ダーウィンだのウイルスだのと、世間が生命科学ブームでございますな(違)。ただ、東明さんは、このあたり化石なので、マイナビ出版さんからでた手軽に読めそうな「マンガで学ぶゲノム」を読んで、自分の非常識にウァーっとなっちゃいましたので、いま流行りの(違)、読書感想文を書いてみましたよ。自分のDNAについての非常識に変な笑いが止まらなくなっています、中学高校くらいで生命科学を挫折した私のような人間の再学習にちょうどいいですよ。ご笑覧くださいませー。
えー、不肖しののめ、生命科学は中学の理科図解で「細胞の中にリボゾームがある」という時点で理解をあきらめて以来、鬼門でございます。それでも自分の陣地の宇宙関係でも、最近、アストロバイオロジー(宇宙生命)センターなんてのが国立天文台の研究者を中心に組織されて新たに登場したりして、なんも知らないと楽しめないので、せめて科学雑誌やらWebサイトやら新書やらを読み散らかしているところですが、わかった気になっては誤解がわかり、日々爆死しているところであります。
これに加えて、本当に生命科学の話が多くなっております。特に、ダーウィン先生がどうのとか、新型コロナウイルスはRNA型だとか、スーパーコンピューターでフォールディング解析だとか、遺伝、ゲノムがらみが、非常に多いわけで、こりゃ、いったんまとまったものを読まないといけないと、すがる藁をさがしていたわけです。
この場合は、ある程度まとまっていないと困るのだけれど、かといって、こちとら入り口で盛大につまづいたままなので、適当なものがないかというところ、ちょうどマイナビ出版さんから「マンガで学ぶゲノム」が出たので読んでみました。
この本は、とっても分厚いのですが、こちとら、分厚いマンガは幼少時にコロコロコミックで鍛えたわけで、まあ、なんとかなるべと思ったのですよ。
で、ちょっと開いて、あ、しまったと思いました。なんか、絵面が怖そう。怖いのは苦手なんですよ。ドラえもんで育ったの(ドラえもんもある意味怖い話ですけれどね)。それから、ロザリンド・フランクリン(DNAの構造解析をしてノーベル賞候補といわれたが、若くしてなくなり、解析写真を盗み見たワトソンとクリックがノーベル賞をとった不運の女性科学者、また今度書きます)の怖そうな顔がちらっと見えたので「ああ、DNAの発見物語で、フランクリンの不運と、その後のDNAシーケンサーの話でも書いてあるんだろう」と勝手に想像して、積読スペースにおいたのでございます。
でも、手元にあるし、上に書いたようにとりあえず知識のアップデートをしないといけないしということで、あらためて読み始めました。
すると、意外にも怖そうにもかかわらず、スラスラ読めます。ここでは「マンガ」を忘れて、遺伝に関わる解説書と思って読むのがよいのです。解説にいちいちマンガの絵がついているので、教科書などよりずっと理解しやすい。ストーリーは最小限なのですが、登場する科学者の葛藤やら、過去の研究の不足が科学者の声で語られたりするので、こりゃーいいわと思って、半分ほど読み進めました。
その間、中学校で習った、メンデル、ダーウィンはもちろん、遺伝とはなにかを問うたデカルトなども登場。メンデルが都合の悪いデータは公表用に使わなかったとか、怪しげな説を唱えていたとか、まあ中学高校の教科書では触れられない、チョイエピソードも入っていて、それがなかなか良いのでございます。赤目のショウジョウバエの実験の話も丁寧にかいてあって、これも中学のときに「覚えとけ〜」じゃなくて知っておきたかったですな。そのほうが楽しめた。
で、予想どおり、遺伝は染色体の中にあるDNAという巨大分子が担っているらしいとなって、そのメカニズムを知るために構造解析をしないとねーという話になります。で、DNAは二重らせん構造だと言ったワトソンとクリックの話。本当はそれをほぼつきとめていて結果をふたりに盗みみられ、ノーベル賞にならなかったロザリンド・フランクリンの話へと進みます。その前後に、物理の世界ではおなじみのシュレーディンガーが重要な役割で登場するのですが、このあたりの話がキチンとはめられるのもおもしろいし、そもそもが最年少ノーベル賞のブラックのX線回折が登場するのも、どっちかというと物理系な私にはありがたい感じですな。
そして、はいDNAからそれを設計図に、タンパク質が合成され、タンパク質が生命機能を決めていくという話になって、めでたしめでたし。というイメージで、おしまいと思ったら、本が半分なのでございます。DNAさえ読めれば、どんな生物でも遺伝病でも、あるいはDNAデザインした子供だのも理解できる。というのが私の認識だったのですが、これが違うという。えー、DNAがコンピュータのOSじゃないの? というと違うという。
が、ここからが問題で、DNAは、コンピュータのOSのようなイメージでいうとまちがいで、あえて言えばデータベースであり、それにアクセスするハードとソフトがないまぜになっている細胞内の物質、さらには隣接する細胞との相互作用、もっといいえば外界からの作用が生命活動を決めるという話に発展していきます。この辺でわけがわからなくなって、そのまま最後まで読むことになるのでございます。そこで登場するヒロインがマクリントックさんですが、この人本当におもしろそうなので、またおっかけようかと思った次第です。
ということで、本の半分までは知っていた情報の整理と発展でちょうどよかったのですが。
残りの半分で、自分の半端なDNAやゲノムについての理解がひっくり返されて、ウワーッと変な笑いになっているのが現状でございます。
ただ、世の中は、いろんなところにゲノム関係の応用の話や、遺伝のたとえの話がころがっていて、政治から投資からを支配しているところがあるんですな。大阪万博のテーマもそれが近そうなのでございます。が、それはどうも、DNAがOSなイメージに支配されているっぽい
うーむ、しかし、この本を読むと、それはごめん半世紀前のイメージで、そんな古臭いイメージでとらえちゃいけない、というかそれは忘れないといけないかもーという感じなのでございます。
DNAだけでなく、タンパク質が重要だと何人かの知り合いの先生方に聞かされていましたが、その辺は合点がいきましたが、それだけでもない、複雑なネットワーク全体が遺伝を担うというイメージなのか。
まあ、でも、現代生命科学を楽しむための、土台はこの一冊でつかめた気はします。いまちょっと苦しい感じですが、そして、私の流儀では、さらにいろんな専門家の説明を読んで、もうちょいイメージを補強していくと、見えてくるかなというところですな。
なんというか、ワープをして異世界にきて戸惑っているような感想文ですが、そう思える一冊ではございますよ。読むのはそれなりにしんどいけど、専門書ではないので、ゆっくりなんとかなります。はい。