連載第3回もお読みいただき、ありがとうございます。サイバーエージェントのウェブアナリスト、小川卓です。現在、この連載と連動して、9月27日(金)に開催されたセミナー「トップアナリストが教えるGoogle アナリティクス運用の“極意"」の資料ダウンロード(簡単なアンケートへの入力が必須です)も行っていますので、ぜひご覧ください。
さて、連載第1回では、ECサイトにおいて売上をのばしていくためのゴールやKPIの設定方法について、連載第2回では、ECサイトにおける分析方法や見るべきポイントについて解説してきました。第3回、第4回では、メールマガジンの分析と改善について取り上げていきます。
メールマガジンというメディアの特性
メールマガジンはECサイトにおいて重要な集客施策の1つです。他の集客施策と比較して、次のようなメリットがあります。
- リピーターに確実にリーチすることができる
- 皆さんのサービスに興味を持っている人が大半
メールマガジンは周知や認知のために使うのではなく、購買に直接繋げる、あるいは良好な関係を維持するために使うメディアです。そのため、主な役割は「コンバージョン」そして「リテンション」になります。そして、第3回はこの効果を測るために見るべき指標とその考え方を紹介していきます。そして第4回は各指標の改善方法を、事例を交えて紹介します。
メールマガジンにおける指標
メールマガジンに関連する指標は以下の図を参考に考えることができます。
簡単に説明をすると、「サイトに訪問し、メールマガジンを登録、その内容を受信し、サイトを訪れ、購入をする」というプロセスになります。それぞれの数値や割合を改善していくことがメールマガジン経由の売上をあげるための方法になります。
このプロセスにおいて、どの指標をKPIに設定するかは、施策の数や現在のメールマガジンの配信状況に応じて変わってきます。こちらに関しては本連載の最後に紹介いたします。
まずは、それぞれの指標と基本的な考え方を確認してみましょう。
メルマガ登録数
メールマガジンの送信を許可してもらう部分にあたります。
この数値に影響を与える主な要素は
- サイトへの訪問者数
- メールマガジン登録へのリンクの分りやすさ
- メールマガジンそのものの魅力やメリット
- メールマガジンのサンプルが確認出来るか否か
- 入力フォームの項目内容とその数
- メールマガジン登録を促す場所
となります。
この中でも特に大切なのは、メールマガジンが「どういう内容で」「どういうメリット」があるかをちゃんと訴求できるか否かです。
どういう内容が送られているかわからないのにメールアドレスを提供してくれる人はほとんどいません。また、そういった読者を増やしても最終的なコンバージョンにはつながらないでしょう。
メールマガジンの内容が事前に確認できて安心感をもって登録できる、(運営者ではなく読者にとって)どういうメリットがあるのか、解約の方法が明確にされているといった部分は最低限揃えておかないといけない内容になります。
計測にはメール配信システム、あるいは(多少不正確ですが)Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールでメールマガジン登録完了ページの回数を見ます。
メルマガ配信数
配信するメール数をあらわす指標です。正確には「実際に届いた件数」のほうが良いでしょう。
一部のメール配信サービスやツールでは、エラーで届かなかった件数なども表示をしてくれます。これらを除いた数値にすることで、意味があるメールアドレスの数を測ることができます。
この指標は、「現在の有効配信数+新規配信数-解約数」という形で計算することができます。数も大切なのですが、その次の「開封」につながらないと意味が無いため、「なんでもよいのでメール登録者数を増やす」あるいは「解約をさせにくくする」ことには意味がありません。
筆者としては「今までに一度でも開封をしてくれたメールアドレスの数」という指標のほうが意味があると思っておりますが、計測のしにくさなどもあり、当面はメルマガ配信数が指標として利用されることでしょう。計測にはメールマガジンの配信システムを利用する必要があります。
開封数
メールマガジンを実際に開いた件数になり、配信数で割ることで「開封率」を算出することができます。
開封率はその計測の仕組み上、「HTMLメールで特定の設定をした場合のみ」計測することができます(具体的には、小さな透明画像を追加し、その画像が読み込まれたユニークな回数をカウントすることで実現します)。テキストメールでは開封数を確認することはできません。
開封率は「件名」に大きく依存するため、開かせたいと思うクリエイティブをいかに作成できるかが腕の見せどころです。
しかし、先程の「配信数」と同様に、開かせることだけが目的ではありません。開いた後にクリックをしてくれないと意味が無いため、本文とは関係ない内容を件名にいれないようにしましょう。
またGmailやHotmail、iPhoneやAndroidのメーラーで表示される文字数なども参考に、件名はなるべくシンプルかつ短いほうが、開封率は一般的には高まると言われています。計測にはやはりメールマガジンの配信システムを利用する必要があります。
流入数
メールマガジンからみた場合は「クリック数」、サイトから見た場合は「流入数」になります。
メールマガジン内では購買を完了させることができないので、サイトにリンクという形で誘導をする必要があります。クリックをしてもらうためには、メールマガジンのレイアウトやリンクの位置と分りやすさというUI的な観点、そしていかにその先を見てみたいと思わせるクリエイティブの観点、両方が必要になってきます。
また、「開封」と「流入」は一緒に考える必要があり、件名で訴えた内容が、メールマガジン内の分かりやすい位置にあることと、そのクリック数を計測する必要があります。
計測はGoogle アナリティクスなどのアクセス解析ツールを利用して行います。その際には広告パラメータなどを付与し、どのメールマガジン(及びリンク)からの流入であるかが分かるようにしておくと、よいでしょう。
購入数
サイトにメールマガジンから訪れた後に、購入に繋がった回数をあらわす指標です。
メールマガジンの配信数や開封率が少なくても、最終的にはこの数値を増やしていくことがゴールになり、最も重要な指標の1つです。
購入に繋がるか否かの大半は指標で言うと、直帰率(そのページだけ見て離脱した割合)に依存します。
直帰率が高まる理由としては、メールマガジンをクリックして訪れたページが
- クリックした人の想定と違った(内容があっていない)
- どこをクリックすれば良いかがわからない(わかりにくさ)
- 商品が思ったほど魅力的ではなかった(期待値とのギャップ)
などがあげられます。
メールマガジンの内容で「煽りすぎてしまう」と、クリックはされても結局、購入に繋がらないということはよくあります。配信数が多い、あるいは特に重要なリンクに関しては、メールマガジン専用のランディングページを用意するのもひとつの方法です。
メールマガジンにおける「指標」と「KPI」
最後に「指標」と「KPI」について記します。
指標とは、今回紹介してきた「配信数」「流入数」といったメールマガジンのプロセスにおいてあらわれた何かしらの数値を意味します。
そしてKPI(Key Performance Indicator)は、その中でも注力し、目標設計を行った上で改善するべき特別な指標になります。では、メールマガジンにおいて数ある指標の中から、どのようにKPIを選べばいいのでしょうか?
KPIとして設定する指標には3つの条件をなるべく満たす必要があります。
1つ目は「計測ができて、数値を定期的に把握できる」ということです。数値がわからない場合はそもそもKPIとして設定はできません。
2つ目は、「実現できる施策の種類が多い」ということです。KPIとして設定した場合は、その数値に向けて改善を進めていく必要があります。しかし「そもそもアイデアが思いつかない」あるいは「思いついたが、人・物・金・技術などの観点から実現できない」のであれば意味がありません。改善施策を実現できる箇所を選びましょう。
最後にメールマガジンならではの条件ですが、「複数のテスト」を行える箇所のほうが、気付きも多く、結果により早く繋がります。入力フォームであればA/Bテスト、メールの開封であれば3種類の件名を作って均等配信する、購入数であればランディングページを2種類用意するといった形になります。3つの条件を元に、メールマガジンのコンバージョンプロセスにおいてどこを再優先で改善するかを決めましょう。
第4回は各指標を改善するためのポイントを、事例を交えて紹介いたします。
■小川 卓氏(サイバーエージェント)
前職では、株式会社リクルートにて住宅情報サイト「SUUMO」のウェブアナリストを担当。アトリビューション・ソーシャルメディアの分析・モニタリング・スポット分析・教育などが主な業務。また、アクセス解析に特化したブログ「リアルアクセス解析」を2008年より運営中。
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