この連載では、「Adobe InDesign CS5.5」からタブレット端末向けの電子マガジンを作成・配信できる「Adobe Digital Publishing Suite」(以下、ADPS)を中心に、電子出版制作のための新しいワークフローについて考えていく。今回は、2011年の電子出版事情を振り返りつつ、来年の動きについて考えたい。
徐々に販売を延ばすタブレット端末
急速に浸透するスマートフォン
今回はADPSを中心とした電子マガジン作成の実践手法をお伝えする予定であったが、諸般の事情により前回の記事掲載から時間が空いてしまった。その間に電子出版を取り巻く環境にも少しずつ変化が見られてきたので、今回は2011年の後半の電子出版事情をおさらいするとともに、2012年の展望について考えてみたい。
まずは端末。矢野経済研究所が2011年7月に発表した調査結果によると、電子書籍元年と言われた2010年度・国内のタブレット端末出荷台数は96万台とし、2011年度は300万台弱と予測している。また、調査会社BCNのデータによると、2011年11月期のタブレット端末販売数ベスト10にiPad2の6モデルがランクインしており、6モデル合計の販売数量シェアは過半数を超えている(およそ54%ほど)。残りは、国内外メーカー製のAndroidOS搭載のタブレットが乱立しており、iPadのシェアはゆるやかな減少傾向にある。
昨年末鳴り物入りで登場したシャープの「ガラパゴス」は2011年9月に自社販売を終了。当初は100万台の出荷を目論んでいたシャープだが、残念ながらユーザーの支持を獲得できず、端末販売チャネルの変更やCCC社とのコンテンツ販売事業の連携も解消するなど方向転換せざるを得なくなった。ガラパゴスと同じように電子電子書籍リーダーとしてソニーの「Reader」がじわじわと売れているようだが、iPadやAndoridタブレットに匹敵するようなユーザーを獲得しているとは言い難い。一方、海外では、米AmazonがiPadよりも低価格なカラー液晶搭載の多機能タブレットPC「Kindle Fire」を2011年11月にリリースして注目を集めており、日本での発売を期待する声も高まっている。
電子書籍を閲覧可能な端末といえば、iPhoneをはじめとするスマートフォンも、携帯電話におけるシェアを拡大している。MM総研が2011年10月に発表した、2011年度上期のスマートフォンの出荷数は1,004万台とあり、携帯電話端末の総出荷数(2,028万台)のおよそ半数を占めるにまで至っている。さらに2011年10月にはiPhoneの最新機種iPhone4Sも登場し、従来のソフトバンクだけでなく、au(KDDI)でも取り扱われるようになった。Androidスマートフォンの中には、画面サイズや解像度がより高いものが登場しており、ユーザーの電子出版物の閲覧環境は大きく広がっていると言えるだろう。
次回は、今年最も伸びた「意外な」電子書籍関連ビジネスと今後の展望について考えていきたい。