天文・宇宙をフィールドとする東明。プラネタリウムとはいささかの関わりがございます。プラネタリウムの解説もやったことあるし、担当者の知り合いも多いのよ。
そんなこともあり、この連載の第146回にて特徴あるプラネタリウムを紹介したりしたのですが、このところ「最大」「最新」の施設がオープンというアナウンスがあいついでおりますので、世界最大とか、最新技術のプラネタリウムといった、わかりやすいご紹介をいたしますねー。
日本はプラネタリウムが多い国でございます。47都道府県には必ず常設のプラネタリウムがあり、一般公開されているもののは300近くに上ります。これはアメリカについで世界2位でございます。また、海外輸出もしている国産のメーカーも3社あり、全世界でも5社くらいしかないので突出して多いといえますな。
そして、日本プラネタリウム協議会の統計によると、年間800万人、コロナ禍で休館が相次いだ一昨年でも300万人が利用したんだそうです。プロ野球の年間動員がコロナのなかった2019年でセ・パ両リーグそれぞれ1100~1400万人あまりだそうですから、まあ匹敵するといっていいですな。それだけ、人口に膾炙するような存在というわけです。
世界最大のプラネタリウム=名古屋市科学館
そんなプラネタリウムですが、大きな施設が多いのも日本の特徴です。プラネタリウムの大きさは、ドームスクリーンの内面直径(ドーム径)で語られることが多いのですが、名古屋市は2011年にドーム径が35mという世界最大のプラネタリウムを、名古屋駅から徒歩20分(普通は地下鉄の伏見から徒歩5分ですが、私は歩きます)の名古屋市科学館に開設しました。外部はそのまま巨大なボールとなっており、名古屋のランドマークとなっています。デススターが町中にあるみたいとおもっていたら、プロジェクションマッピングでそんなこともされたみたいです。
それまでの世界最大は、北京と愛媛県! 各30mだったので、大幅に上回る施設でございます。ちなみに、それに次ぐのが東京の西東京市にある多摩六都科学館の27.5mでした。なんか極東に偏っている感じですが、実はその次の27mも宮崎と姫路にあり、さらに26.5mが大阪、26mになってようやくモスクワでございました。
50cm刻みで競っていたわけですな。ちなみにモスクワに次ぐのは24mのアテネで、国際的には20mを超えると大型のプラネタリウムになります。日本にはこの大型のプラネタリウムが数えるのも面倒くさいくらいの数があります。大きなものの数だけではアメリカにもひけをとらないくらいでございます。
名古屋に最新式、ドームがすべてLED画面のプラネタリウム登場。横浜にも3月に登場
さて、そんな名古屋に2021年10月、最新式のドームがすべてLED画面というプラネタリウムが登場しました。
投影機はなく、ドームそのものが映像を作るLEDパネルでございます。名古屋市科学館ではなく、別の場所です。やはり名古屋駅から1駅の亀島がもよりのノリタケの森のイオンモールの中に登場しております。こちらはコニカミノルタプラネタリウム株式会社の直営でございますな。夜の21時台でも楽しめるようです。
ドーム径は15mと小ぶりですが、真ん中に投影機がないので座席は170とかなりの人数が入れます。名古屋市科学館ですら350なのでそこそこですなー。実際に見てみましたが、プラネタリウムとは思えない明るい青空が表現され、本当に昼間のようでした。星空も星が明るく、映像のインパクトが非常に強いものでございました。色の再現もスゴイですな。番組は全天映像の映画でしたので、昔ながらのプラネタリウムとは違いましたが、これは名古屋市科学館と差別化をはかったんですかね。ありと思いました。
なお、このLEDドーム(というのがいいでしょう)のプラネタリウムは横浜駅近くにも2022年3月にオープンとのことです。横濱ゲートタワーに入るとのことで、これも楽しみでございます。ちな、横浜にはドーム直径23mの大型プラネタリウム、はまぎんこども宇宙科学館が、横浜南部の洋光台にあります。また、かつては桜木町の駅の近くにも神奈川県立のプラネタリウムがありました(いまは閉館)。
西半球最大のプラネタリウムがアメリカ、ニュージャージーに?
さて、世界最大クラスのプラネタリウムというと、日本と中国にちょっと、あとロシアという感じでした。プラネタリウムの数は多いアメリカは世界で一番の動員(最大で年間200万人)のニューヨークのアメリカ自然史博物館ヘイデンプラネタリウムですら21mです。
ところが少し前、ニューヨークに隣接するニュージャージーに西半球最大のプラネタリウムがオープンしました。リバティサイエンスセンターにできたプラネタリウムがそうで、それまでIMAX映画シアターだったものをプラネタリウムに作り直したのだそうです。
ドーム直径は89フィート(27.1m)であり、名古屋、北京、愛媛、西東京市につぐ世界5位です。Jennifer Chalsty Planetariumと言う名前で、これは寄付者のJennifer Chalstyさんの名前を冠しています。日本でもかつて東京の渋谷駅前に五島プラネタリウムというのがありました、これは東急電鉄の創業一族である五島家の名前を冠したもので、東急が作りましたが、財団法人が運営していました。ネーミングライツではなく、お金をぽんと全部出すというのがすごいですよね。
世界最大のプラネタリウムがサンクトペテルブルクに?
さて、5~6年前に、名古屋超えの「世界最大の」プラネタリウムがロシアのサンクトペテルブルグにできたというニュースが駆け巡りました。ドーム直径は37mだそうです。名前は「Planetarium 1」です。今年開催予定の国際プラネタリウム協会(IPS)の大会会場がこちらですので、いろいろ情報が入っています。
アートエリアとして使われていたものを、ドーム全体に映像投影ができるように改造したものだそうです。リノベーション案件ですな。ドームプロジェクションのイベントの一環として宇宙映像のプラネタリウムっぽいものもやっていて、プラネタリウムなのかなというところはありますが、まあ、そうなのでございましょう。
今年国際大会が無事行われれば、多くの関係者が見て「こういうものだよ」といえるようになるはずですが、さて、コロナでどうなのかしらね。というところでございます。
世界最大のプラネタリウムが2021年上海に!?
ということで、さすがにこれ以上世界最大ネタはでないだろうと思っていたら、中国は上海に世界最大のプラネタリウムができたと話題になりました。2021年7月にオープンしたものでAFP通信が何回か報じるなど、ニュースになっています。公式ホームページはこちらね。上海空港に近い浦東地区にあり、となりにももう1つ巨大な科学館があります。
で、ドーム径はというと2つあって17mと23mです。機器は日本のメーカー五藤光学が納めていますな。
23mは確かに超大型ですが、世界最大というにはものたりません。中国には北京にすでに30mがありますからね。
でかいのは展示もふくめた建物で38000m2もあります。プラネタリウム館単独でこのサイズですから、とんでもありません。伊勢丹百貨店かよ! という感じの大きさでございますな。
行きやすい上海ですが、コロナでまだ見られていません。見てみたいなー。まあコロナがおさまれば、海外からもわんさか人が行くんでしょうね。
日本でも新館オープン、リニューアルなど
なお、日本でも北九州市が新科学館スペースLABO内に、九州最大のプラネタリウムをまもなくオープンです。場所はスペースワールドの跡地で、イオンモール、アウトレットモールに隣接するのだそうで、一日楽しめますな。
名古屋市科学館もプロジェクターなどを置き換えて8Kに、大阪市立科学館も2月にリニューアルオープン、コスモプラネタリウム渋谷もリニューアルなど、機器のバージョンアップもアナウンスされるなど。コロナを横目にプラネタリウム見逃せませんぞ。