連載第2回もお読みいただき、ありがとうございます。9月27日(金)に開催されるセミナー「トップアナリストが教えるGoogle アナリティクス運用の“極意”」に登壇する、サイバーエージェントのウェブアナリスト、小川卓です。
連載第1回では、ECサイトにおいて売上をのばしていくために、最初に決めておくべきゴールやKPIの設定方法をご紹介しました。連載第2回でも、ファッションECサイト「メンズファッションプラス」を事例に、ECサイト改善において必要となる、目標とKPIを設定した後の「定常的な分析」と最初に行うべき「3つのアクション」、そして見ておきたい「5つのレポート」についてお話しします。
事例サイト「メンズファッションプラス」とは
「メンズファッションプラス」は男性服用の通販サイトです。様々な商品を販売しておりますが、特徴的なのが、「マネキン買い」という全身コーディネートで洋服が一式購入できることです。
(筆者もそうなのですが))コーディネートが苦手な人にとっては、一般的な目線を持つ女性が選んだオススメの組み合わせで買えることは安心かつとても楽です。使いやすい、そして、繰り返し利用したくなるサイト作りをしていきたいということで、私の方でお手伝いをさせていただいております。
目標とKPIを整理しましょう
「メンズファッションプラス」を分析するにあたり、最初に2時間ほどヒアリングを行いました。その中で、現在の目標と課題、そして現在考えている施策について洗い出しました。主なポイントとして出てきたのは
- リピータの購入者を増やしていきたい
- 平均購入金額を上げるため、1回の購入金額を増やしたい
- スマホの訪問者割合が上がってきているが、売上比率は伸びていない。スマホ専用のUIなど一通り対策は行っている
- 今後リスティングからアドネットワーク、アフィリエイトまで幅広く広告を行っていく
- 売上を達成するために、注力するべき施策を行っていきたい
上記の通りとなります。
そこで、この内容を踏まえて、目標は「売上」、主要KPIは「訪問回数(訪問者数×月の訪問回数)」「購入率」「平均単価」としました。また、これらの項目をしっかり把握するためにも、関連指標をいくつか設定し、以下の項目をモニタリングすることになりました。
そして、上記の内容が決まった後に、主要KPIを改善するために実施するべき施策を追加しました。
後は、上記のKPIを月単位で管理し、目標を達成しているかを随時確認していくためにアクセス解析ツールからデータを取得することとしました。
日単位の運用は最初の2カ月だけ
また、上記の指標と施策の管理表以外にも、日単位で指標を管理し記録するシートを用意し運用していただきましたが、こちらは2ヶ月でストップしました。日単位での売上のブレが主に訪問者数に依存し、他の指標が大きく変わらなかったこと、運用上の手間もかかること、そしてGoogle アナリティクスでも大半の数値を見ることができるというのがその理由でした。
最適な運用方法は、実施してみないとわからない部分も多々あります。そのため、まずはチャレンジをして、必要ないと判断したら、すぐに止めてしまっても問題ありません。会社によっては、毎日実施することで気づきを発見し、サイトに反映することができるかもしれません。
その代わりに広告の運用を細かく行う
前半で挙げた通り「広告に注力」するということもあり、管理用のシートを私の方で作成しました。以下がそのテンプレートです。
ここまで紹介してきた内容は、定期的に見るべき数値を決めて、それをアクセス解析ツールなどで取得し、課題を発見し、施策に活かすという方法です。このような分析は「定常的」に決まった指標を見ながら、必要に応じて更に深く分析を行っていく手法になります。
上記とは逆に、サイトの課題を発見するために、網羅的にサイトの分析を行い、サイトの課題発見を行いたいケースもあります。こちらについても確認をしてみましょう。
最初に行うべき3つのアクションとECサイトなら見ておきたい5つのレポート
アクセス解析ツールなどでレポートをチェックする前に行っておきたい3つのアクションがあります。それは以下の通りです。
1) 目的・目標を改めて確認する
サイトにはどのようなゴールがあり利用者にどのように利用して欲しいのか、そしてどのような目標設計がされているのかを必ず確認しておいてください。利用者の方がサイトのことをどこで知り、どのように流入してきて、サイト内の目標を達成するために行う主要な行動を洗い出しておきましょう。後でレポートを見る際に、この目的や目標を常に意識しておくことで、改善ポイントがより見つけやすくなります。
2) ユーザーとしてサイトを利用する
目的・目標に則って、実際にサイトを利用してみましょう。そしてサイトを利用する中で気になった点をメモしておきましょう。またメモとあわせて、その仮説を証明するために「どの数値を見れば良いか?」もあわせて記入しておくと、分析のポイントがより明確になります。
【例】
仮説)このリンクを押して次のページに行かないといけないのだが、リンクが非常にわかりにくい。押されている割合は半分以下なのではないか?
確認する点)ページA から ページBの遷移率
3) 同業他社のサイトも確認する
「メンズファッションプラス」にもいくつかの同業他社があります。それらのサイトをチェックし、主要導線(ゴールを達成するまえにユーザーが通る主なページ)の違いや良い面・悪い面などを探しましょう。商品一覧の見せ方、購入フォームや会員登録プロセスなどがそれにあたります。比較表などを作っても良いでしょう。
上記3つのアクションが終了したら、次にアクセス解析ツールでデータを確認します。ここではGoogle アナリティクスを例に紹介いたします。
レポート1:集客分析レポート
流入元ごとの流入量、流入してくる人の特徴とゴールへの貢献を可視化する
レポート2:キーワード分析レポート
キーワードごとの流入量、流入してくる人の特徴とゴールへの貢献を可視化する
レポート3:ページ分析レポート
入口ページとしての評価、閲覧者の特徴、コンバージョンへの貢献を確認する
レポート4:日別集計レポート
主要な指標を表形式で簡単に確認することが可能。トレンド把握のために利用
これら4つのレポートはすべてGoogle アナリティクスの「カスタムレポート」機能を利用して作成されています。上記のリンクをクリックすると、みなさんのGoogle アナリティクスにも反映することが可能です。
分析は柔軟に、優先順位に応じて
ECサイトでの分析は日々内容が変わっていきます。最初に紹介した定常分析に関しては、定期的に数値を出してモニタリングをしていくものですが、それ以外はその時に応じた内容で分析を行っていきましょう。メンズファッションプラスでも、キーワードの分析、同業他社とのフォーム比較そしてメールマガジンの分析(こちらは第3回で紹介いたします)などを行ってきました。
サイト運営者にとってすぐに行える施策を考えつつ、なおかつ改善の可能性が見えるポイントを探りながら、分析の精度をあげていくことが大切です。ぜひ今回の内容を参考に、ECサイトの分析と運用にチャレンジしてみてください!
今回の連載内容は、サイト運営の役に立ちそうでしょうか? ぜひ以下のセミナーの詳細もご覧ください。次回はメルマガの効果を向上するためにアクセス解析ツールで見るべきデータやその見方を紹介いたします。
■小川 卓氏(サイバーエージェント)
前職では、株式会社リクルートにて住宅情報サイト「SUUMO」のウェブアナリストを担当。アトリビューション・ソーシャルメディアの分析・モニタリング・スポット分析・教育などが主な業務。また、アクセス解析に特化したブログ「リアルアクセス解析」を2008年より運営中。
トップアナリストがGoogle アナリティクス運用の"極意"を教えます
マイナビでは、2013年9月27日(金)にWebマーケ担当者向け無料セミナーを開催します。テーマは「トップアナリストが教えるGoogle アナリティクス運用の"極意"」。当記事を執筆したトップアナリスト、小川卓氏が登壇し、データ解析の勘所をわかりやすく説明する内容となる予定です。またセミナー当日は、希望の方のWebサイトの問題点、改善方法をライブで解析する「ライブWebコンサル」も行う予定です。ぜひご参加ください。
【日時】2013年9月27日(金)15:00~
【場所】東京竹橋、株式会社マイナビ 本社
【料金】無料
詳細はコチラをご覧ください。※内容が変更になる場合があります。