9月といえば「中秋の名月」。マクドナルドは「月見バーガー」を販売し、テレビの天気コーナーでは、ひとくさり月の紹介があります。何かと話題になる月、常識レベルからマニアックなものまで、いますぐ使える月の知識をまとめておきましょー。
1. 月の重さは地球の1%
月は、地球をめぐる衛星ですから、地球より小さい。ってことは、まあわかりますよね。では、大きさは? というと、たいていは「地球の4分の1」って答えがかえってきます。
この4分の1というのは直径のことですから、表面積は4×4となって16分の1、体積は64分の1となります。これだと地球の2%なのですが、さらに月の比重は1立方センチあたり3.3グラムで、地球の5.5グラムの6割しかないのです。したがって重さは100分の1。もうちょっと精密な数値を使うと81分の1、いずれにせよ重さは地球の1%しかないのですね。
2. 太陽系の全部の衛星の重さの11%が月
地球の1%しかない月でも、太陽系のなかでの存在感は結構なものがあります。太陽系の衛星は、地球のほかに、火星、木星、土星、天王星、海王星、そして準惑星である冥王星にも発見されています。特に木星には、惑星である水星より巨大なカリスト、ガニメデのほか小さなものもふくめ70の衛星、土星にもタイタンという巨大衛星があるほか、やはり70ばかりの衛星が発見されています。
しかし、それら全部をひっくるめても地球の10%の重さにしかなりません。月はその中でかなりずっしりとした存在感がある、変な衛星なのです。
3. 月は地球のかけらから生まれた
ということで、地球の1%しかなくとも異様に大きい月は、立派すぎる家来です。他に比べると木星に対してその最大の衛星ガニメデで0.01%、土星だと最大の衛星タイタンで0.2%です。また、地球と一緒にできたにしては比重が小さいのは変だなーと、科学者は悩んできました。重い成分だけ残ったのなら、比重はむしろ大きくなるはずですからね。
これらの変なことを解決する仮説として、月は地球のかけらから生まれたという説が有力だそうです。地球に別の惑星がかすめるように衝突し、宇宙空間にとびちった地球の一部のかけらが集まって月になったというのですねー。地球の中心は鉄やニッケルでできていて比重が高いのですが、月を作っているのは、重いもの「以外」がメインってことになります。比重が小さな理由はこんなところにあったのです。このシミュレーション動画は、こちらで見ることができますよー。迫力!
4. 月はいつも、こっちを見ている
月は直径3500kmの巨大なボールですが、そのボールの半分を私たちは見られません。これは、月がいつも、同じがわを地球に向けている。まあ、月を「頭」に例えると「いつも、こっちを見ている」からです。いわば「顔」しか見えないんですね。では「後頭部」はというと、まったく見えないわけじゃあありません。まず、地球の右の端と左の端から見ると、月の「耳」のあたり側頭部がチラリと見えます。また月が地球を回るペースが一定ではないので、その分でも「耳」のあたりがチラ見えします。また、「あご」や「頭頂部」も(南極と北極といったほうがわかりやすいかしら?)、地球の上と下や、月の軌道の関係でチラチラ見えます。ということで、月で見えないのは全体の41%ということになります。その見えない部分をはじめてとらえたのは、旧ソ連の月探査機ルナ3号で1959年のことです。
そうそう、月の「顔」の方を「表」、「後頭部」を「裏」といいます。英語だとニアサイド(near side)とファーサイド(far side)。サッカーのコーナーキックみたいな名前になっています。
5. 月はかなり黒い
空に煌々と照る満月を見ると、あれが「黒い」とはとても思えないのですが、月は全体的に黒い星なのです。太陽光をどれだけ反射するか、つまり白さを表すアルベドっていう数字(0が真っ黒、1が真っ白、1を超えることもある)を見てみると、月は0.12! 10点評価なら1点という黒さなのです。ちなみに地球は0.37、雲で覆われている金星は0.65です。
しかも、これは月全体の平均であり、月の全体地図を見ると「表」(near side)の方が暗いため、地球から見ると、さらに月は暗いものになっています。より正確には赤黒いということがわかっています。
月の全体地図 (C)米国月惑星研究所 |
著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。