昼でも満天の星を見せてくれるプラネタリウム。今年は100周年日本プラネタリウム協議会によると、2025年までが「100周年期間」なのだそうでございます。ということで、今回は、100年のプラネタリウムの歴史などご紹介します。なお、ワタクシ東明はプラネタリウムの解説もしていましたし、番組制作にも関わったことがあるので、たぶん詳しいですよ。ほんとよ。

2023~2025年が「プラネタリウム100周年」

いまから100年前の1923年10月21日、ドイツ・ミュンヘンのドイツ博物館の屋上で、ドームスクリーンに星空を再現する機械=プラネタリウムが関係者向けに公開されました。また、2年後の1925年には一般公開となったドイツ博物館の展示物として5月7日から誰もがこのプラネタリウムを楽しめるようになりました。そしてその機械はほどなくして世界中に展示されるようになり、日本にも1937年3月13日に大阪市立電気科学館に設置され、人気を博すことになります。

現在は世界で4000のプラネタリウムが一般公開され、他にも何百万という家庭用プラネタリウム(たとえばセガトイズのホームスター)や、プラネタリウムソフト(例えばアストロアーツのステラナビゲーター)が使われています。

1923年10月21日と1925年5月7日は、そんなプラネタリウムの記念日なわけでございますな。で、それから2023年~2025年が100年ということで、日本だけでなく、世界のプラネタリウム業界が祝祭ムードになりつつあります。

300年前の「プラネタリウム」

ところで、このプラネタリウム。ドームスクリーンに、その中心にある映写装置から投影するという仕組みは1923年に完成し、それは世界的光学メーカー、ドイツのカールツアイス社によるものです。ところが、プラネタリウムという機械は、実は300年近く前からあったのです。

1734年に万有引力で著名な英国の科学者アイザック・ニュートンの実験助手だったジョン・デザキュリエは「A Course of Experimental Philosophy」、まあ、雑に訳すと、実験科学コース(当時、自然科学は自然哲学といわれていた)という本を現しますが、その中に「A Description of the PLANETARIUM」という節をもうけています。「プラネタリウムについての解説」ということであり、ここではプラネタリウムの機械について解説されているのです。この翻訳を岡山理科大学の福山さんという学生さんがされていて、2015年に公開されています

ここで紹介されているデザキュリエのプラネタリウムは、いわゆる「太陽系議」「オーラリー」というもので、太陽系の動く模型です。太陽が中心にあり、その周囲に地球や土星のような惑星が配置され、ハンドルを回すとそれぞれの周期で動くというものです。

このオーラリーは、英国のオーラリー伯爵がパトロンをしていた時計技師ジョン・ローレイが1713年に作成したものが元祖です。マダムスチームさんの記事に詳しく載っておりますな。ローレイのパトロンであるオーラリーにちなんで、オーラリーと呼ばれることになったというわけです。

で、これはまあ惑星(プラネット)の運動を示すものなので、惑星儀(プラネタリウム)といってもよく、デザキュリエはこれをプラネタリウムといったのですな。

プラネタリウム「館」の元祖は1780年頃

しかし、デザキュリエのいうプラネタリウム(太陽系儀)は直径80cmののぞき込む機械で、いまのプラネタリウムのような部屋とか館とかいう感じではありません。これを天井にしこんで、部屋から見上げるようにしたのが、オランダのアイジンガという人で、現在も残る「プラネタリウム館」を作ります。このプラネタリウム館の模型は、名古屋市科学館で実物再現されているので、近くの人は見に行ってはどうかなというところです。名古屋市科学館は世界最大のプラネタリウムもありますしね。

  • 名古屋市科学館には世界最大のプラネタリウムがあります

    名古屋市科学館には世界最大のプラネタリウムがあります

ただまあ、プラネタリウムという言葉は使ってはいますが、ドームスクリーンに星空が再現される、みんなが知ってるプラネタリウムの登場はやはり100年前ということで間違いないですね。

今時のプラネタリウムは、あの真ん中の機械がなくなりつつある

ところで、100年にもわたり続いてきているプラネタリウムですが、歴史的にはラジオとか自動車とか同じようなレベルになりますな。そしてラジオや自動車が今DXな変化が訪れているのと同じくプラネタリウムも変化が進んでおります。

最大の変化は、星空を映写するあの真ん中の機械がなくなりつつあることです。いや、まあまだまだ新しい機械が作られています。ただ、ドームスクリーンにリアルタイムCGで星空を作り、それが運動すればいいのですから、コンピュータ+プロジェクターでも同じことがやれます。

  • 名古屋市科学館の投影機はカールツァイスのUNIVERSARIUM モデルIX

    名古屋市科学館の投影機はカールツァイスのUNIVERSARIUM モデルIX

1981年には、アメリカのフライトシミュレーターのメーカー(当時)、エバンス&サザランド社がCRTにコンピュータで映像を作りプロジェクションするデジスターというデジタルプラネタリウムを作ります。当時はまだ8ビットPCが主流ですのでCGの生成にはミニコンピュータや後にUNIXワークステーションが使われました。またプロジェクターは白黒でベクタースキャンというレーダーの方式を応用したものでした。

その後2000年頃になって、PCは32ビットになりGPUも普及し始めてリアルタイムCGも、またプロジェクターの性能もあがって一般に普及し始めます。

そして、さらにプロジェクターもドームそのものがLEDを埋め尽くしたパネルになることで、完全になくなるというのも登場しましたってな話を過去の連載でもいたしましたなー。

参考:世界最大のプラネタリウム。最新技術のプラネタリウム。

映せる映像も、星空だけでなく宇宙のあらゆる光景、さらにはミクロからマクロまでいろいろなことができますよってのが、100周年のデモ映像で見られます。

ということで楽しみましょう

プラネタリウム100周年を記念して、各地のプラネタリウムで記念番組や展示などが開催されているようです。星空を楽しむというだけでなく、宇宙の様々な光景やら、サイバーなメタバースな体験やらできるメカとして楽しむこともできます。そんなことが100周年記念動画でパッとわかりますので、ぜひごらんくださいませ。