今年2014年5月24日土曜夕方に「きりん座流星群」が出現すると、天文ギョーカイでちょっとした話題になっています。いかにも怪しげですが、おおまじめな話なのです。そして、大方の予想では「出現はあってもたいしたことない」なんですが「一時間に数百の流星が見えるかも」というのもあります。さてどうなるんでしょう。この予想と実際に観察のしかたをご紹介します。夕方に見えるので、夜更かし不要、いいですよ!

「流星群」がときどき話題になります。気象会社なんかもよくネタするし、検索ワードでも上位にあがりますな。みんな、リアルな流れ星、見たいんですねー。

流星群は、流れ星がたくさん流れること、と思われているようです。はい、たしかに、流星群じゃないと、めちゃくちゃ流れ星が流れることはありません。たとえば、13年前の2001年の「しし座流星群」では、1時間に3000個もの流れ星が乱舞しました。また、毎年活発な活動がある8月の「ペルセウス座流星群」は、ピーク時で1時間に50個くらいの流れ星を数えられます。

流れ星は実は毎日流れているのですが、1時間に3~5個といったところ。流れる時間も1秒間未満ですから、ぱっと空を見て流れ星が見える可能性は1000に1つといったところ。それに比べれば、流星群は絶好の機会に見えます。

でも、流星群、必ずたくさん流れ星が流れるとは限らないんですね。年間の流星群で主要なものは10ばかりあるのですが、「ペルセウス座流星群」、「ふたご座流星群」、「しぶんぎ座流星群」の3つをのぞくと、1時間あたり5~10個程度なんです。こうなると、流れ星が流れるチャンスがちょっとあがるかなー。宝くじでいつもの3倍あたるというけど、わからんなー。みたいな世界なんでございますな。

じゃあ、なんでそんなスカみたいなものも「流星群」というかというと、これは「流星群」ってなんなの? ってことをちょっと知っとく必要があります。まず、流れ星は宇宙を猛スピードで飛んでいる「砂粒(流星物質といいますが、ようするに砂粒です)」が、地球に衝突し、大気中で光る現象です。大気がなければ「砂粒」は光らずに地上に衝突しますが、大気があるのでそれがバリアーになって衝突せずに光って消えるんですな。

流星群は、この「砂粒」がまとまって地球にぶつかるできごとです。なんでまとまるかというと、この「流星群の砂粒」たちは、もともと同じ天体からわかれたものなんですね。それは彗星です。そう、ほうき星とかコメットとかともいう彗星でございます。彗星は氷と砂粒をゴチャゴチャと固めたものです。太陽に近づくと氷が蒸発して砂粒が飛び出します。それが雄大な「尾」になって見えることもありますな。そしてその砂粒たちは、彗星の前後に広がっていって、彗星の軌道にそって、砂粒の道をつくるんですね。えー、科学ニュースを見るときに便利なように専門用語でいうと「ダスト・トレイル」と言っております。英語だとスターダスト(星くず)のダストになるんですねー。ロマンですなー。

そのダスト・トレイルが地球の軌道と交差していると、まとまった砂粒が地球にいっせいに衝突する。これが流星群ってわけです。この場合、みんな同じ方向から砂粒がつっこんでくるので、ワープかなにかの絵のように放射状に流れ星がながれます。その中心にある星座の名前をとって「なんとか座」流星群っていうわけです。ペルセウス座流星群の場合は、ペルセウス座を中心に、放射状に流星群が流れるんですな。

ただ、砂粒がどれくらい多いかというと、それはダスト・トレイルによってまちまちですな。最初は多くても、太陽の周りを何周もまわっているうちに、だんたんスカスカになっていくこともありますし、もともとそんなに砂粒がおおくない場合もある。ということで、流星群によってはスカスカだったり、活発に見えたりといった違いがおこるわけでございます。

さて、ということで、「きりん座流星群」です。これは、「リニア彗星」という彗星からばらまかれたダスト・トレイルが、ちょうど2014年5月24日午後4時すぎに、どんぴしゃりで地球にぶちあたるできごろなのですね。ずっと当たらなかったのが、今年になって軌道が変化してきてあたるようになると。そういうことを計算したフランスの研究者がいるのですね。一応リンクはっておきます。しかも、彗星から発生したのは100年以上前というからホンマかいな。でございます。まあ、この彗星そのものが2004年に発見された(でもいままでもずーっと太陽をまわっていた)のでわからなかったのですな。ちなみにこの計算方法は、2001年の「しし座流星群」のときも、ピタリとあたったのですねー。

で、予報によると、きりん座を中心に…あー、きりん座というか北極星をほぼ中心にとおもっていいですけど。1時間あたり100~400個の流れ星が流れるというんですね。おお、午後4時かがんばってみよ…・ん? 日が沈んでない。そうなんです日が沈むのは午後7時。暗くなるのは8時前なんですね。ピークを3~4時間すぎるんですよ。まあ、夕方、日が沈んだら、ぼんやりと北を中心に空を広くみてだければOKです。虫刺されに気をつけていただいてですね。

ピークにぴたり見たいならカナダでみればいいといって出かける人もいるくらいでございますが、まあ、ほんまにあたるんかいなという態度で、7時~8時くらいに、30分か1時間もみたらいいんじゃないでしょうか。夜中になるにつれ、条件は悪くなるので日が暮れてすぐがおススメでございます。街灯などまわりの明かりが大敵なので、できるだけ星だけが見える、車にひかれないような安全なところで見てくださいませ。

ちなみに、同じ計算をしてみた日本人の結果はこちら。佐藤さんは1時間に最大10個だそうですね(今年出現の可能性ZHRは約10(佐藤)~数百(他))。ZHR10というのは理想的な観測条件(頭の真上にきりん座があって、真っ暗な人里離れた快晴の空でみて)のもとで1時間あたりに10個という意味でございます。

ピーク時がこれだから、ピーク4時間後の日本だと…。でもほかの計算では数百個だとも書いていますけど。では、幸運をいのります。気楽にみるのが一番でございます。

5月中旬の東京の星空。きりん座は北極星のまわりに見える(21時ころ) (出所:国立天文台 Webサイト)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。