テレビやラジオでは、毎日いろいろな番組が放送されていますねー。かくいうワタクシも、世を忍ぶ別の名前でラジオやらテレビで科学解説をしたこともあるのですが、世の中には、ずっと、すごい人もいろいろいるのでございます。そんな世界の著名な科学パーソナリティをちょっとご紹介しちゃいましょう。YOUTUBEなどでもぜひチェックしてみてー。

ブライアン・コックス(英国)

いま、科学のパーソナリティで一番といえば、ブライアン・コックスさんでございましょう。え? 聞いたことない? いやー、日本ではあまり知られていませんが、英国や英語圏では超がつく有名人でございます。甘いマスクのイケメンで、飾らない言葉で、科学をズバリ解説するので大人気なのでございます。そして本職はマンチェスター大学教授で、欧州原子核研究機構CERN(セルン)という巨大な研究所でバリバリ働く、現役の物理学者なのですね。

2010年、なかば社会現象になった彼の番組が英国BBCの「Wonders of the Solar System(邦題:神秘の太陽系)」でございます。太陽系の天体を紹介する教養番組なんですが、なんと当時、視聴率がトップ5に入る大人気。トレイラーを見ても、おおー、って感じになりませんか? この番組のヒットでブライアンさんひっぱりだこ。伝説のラジオ番組スカイアットナイトのパーソナリティにもなり、英国では知らない人はモグリというくらいの人気ものなんですね。しかも、彼は、別の意味でも有名人です。学生のころはチャート1位をとったロックバンド「D:REAM」のキーボーディストでもあったんですね。ミュージシャンやりながら、研究活動をして、大学の教授になり、しかもパーソナリティ、できすぎくんです。

Wonders of the Solar System - Trailer - BBC Two

え? なに? 全然ピンとこない。うん、そうですよね。でも、彼の解説はすごくわかりやすいし、番組もかっこいい。日本で放送されたら見逃さずチェックしてみてくださいませー。

Brian Cox(ブライアン・コックス)氏 (出所:同氏Twitterアカウント)

ニール・ドグラース・タイソン(米国)

ニール・タイソンさんは、米国の宇宙を紹介するテレビ番組「Cosmos: A Spacetime Odyssey(コスモス-時空の旅)」のパーソナリティをつとめる天文学者でございます。そして、いま一番ホットな人物なのです。この番組は1980年に放送されたコスモス(日本では大阪の朝日放送がキー局)を最新の情報と映像技術で作り直したものです。

オリジナル1980年のコスモスはアラフォー、アラフィフ世代にはぐっとくる番組で、IBMのコマーシャル(数字の桁を、一、十、百、千…と無量大数まで数え上げていく)も印象的でございました。そのときのパーソナリティは、米国を代表する惑星科学者で、ピューリッツァー賞作家でもあるという多芸な人カール・セーガンでした。60ソコソコで亡くなってしまいましたが、日本でも人気でした。

で、今回のニール・タイソンさんもまた、宇宙解説では有名人なんですねー。彼はもともとコロンビア大学の天体物理学の教授でした。ええ、コロンビア大学といえば、ニューヨークにありノーベル賞受賞者を100人以上だし、バラク・オバマ大統領も卒業した超名門大学でございます(宇多田ヒカルがいた大学という方がわかりやすいですかね)。

教授時代から、マーリン博士というペンネームで、科学の質問に答える本を出していまして人気でした。転じて、年間100万人が訪れるという、アメリカ自然史博物館ヘイデンプラネタリウムの館長になります。ちなみに「冥王星を降格させた男」としても有名です。博物館の展示で、いちはやく太陽系の惑星から冥王星をとりのぞいたんですね。冥王星は、米国人が見つけた唯一の惑星だったこともあり、大変な批判もあびましたが、最新の研究結果だと意にかえさず、それをネタに本まで書いています。その後、冥王星は世界の天文学者の合議で、惑星から準惑星に降格となるのでございます。そして、米国のNOVAという科学番組でも人気になり、さらに今回のレジェンド番組のホストなのです。

そんな話題の男が、さて、どんな番組展開をするのか、Cosmos: A Spacetime Odysseyは2014年3月スタートで、日本でもCSで放送予定です。楽しみですねー。

Neil deGrasse Tyson(ニール・ドグラース・タイソン)氏。 (出所:同氏Twitterアカウント)

アダム・スペンサー(オーストラリア)

こちらは、オーストラリア人なら知っている、ラジオパーソナリティでございます。ブライアン・コックスさんやニール・タイソンさんとは違い、彼はコメディアンです。大学の時は討論大会で無敵のチャンピオンだったという弁が立つ人なそうです、頭もいいんですね。

アダムさんは、オーストラリアでは朝のラジオの顔として有名でございます。日本だと…ウーム、関西なら浜村淳なんですが…、みのもんた…ちょっと違うか、ってな感じの有名度でございますな。日本のNHKにあたる、ABCのBreakfastという番組のパーソナリティをしておりました。

そんな彼は、科学の人としても有名でございます。「QUANTUM(量子)」や「Sleek Geeks(イケてる科学オタク)」という科学番組でパーソナリティをつとめていたんですね。オーストラリアで科学の人というと、真っ先にあがるのがアダムさんってわけです。特に数学オタクで有名で、最近はやりのTEDでも数学を語っていますね

マーティン・ポリアコフ(英国)

マーティンさんは、ノッティンガム大学の化学の先生なんですが、ヨーロッパでは「頭モジャモジャ頭+赤い実験着の周期表おじさん」として有名です。子どもたちにも大人気です。2008年からYOUTUBEで、周期表に関するビデオを毎週アップし続けています。

ビデオではそれぞれ、実験をしてみたり、金塊の倉庫の様子を見せたりと、いろいろな切り口で元素を紹介するわけです、モジャモジャ頭で。最近は大勢のスタッフと一緒にこのビデオを作っております。まあ、http://www.periodicvideos.com/をまずはみて、好きな元素をクリックしてみてください。個人的には、天文学者の周期表(Astronomer's Periodic Table)ってビデオが好きです。天文屋じゃないとおもしろさが分からない地味で極度にマニアックなビデオです。

Astronomer's Periodic Table - Periodic Table of Videos

日本の科学なパーソナリティ

これは、もう、みなさんご存じですよね。アイドルのしょこたんこと中川翔子さんは、仕事でやっているだけじゃなく、重度の科学オタクで、国立天文台とも仕事抜きでお友達なのだそうです。プラネタリウムの番組の原案なども作っていますが、こだわりがある内容で評判もなかなかでございます。

科学実験で有名な、でんじろう先生こと、米村傳治郎さんも知られていますよね。もともとは高校の先生で、学校の授業で火をふいてみせたりと、パフォーマーな方だったようです。学校の枠ではおさまらなくて、科学で仕事をするようになったんですね。彼が得意とする空気砲はわりとカンタンにつくれます。というか、段ボールの一面に穴あけて、穴が前になるように側面をポンとたたけばいいんですねー。中に煙を充満させておくと、環が飛び出るように見えますね。昔、おじいさんたちが、口とタバコでやってましたね。

いかにも科学者として登場するというと、あの人とか、この人とかいろいろありますけれど、どうでしょうか? 竹内薫さんとか、滝川洋二さん、渡部潤一さんなんかがそうでしょうか。あとは、カソウケンの内田麻理香さんかな。でも、有名というには一歩足りない感じですね。

では、日本で一番有名なパーソナリティで、世界的な人といえば、それは…世界のキタノことビートたけしさんですね。テレビ番組のコメントで、ときどき科学の知識を披露して、周囲の人がついていけない、なんてことはよくあるくらい科学マニアです。この間みたら「アインシュタインがさ、相対性理論の検証で太陽の重力で光がまがったが確認できたのを聞いたとき、めちゃよろこんでいただろうな」なんていって、周囲が理解できないでいました。また、たけし軍団で天文台をつくろうなんて、まじめにやっていたようでございます。なにより、2013年で終わった「たけしのコマ大数学科」でマス北野として活躍したのを覚えている方もいますよねー。この番組は2008年に日本数学会出版賞を受賞している本格派で、同じ形式の番組が英国でも放送されているのだそうです。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。