いま、サイエンスで一番アツイ業界というと? ロボットでも、原子力でも、宇宙開発でもありません。なんと、身近なタンパク質なのだそうでございます。で、20年くらいアツイ状態が続いております。そのショーコに、2014年の科学技術週間ポスターは「動く!タンパク質」なんですな。でも、どーも、響いてこないですよねー。実はワタクシメも正直不得手なんですよー。ということで、今回はサイエンスオタクとしてじゃなく、ふつーのヒト目線で、タンパク質ギョーカイをチラリとのぞいてみましょー。あ、もう私のレベルにあわせて、初歩の初歩なんで、そこはご承知おきを。

日本人のノーベル賞学者もずいぶん増えてきましたが、その中でもユニークなのは「クラゲ博士」こと下村脩さんですね。オワンクラゲを100万匹も捕まえてすりつぶして研究した人といわれれば、なんだか思い出すのではないでしょうか? そう「クラゲの身にもなってみろ!」ってなわけです(違)。下村さんの本「クラゲに学ぶ」、スッゲェおもしろいですよー!おすすめ!。

それと「電車オタクのサラリーマン」の田中耕一さんでございますね。田中さんは京都の島津製作所の技術開発サラリーマンで、大学院でてなくて「博士」でもなく、出世して研究開発の現場から離れるのがイヤで昇進をこばんでいたという方。なんと25歳の時の研究が受賞の対象でございました。

ほかにも、白川さんとか、野依さんとか、根岸さん、鈴木さんとかもノーベル賞を取っているのですが、まあ、みなさん本流のわかりやすい立派な学者ですね。野依さんは最近時々テレビでみかけますけど、なんかちとワルモノ顔なのがふびんなくらいです。野依さんの研究のおかげで、より安全に薬が製造できるようになったので、人類を救った人の1人なんですけどね。

さてさて、下村さんに田中さん、ユニークな2人の受賞理由には、共通点があります。それは「タンパク質」に関する研究だということなんです。

「タンパク質」、はい、おなじみですね。肉ですね、豆腐ですね、魚ですねー。身体をつくるのには必要。小学一年生から「ちやにくになるもの」ということでならってきましたねー。ほんで、人間の身体は70%が水でできていますが、次に多い20%弱はタンパク質でございます。残りは脂肪とか、炭水化物とか、骨に大事なカルシウムなどの無機物でございますね。

タンパク質、別の言い方だと「プロテイン」でございます。あ、一緒だったんだー。もちろん、私たちは、ずーっと昔、単細胞生物だったころから、タンパク質と共に生きてきたのですが、ちゃんとそれをわかってあげたのは、19世紀のことでございます。タンパク質知ってから、200年も経ってないんですね。身体をつくる、チッ素をたくさんふくむ重要な物質ということで、プロテイン=第一の、みたいな意味で名前がつけられたんだそうです。あと、卵白の主成分ということで、蛋白(蛋は卵の意味)質という翻訳になり、蛋なんて字がむずかしいもんですから、たんぱく質とかタンパク質とかいわれるようになったんだそうです。栄養学ではたんぱく、化学とか医学ではタンパクと表記するのが多いそうで、ドッチが正しいということではないそうです…いや、すいません、今調べました。へ~であります。

さて、タンパク質ですけれども、肉というか、身体を作る部品ですねー。もちろん小さい部品です。で、大きさは原子が数千個~数千万も集まっていますので、家にたとえると「セメント」「ガラス」「アルミ」とかじゃなく「壁」とか「窓枠」とか「屋根」とかそんな感じ、部品にあたることになります。さらにそれらの部品に当たるのが「アミノ酸」でございます。アミノ酸はチッ素と酸素がくっついた部品(アミノ基)が必ず入ったものです。「屋根」に対する「瓦」とか「釘」とかが、アミノ酸ってわけです。まあ、アミノ酸は20種類しかないので、この例えは微妙にどうかなーとは思いますけれどね。

で、こんな話をすると「あれ? タンパク質って1つ(種類)じゃないの?」「そういえば、動物性とか植物性とかあったし…」とか思いますかね? 私もタンパク質って数種類くらいかと思っていたのですが、とんでもないことで、数千万種もあるといわれているのです。すうせんまん…ひえ~でございます。うーん、かなり誤解をしていたことがわかってきたぞー。

そして、家の材料に「壁」とかの他に、「シャンデリア」とか「バスタブ」とか、場合によっては「自動車」とか「ソファ」とか「湯沸かし器」とかいろいろあるように、タンパク質にも単に、ガワを作るだけじゃなくて(え? そうなの)。いろいろな働きをするものがあるのでございます。そんで、家の材料と同じく、その機能を決めるのは、形と部品なんですと。で、どんな形をしているのか、どんな部品なのかというのを調べるには…顕微鏡でのぞくというのもあるのですが、もっとミクロな世界なので、X線をぶちあてて、そのX線の反射、回折のパターンからそれを読み取るってな方法が使われています。これは、ちょうど100年前のノーベル賞受賞のラウエさんが開発した方法でございまして、後にDNA(タンパク質を製造する設計図といわれる物質)もこれで形(二重らせん構造)がわかっちゃったというものでございます。

ちと話はそれますが、今年はラウエさんノーベル賞100年を記念して、「国際結晶年」なんですね。さらに、タンパク質の性質、たとえば部品の重さを調べるには、いろいろな方法があって、なかでは、よく使われるのがMALDIというものです。これ、話すと長くなるので省きますが、これのベースとなる機器を発明したのが、田中耕一さんで、だからノーベル賞なのでございます。

さてそんなタンパク質ですが、なにしろ、身体の中でいろんなことをしでかしているのであります。タンパク質が集まって発電機やストーブのようなものを作っている場所もあって、そこでは、身体を動かすエネルギーを生み出したりしているのですな。また、賊から家、じゃない、外部の病原菌から身体をまもるようなタンパク質もいたり、薬になるタンパク質もいたりするのです。どこで、どんなタンパク質が働いているか、なんてのも大切ですね。それらを調べるのに、たとえば放射性物質で印をつけたりするのですが、発光するタンパク質を利用するってな方法もあります。その発光タンパク質を発見したのが、クラゲの下村さんで、だからこそノーベル賞なのでございます。そうなのかー。ちなみに、緑に(Green)光(Fluorescent)タンパク質(Protein)なので、GFPと書かれます。これ、例のあの話題の、あれでも出てきていますので、ニュースを見るときちと注目してみてください。ほかにもPが最後につくのでHSP(Heat Shock Protein)ってのもよく話題にのぼります。温度があがると働きだすタンパク質です。ま、プロテインのPに注目でございますなー。

ってな感じで書いていたら、いやー、もう長くなってきました。今回はこれくらいにします。次はHSPとシャペリンとか、FOLDING@HOMEの話とか、私も中学生にもどった気持ちで楽しみながら、調べながら、また、ときどきみなさんにお伝えしようと思っております。

最後に、2014年の科学技術週間で「動く!タンパク質」っていうポスターが配布されています。全国の科学博物館などで無料配布されているほか、ダウンロードもできます。タンパク質について、ちょっと興味をもったら、ぜひ見てくださいませ。ぐるんぐるん回るタンパク質とか、歩くタンパク質とかあるんですって。うひょー

へばな!

科学技術週間のWebサイトより入手できる「一家に1枚 動く!タンパク質」のポスター

科学技術週間のWebサイトでは「動く!タンパク質」のアニメーションも見ることができる

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。