2016年3月9日水曜日、4年ぶりに日本全国で日食が見られます。「欠けた太陽」が見られる現象ですな。前回の日食は2012年5月です。そして次回も3年後の2019年1月なのです。日食は場所によって見える時間や欠け具合がちがいますが、日本であればざっくり午前10時~12時前です。日食のチェックには1分もいりません。トイレ休憩中にチラリでもOK。ぜひこのめずらしい現象をごらんくださいませ。

では、観察のポイントをばご紹介いたしますねー。

日食全体についてざっくり(ともかく見るんだって人はここを飛ばしてください)

今回の日食は、東南アジアを中心に、インド~オーストラリア北部~日本~ハワイにかけての地域で見られます。特にインドネシアの一部では皆既日食になります。インドネシアから離れると欠け具合が小さく、日食である時間が短くなっていきます。

3月9日の日食地図。インドネシアの一部では皆既日食に (出典:NASA)

日本での太陽の欠けぐあいは、沖縄で3割くらい、本州で2割、北海道で1割くらい欠ける感じですね。時間は沖縄で3時間、本州で2時間、北海道で1時間といったところです。国立天文台が、日食のシミュレーションをWebで公開していて、好きな場所での日食についてのデータが得られます。ただ、ちょっと専門的でございます。

いつ見りゃいいの?

2016年3月9日水曜日ですが、場所によってちがいます。日食は少しずつ太陽の欠け具合が大きくなり、また欠け具合が小さくなります。日食が始まる時刻・ピーク・終わる時刻は、次のとおりです。この間ならいつ見てもいいのですが、まあ11時くらいといっておけば、あまりはずれないですね。おおむねお昼休みだと終わっているか、終わりかけというところです。

場所 始め ピーク 終わり
札幌 10時39分 11時18分 11時57分
仙台 10時22分 11時13分 12時5分
東京 10時12分 11時8分 12時5分
大阪 10時5分 10時58分 11時52分
広島 10時1分 10時51分 11時43分
福岡 9時56分 10時46分 11時37分
鹿児島 9時50分 10時44分 11時39分
那覇 9時29分 10時29分 11時36分

道具は? - 太陽を直接見てはいけない……まぶしくて見ようって気にならないですけど

いちばん良いのは「日食グラス」とか「日食めがね」といった商品を使って見ることです。日食で欠けていても太陽のパワーはほぼそのまま。直接見ると、間違いなく目を痛めます。サングラスなども太陽を直視するようには作っていませんのでダメでございます。日食グラスなどは、書店や家電量販店、文房具店、そして一部地域にしかないですが望遠鏡専門店などで販売しています。溶接用のマスクもいけるのですが、むしろ高価ですね。なお、昔は色つきの下敷きとかガラスにススをつけて……とかやったのですが、ちょっと安全が担保できないのでオススメできません。太陽も観察できる下敷きってのも売っているみたいなんですが、安全テストをしたのかな? 個別には商品発売元に問い合わせてみてくださいませ。

日食グラスなしでなんとかする方法。

ただ、日食グラスなんて入手できないとか、もったいないというのであれば(ごもっともです)、太陽が作る影を楽しむという手があります。「小さな穴」が開いたプラスチックのカードを用意します。昔なら使いさしの(穴が開いた)テレホンカードといえばよかったんですが、今だとなかなかですな。カードで数十センチ離して太陽の影をつくると「小さな穴」の部分は太陽光を通しますな。そして、影の中のその光を見ると、欠けるのがわかるのでございます。えっとこんな感じです。国立天文台は、いろいろな方法を紹介しています。麦わら帽子からもれる太陽光でもわかるというのですが、どうでしょうね。また、うっそうとした樹木の木洩れ日でもわかります。ふだんは、木洩れ日は、太陽の形、つまり丸いのですが、これが欠けて見えるっていうんですな。そのほか、小さな鏡で、太陽光を日影の壁に反射させて、観察するという手もあります。これは大勢で見られるのがいいところです。

写真を撮影する方法

カメラも太陽に向けるとセンサーがいかれる可能性があります。太陽撮影用の特殊なフィルターを使えば良いんですが、それがわかるくらいなら、やってますよねー。ちなみに明るさを10万分の1くらいに弱めるやつでございます。入手には専門店での通販を使うのが一般的ですが、この記事を見てからだとちょっと間に合いませんよね。たぶん。

でオススメは、上述の「小さな穴」で作る影のなかの光(木洩れ日の変化)を、タイムラプスで撮影することでございますな。iPhoneなどにもタイムラプスはありますので、窓際などにしこんでおいて、影をひたすら撮影させるのもおもしろいかもしれません。というか、やってみようと思っております。

ということで、日食についてご紹介してきました。めずらしい日食なので、チェックしてねということなんですが。あとはちょっとウンチクです。

日食そのものは、そんなに珍しくはないのです。年に2~4回くらいおきているんですね。たとえば、NASAの日食のサイトをみると2011~2020年の10年間に24回の日食がおこることがわかります。2021年~2030年では22回ですな。ただ、一度の日食で観察できる地域は、地球全体の3分の1かそれ以下です。日本で見られるということになると、ぐっと機会が減って、数年に1度ということになるのでございます。

しかも、周期がかんたんにはわからないのですな。はっきりしているのは、新月の時におきる(太陽の方に月があるのは、新月だから)ということぐらいです。新月は月に1度あるんですが、そのいつが日食になるか? ウームム難しいというのが、暦の科学をうながした面があります。もちろん、現在は太陽や月の動きを、極めて精密に予測できるようになっていて、日食についてもキチンと予報ができるようになっているのですな。

ちなみに、古代の人は、18年10~11日ごとに同じような日食が起こるということをつきとめてはいました。これをサロスといっていて、さらに3サロス(54年31日)ごとにほぼ同じ場所で同じように日食がおこることもわかっています。これは太陽と月のさまざまな動きの最小公倍数であって、これに基づく予報はしていたようです。しかしこの18年の周期というのは、かなり気長に記録をみないとわからないわけですから、ようやったよなーという感じですね。というかそれだけ古代の記録を、古代の人たちも重視していたんでしょうな。最近は、地震や火山活動にも超長期の周期を気にかける人はいます。数字遊びではなく、どこかに理屈があるのであればバカにできないってわけですな。日食は、それがおこったからといって、地震や火山のように被害があるわけじゃあありません。だから、古代の人の価値観では、太陽や月というのを見るのは重要な国家的、科学的な事業だったということなんでしょうなー。

ちなみに次の日食は……(○は日本で見られる ×は見られないものです)

× 2016年9月1日 アフリカ~インド洋、マダガスカルなどで金環日食、日本はアウト
× 2017年2月27日 南アメリカなどで金環日食、日本は夜中です
× 2017年8月22日 北アメリカで皆既日食、アメリカで夏休みで日食! 日本は夜中
× 2018年2月16日 南極で日食、一部しかかけません、日本アウト
× 2018年7月13日 南オーストラリアで日食、一部しかかけず、日本アウト
× 2018年8月11日 ヨーロッパから西アジアで日食、一部かける、日本アウト
2019年1月6日 部分日食、日本で午前中に観察できます。寒そうですな
× 2019年7月3日 南アメリカなどで日食、チリ・アルゼンチンで皆既日食、日本は夜
2019年12月26日 日本でも見られる日食。インド、インドネシアで金環日食
2020年6月21日 アジア全域で見られる、日本全国でも見られる

ということで、今回はぜひお見逃しなくー!

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。