自宅で使える望遠鏡を手に入れよう

今回は、月のクレーターや土星の環が見える望遠鏡、自分用、家庭用のものを入手するさいのポイントをご紹介します。いや、普段は「まずは公共施設などで見せてもらうのがいいですよ」というのですが、今年(2020年)は新型コロナウイルス感染症という特殊事情がありますからねー。

  • 満月

17世紀のパリは、「朕は国家なり」なルイ14世が登場するチョイ前から、人口30万人というヨーロッパ随一の都市でございました。あ、300万じゃなく30万人です。当時100万都市はありません。100万都市が初めて出現するのは18世紀の北京でございますよ。

さて、当時、そんなパリにはあらゆるものが集まってきました。香水などもよく使われるようになり、隣国オランダで発明されたばかりの望遠鏡も入っています。当時の望遠鏡の価格感がちょっとわからないのですが、パーツとしては眼鏡と共通(13世紀に発明され普及していた)ですから、量も作られ評判のグッズになっていたようですな。当時フランスよりも先進地域だったイタリアにもこれは伝わり、同国のベネチアの近くに住むガリレオが作って「天体」望遠鏡として使い…天文学に革命がおこったのでございます。

さて、そんな革命の道具、望遠鏡は少年少女の憧れでございます。百貨店やホームセンターやオモチャ屋、最近では家電量販店などにもたいていならんでいて、おじいちゃんおばあちゃんが、孫に買ったろかみたいな世界ですね。

この望遠鏡で、月のクレーターや土星の環を見る。これは、もうグッとくる体験でございます。ほんとうに、だれもが感動するのですね。私も時々観察会で望遠鏡をのぞいてもらってるんですが、大人の嬉しそうな顔を見ると本当にうれしくなります。望遠鏡はいいぞ!

そして、望遠鏡はいきなり購入しても、たいてい周囲に使い方がわかる人がいないので、私のオススメは「公共施設の天文台や地区の天文同好会が開催する観察会に参加するのが吉ですよ」というものです。無料か数百円(観光用は別ですけど)でOKですからね。

が、今シーズンは、望遠鏡の観察を大勢の方へしてもらうのが困難です。新型コロナウイルス感染症のため(ため息でますな)。のぞく=目が接触するものを共有する=感染症対策が課題だからなんですね。子供なんて(いや大人でも)消毒をまたずにのぞいたりしますし、だいたい大勢をさばくのが問題です。

そこで、自分や家族専用の望遠鏡をゲットしようってなことになるわけです。以前も紹介したことがあるのですが、ちょっと趣を変えてご紹介しましょう。

参考:どこでもサイエンス 第118回 クリスマスプレゼントに「望遠鏡」

じゃあ、なにが良いのか? というと、これ、色々考え方があるのですが、東明的にはつぎのとおり。

月のクレーターを見たい、星空をながめてみたい

【松】防振双眼鏡で倍率12倍以上のもの:6万円~

おーい、というほど高いですし、天体観察だけにつかうのはもったいないです。

12倍以上というのは、10倍以下なら「フツーの双眼鏡(1万円くらい)でいいんじゃね」だからですね。手持ちで気楽につかえるのがよいところです。

同じスペックのフツーの双眼鏡とは見えやすさが格段にちがいますよ。

どこのがいいのかはかなり好みなので、ググっていただければ。

【竹】バードウォッチング用の倍率20倍の望遠鏡:4万円~

カメラやビデオ用の三脚にとりつけてつかうものです。これまた、天体観察だけに買うんなら、ふつうの望遠鏡を買ったらよいのですが、バードウォッチング用にもっていればぜひ流用してください。新たに購入? それはやめたほうがよいです。

【梅】星の手帖社の15倍の望遠鏡

基本、こちらがオススメですね。同じようなキットはいくつかありますが、作りやすさとか、質の高さは一番。あと価格もこなれていますし、ガイドブック付きで大手書店で入手できます。

1750円+税(天体望遠鏡)と2850円+税(正立像望遠鏡)がラインナップされています(価格はいずれも2020年5月27日時点)。組み立ては10~20分でだれでもできます。正立のほうが直感的に使えるのでオススメできます。で、こういうのは同クラスでないんですね。

手持ちでもギリギリ使えます。カメラやビデオ用の三脚にとりつけると、安定性が増しますし、人に見せてあげることもできますが、感染症対策は怠りなく(のぞく場所をアルコールで都度消毒がよいです)。

土星の環を見たい

【松】全自動セッティング機能つきの望遠鏡:30万~コース

望遠鏡で土星の環を見ようとすると、倍率は最低でも30倍は必要です。30倍の望遠鏡はちょっと手元が狂うと、あさっての方向を向くのでコントロールが難しいです。また、土星は明るいものの、フツーの星と見分けがつきにくいので、どれが土星やらですな。

そういうのをぜーんぶ、機械にまかせた製品があります。組み立ててぽんとおき、しばらく待つとセッティングが終了。あとはおもむろに「土星」とボタンを押せば、土星がみられるというものですな。

1つはフランスのスタートアップ企業が作っているeVscope。持ち運びが楽なコンパクトなもので、電子アイピースを使って画像を増幅して見る新世代の望遠鏡ですな。いまは、日本での直販は一休み中ですね。

もう1つは、ミードという米国の会社がつくっているLSという望遠鏡です。これも40万円くらいするのですが、ボタンぽんで土星が見られます。ただ、重いのでございます。20kgくらいします。アメリカ人規格ですな。

なお「自動導入」という望遠鏡はほかにももっと安い(5万円くらい)のものもあるのですが、自動といっても、最初にセッティングをしなくてはいけません。これが「望遠鏡をXXという星にむけて」というもので、XXという星がなんだかわからなければ、セッティングができないんですな。だったら最初から土星にむけますってという感じでございます。

【竹】ちょっと高級な入門用望遠鏡セット:5万円くらい

昨今は、このジャンルは鉄板な製品があります。それは、日本のビクセンというメーカーのポルタIIというシリーズです。

実売で税込み5万円くらいからですな。直感的に操作ができますし、じわじわと動かす(これ、望遠鏡では大事)微動機能があるなど、性能はキチッとおさえています。重さも6kgくらいですから、取り扱いやすいですよ。私もよく使います。子供にも使い方をちょっと教えると、すぐに操作を覚えてしまいます。

ほかには、SKY-WATCHERという台湾の会社がつくっているAZ-GTiという、スマホでコントロールする望遠鏡もあります。星の知識が少し必要ですが、コンパクトで値段も5万円くらいですね。友人が使っているのですが、人に見せるとウケます(それかい)。

【梅】組み立てキット 35倍の望遠鏡:3000円くらい

組み立てキットで35倍のものがいくつかあります。私が使ったことがあるのは両方とも土星の環がちゃんと見えました。先ほども登場した星の手帖社の35倍望遠鏡と、この分野では老舗のオルビィス社のスピカという望遠鏡です。スピカは、天頂ミラー(650円、税別)をつけるのをオススメします。Amazonでも売っています。

土星がどこにあるのかわかり、カメラやビデオ用の三脚があり、少し苦労をしながら向ける必要があります。でもコスパは抜群ですな。

裏技としては、一眼レフカメラ+望遠レンズがあれば、おもいきり望遠にして土星を撮影してみて、PCなどのモニターでさらに拡大する方法です。実はそれでも環の存在がわかるんですよ。けっこうオオっとしますよ。

なお、こちら、ワタクシ望遠鏡メーカーそのほかから、一円もいただいていないことは明記しておきますね。どっちかというと、お金を貢いでいる方ですねえ。

では、次回は日食(2020年6月21日)についてご紹介の予定です。日食は望遠鏡は基本、つかっちゃダメですよ。