ラーニング(Personalized Learning)の融合した形です。

そのために、必要な「まなびの痕跡データ」を拾い続ける必要があります。そのサイクルは、理解度テストを区切りとして考えるのか、毎分毎秒としてリアルタイムに考えるのか、さまざまな方法が考えられます。

著者プロフィール


ネットワンシステムズ セールスエンジニリング本部市場戦略部4T 阿部豊彦