太陽。それは世界中で「神」とあがめられた天体です。一方で、サイエンスでは「平凡な恒星」とかいう言い方もいたします。実際、太陽は、スゴイのかショボイのかどっちなのでしょーか? ということで、今回は、太陽の成績をつけて発表なぞしてみようと思います。

ハンドル状に噴出したプロミネンス (C) ESA/NASA/SOHO

人類にとって、太陽は「不可欠」「唯一」「絶対」な存在であることは、いうまでもないですなー。いま、仮に太陽が無くなってしまったら、地球はあっという間に冷え込んで凍り付き、火山の周辺以外では生物が生息できなくなってしまいます。

もちろん真っ暗ですから、星がよく見え…まあ、活動はできないですな。むしろ洞窟に閉じこもり、熱を逃げないように、また死滅するだろう植物の代わりに酸素や二酸化炭素の温度を必死で管理しながら、こわごわ生きる…そんなSFな世界になってしまいます。実際、太陽系の外の世界では、太陽にあたる星から放り出された、ローグ・プラネット(rogue planet:自由浮遊惑星)というのが2013年(らしきものは2004年)に発見されています。ならず者(rogue)なのか、自由なのか英語と日本語の文化の違いはおもしろいですな。

ただ、まあ、そういう人類にとって、恵みの太陽という考え方は、サイエンスするときには、ちょっとジャマになるかもです。自分にとって都合がいい~「私が愛した人だからスゴイ」みたいになるわけですからなー。

そこで、太陽が実際にスゴイのかどうか、色々なスペックで成績を見てみましょう。つまり、似たような天体、恒星=自分で熱を生み出せる星、のなかでの位置づけを考えるわけです。ただ問題なのは、太陽ほど詳しくスペックが分かっている恒星は、そんなにたくさんないということでございます。太陽と夜空に見える星を比較するわけですからね。ということで、全国模試じゃなくて「クラスの中での成績」くらいになっちゃうのは、ご容赦くだされ。

大きさ=直径

太陽の直径は139万2000kmで、地球の109倍の大きさになります。まあ、地球に比べれば、とてつもなく大きいわけですが、これは恒星と惑星の違いがあります。

一方、恒星で最も小さいのは、赤色矮星という種類の星で、理論上最小のものは、地球の9倍程度です。これは直径だけでいうと、地球の11倍ある惑星の木星よりも小さくなりますが、重さは木星の80倍もあるのでございます。肉眼で見える赤色矮星はありません。一方、恒星で最も大きいものは、赤色超巨星という種類の星で、大きさは太陽の1000倍にも達します。有名な赤色超巨星にはオリオン座のベテルギウスと、さそり座のアンタレスがあります。いずれも1等星で都会でも見える星です。他にも目で見える星の100個に1個以上は赤色超巨星なのでございます。

さてさて、こういうと「大きい星が多くて、小さい星は少ないのかな」と思っちゃうわけですが、実は、逆です。小さい星ほど多いのですね。小さい星ほど極端に暗いので、見えないのです。

実際の割合は、なかなか難しいのですが、太陽から近い100個の星をグリーゼという天文学者らが作った「近傍恒星カタログ3版(CNS3)」から取ってみると、

  • 赤色もふくむ超巨星:0
  • 巨星・輝巨星:0
  • 準巨星:2
  • 太陽と同じような矮星:22
  • 赤色矮星ほか暗い星:76

となるのですな。さらに、これを1000個までのばしても、ようやく巨星が7個になり、超巨星は0なのですな。超巨星で一番近いのは、アンタレスやベテルギウスの500~800光年(不確かさがかなりある)となっていまして、その範囲なら、おおざっぱには数百万~千万個の恒星がある感じになります。

ちなみに、太陽の大きさは、100個中だとまあ6位くらい。1000個中で100位くらいと、かなりよいポジションになってくるんでございます。

ただ、かなり暗い星の見落としがあり、最近でも、近さベスト10くらいに入る恒星が「いままで暗くてわかりませんでしたー」と発見されているくらいです。つまり、めだたないクラスメートがいたので、クラスを2つにわけないとーみたいな感じになってくるので、実際のクラスの順位はもうちょい上になるかと思います。

重さ・明るさ

太陽の重さは、地球の33万倍あります。それに対して、最大の星の重さは、太陽の100倍、最小の星で太陽の15分の1程度です。大きさに比べてはばが狭いですな。

また、明るさについては、最も暗い赤色矮星は、太陽の6000分の1の明るさになり、明るい星のほうは、高光度青色変光星(LBV)といった星が太陽の1000万倍以上あかるくなります。赤色超巨星はでかく、明るいのですが、大きさはそこまでなくとも、より明るく輝く巨大な星があるのですな。ただ、こうした星は周りに煙をまきちらして雲隠れしてしまうのです。有名な星がなく、まあ、宇宙好きな人は「りゅうこつ座η星(エータ・カリーナ)」という名前を聞いたことがあるかもしれません。見事な写真が宇宙望遠鏡によって撮影されています

実は、恒星の重さと明るさ、大きさの間には割と密接な関係があるのですな。重い星ほど明るく、かつ大きさも大きいのでございます。ただし、一部例外の巨星、超巨星をのぞいては。です。前に巨星や超巨星が宇宙にいかに少ないかを話しましたが、太陽の順位ポジションも同じような感じになるのでございます。

安定度

さて、わかりやすい、大きさ、体重、明るさというスペックで太陽が結構いけているということをご紹介しました。もう1つ大切なのが安定度でございます。実は太陽は非常に明るさの変化が少ない星で、変化していることが最近になるまでわからなかったのです。

でも、実は宇宙には明るさが変化している星がかなり多いんですな。赤色矮星のかなりの星は、表面で大規模な爆発をよく起こすことが知られています。また、複数の星がまわりあって、互いを隠すような星もかなりありますし、なにより太陽系のように恒星が1つだけというのが、割合としては少ないと考えられています。

まあ、安定度を数字でいうのは研究者でもない東明ごときでは無理なので、やめときますが、まあ非常に安定している方だといってよいかと思うのでございますね。

ということで、今回は、太陽はスゴイのかどうなのか、と成績をつけてみました。結論としては…

圧倒的ナンバーワンとか、傑出したスターってわけじゃないけど、そこそこ優秀な優等生って感じでしょうか。みなさまは、どう思われましたか?

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。