流れ星とオーロラには共通点があります。両方とも、緑色に光るのでございます。そして、その緑は、地球が、生命が存在する惑星である現れでもあります。今回は、そんな、ちょっと「朝の校長先生の話」に使えそうなネタをご紹介。

毎年12月14日前後は、ふたご座流星群の活動がピークを迎えます。ようは、流れ星が多くみられるということですな。都会でも一時間あたり十個~三十個の流れ星を数えられます。これは通常の3、いや10倍に当たります。流れ星の観察の方法は、この連載のバックナンバーを読んでくださいませね。

参考:「どこでもサイエンス 第91回 流れ星を見つけるコツ」

また、冬といえばオーロラでございますな。実際は、極地で見られるオーロラ(極光ともいいますな)は年がら年中見えるのですが、冬は夜が長いですから、そのイメージが強いのでございましょう。オーロラツアーは冬場に集中しています。通は、秋や春など気候が厳しくなく、緑も楽しめる時期に出かけたりするのですけどね。夏? えー、極地近くでは夜がなくなり、弱い光であるオーロラはわからなくなっちゃいます。

さて流れ星とオーロラ。この二つには共通点があります。緑色に光るのでございます。

流れ星については、TWAN(世界の星空)というカメラマンの写真を集めたページのこの写真(リンク先参照)とか、こっちの写真(リンク先参照)とかが分かりやすいですね。

あと、子供の科学チャンネルで、武田さんが撮影された動画などが分かりやすいですかね。

ペルセウス座流星群 (YouTube 子供の科学公式チャンネル)

オーロラは、素人が撮影しても緑色が良く分かります。NASAのAPOD(天文学、今日の一枚)から、こちら(リンク先参照)とか、こちら(リンク先参照)などごらんください。動画だと、国際宇宙ステーションから撮影された見下ろしたオーロラがいいですなー。

ISS EXP 52/53 AURORA AUSTRALIS

さて、流れ星とオーロラですが、なぜ同じ緑色で光るのか? ですが、これはもう、両方とも地球の空気中の酸素が光っているからです。ガスにエネルギーを与えると、特定の色で光るのですが、酸素分子の場合は希薄だと赤、やや濃いと緑色に発光する性質があるんですな。

ちなみ、希薄なネオンガスに電気をあたえるとピンクに光るのを利用したのがネオンサイン。最近見かけなくなりましたが、オレンジに光るのを利用したのが、かつてトンネルに多用されたナトリウムランプです。水銀のガスは目に見えない紫外線を出すのですが、これは殺菌灯に使われます。そして、蛍光剤という紫外線があたると目に見える光が出る物質を利用したものが、蛍光灯です。

ということで、オーロラや流れ星が光るのは、ネオンサインや蛍光灯とあまり変わらんということでございます。

ただ、オーロラと流れ星では、光るためのエネルギーの源が違います。オーロラは、本当にネオンサインや蛍光灯と同じで、大気中の酸素分子が電気で光っています。宇宙から電気が降ってくるんですな。

オーロラの電気の源は太陽からくる電気を帯びた風、太陽風です。ただ、そのたまった電気を送り出すのは、地球の磁場が複雑にからまっています。太陽風は地球の磁場でからめとられて、太陽と反対の夜がわにたまり、それが滝のように、磁極に近い、北極と南極に降り注いでくるのです。そのため、オーロラは極地を中心にみられ、日本ではめったに見られません。

にもかからず、なぜか日本はオーロラの研究が盛んな国で、人工衛星による観測や、シミュレーションなども行われています。一つは南極昭和基地がオーロラ観測の好適地というのもあるようでございます。

一方、流れ星は世界中で見られます。オーロラと違い、日本でももちろん観察できるわけで、原因は、磁場の影響を受ける電気じゃないんですね。

では何かというと、秒速11~70kmで突っ込んでくる、砂粒が原因なのですな。砂粒は太陽の周りを回る、ミニミニ惑星です。このミニミニ惑星が、地球と猛スピード(時速に直すと4万キロ~30万キロです。

時速4万キロといえば、1時間で地球を一周できますし、30万キロだと、1時間で月まで行けてしまいます…速すぎてピンときませんなー。えーと、新幹線で2時間半、飛行機でも1時間弱かかる東京~大阪を、流れ星は遅いものでも45秒間、速いものだと7秒間で到達します。東京から大阪を7秒って、あーた、こりゃもう、どこでもドアクラスのスピードでございますよ。

さて、これほど高速だと、このミニミニ惑星が、地球に衝突すると大気と激しく圧縮して高温になります。そのエネルギーが大気に伝わり、豊富な酸素分子を光らせるのでございますな。え? もっと多い窒素はどうしたって? まあ光りますけれど、目で見えにくい波長で光るのでわからないのでございます。いや、一部は紫色に光りますな。

ということで、オーロラと流れ星は、発光原理は違うものの、最終的には同じ酸素分子が光っている。そのために、共通して緑色に光っているんですね。

ところで、この酸素分子、どうして地球の大気にあるんでしょう? たとえば金星や火星の大気はほとんどが二酸化炭素であり、酸素はあるものの、酸素分子になっていません。いえ、地球もかつては二酸化炭素が多く、酸素はほとんどないような大気だったと考えられています。それが現在のようになったのは、生命活動のためです。

いまでも植物などは、二酸化炭素を酸素に変える光合成を行っています。植物ができる前でも細菌類がその仕事をし、地球上に酸素が少しずつ増えていったと考えられているのですな。そして、酸素が豊富になったことで、酸素を使って活動する動物が現れたのでございます。

さらに、太陽からはそれこそ殺菌灯に使われる、人体にも有害な紫外線もやってきています。しかし、地球の大気の酸素分子が変質し、オゾン層を作ることで紫外線をシャットアウトしているのです。これまた生命が地上で活動できる源になっています。

つまり、地球上に生命があふれている証拠が、豊富な酸素分子の存在であり、そしてその酸素分子が豊富だから、地球のオーロラや流れ星は緑色に光るのですなー。

木星にもオーロラはありますが、こちらは木星大気に豊富にある水素を光らせ、ピンク色になります。

地球に見られる、オーロラや流れ星の緑色の光は、地球が生命の星である証にほかなりません。

ほら、朝の校長先生の話になったでしょ。

ただですね。生命の多様性ってのがありますので、酸素分子が多くなくても、別の種類の生命が栄えているかもしれないし(実際、初期の地球は酸素を嫌う生命体ばかりだったらしいですし)、生命由来でなくても酸素分子が多くなるかもしれませんのでございます。

ということで、「まあ、いまのところは」というエクスキューズがつく、「校長先生の話」でございました。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。