2018年の宇宙、どうでしょう? ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、以前、あまりにも夏に宇宙ネタ満載だったため、お伝えできなかった9月~12月分でございます。宇宙機関係で楽しみが多いですよ!
宇宙にかかわるできごとを、早めにさらっておこうというこのネタ。今年2018年夏は、火星大接近やら月食やらペルセウス座流星群やらオープンキャンパスやらで、ネタ満載でした。ということで、今回はあふれてしまった9~12月をしっかり回収いたします! もちろん、スタンスは同じで、宇宙ファン・マニアってわけじゃないけど、たまには空を見るかな。話題になったら、気になるかなという「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを紹介しちゃいます。
9~10月
9月の研究所公開・学会講演会
普段は関係者だけが出入りする研究所。でも、どこでも年に1度くらいは公開日があり、ちょっとしたお祭りとなります。公開は、4月の科学技術週間と7~8月の夏休み期間が多いのですが、9月にもチラホラ。また、秋は学会の季節。たいていは市民向け講演会が行われます。締切そろそろもありますが、いくつか紹介いたしましょー。近所にあれば、ちょっと寄ってみるのもよいかもですよ。
9月2日:高エネルギー加速器機構 一般公開 (茨城県・つくば市)
日本最大級の実験施設の公開です。ニュートリノ関係の実験にも使われ、太陽のニュートリノのナゾを解く一助にもなりましたよ。サイエンスカフェや子供向け教室もあり。9月8日:核融合科学研究所 オープンキャンパス (岐阜県・土岐市)
核融合用のプラズマ関連施設などの見学のほか、子供向けの体験や工作もあり。おもしろそうですよー。9月16日:日本物理学会講演会
長野・松本でノーベル賞受賞者の梶田先生が登場。無料・申し込み不要9月22日:日本天文学会公開講演会
兵庫・姫路で 宇宙の生命がテーマ。無料・当日先着順
9月12日、夕方の空に、三日月と金星がならびます
金星は星の中で一番明るいのですが、夕方によく見える時期は限られます。今年はずっと見やすかったのですが、これで手仕舞い。日が沈んだら西の空に注目です。2か月後には夜明け前の空によく見えるようになります。
火星が引き続き見ごろ!
大接近で話題をまいた、火星は、まだまだ明るく目立っています。ただ年末ごろには急速に遠ざかり、暗くなっていきます。このクラスの火星が見られるのは2年後ですから、ぜひチェックしてください。見つけ方は、夜8時、南の空、オレンジのとても明るい星。で大丈夫でございますよー。
火星そのものの気候は、火星南半球の夏に向かっています。望遠鏡で100倍ほどかければみられる南極の氷=極冠も、だいぶ控えめになっていきます。望遠鏡の観察については、各地の観察会をチェック! 天文ポータルのPAONAVIさんや、近くの科学館やプラネタリウム、天文台のホームページをチェックしてみてください。こうした施設、日本には数百か所もあるんです。また、ホテルや商業施設などで観察会が開かれることもありますよー。
お月見は9月24日。さらに10月18日夜と10月31日夜は最小と最大の半月が見られる
そうそう秋といえば、お月見ですね。2018年の中秋の名月は9月24日です。また、後の月といって十三夜もお月見をすることがあるのですが、これは10月21日。お月見は収穫祭から来ているとされますが、2回やるのは平安時代の貴族の風習だそうでございます。
ところで今年10月は、半月にも注目です。月は地球との距離が2割ばかり変化し、大きさがすこーし変わります。だからスーパームーンとかいって騒ぐのですな。で、10月の半月はたまたま、18日が遠いところ、31日が近いところになります。望遠レンズで写真をとって比べると、2割の変化が分かりやすい写真となりますよー。ぜひお試しあれ。
なお、半月は厳密には17日と11月1日なのですが、日付は夜中の0時に変わる加減を考慮し、18日と31日と、ここではしております。
10月9日は、10月りゅう座流星群の活動がピーク。今年は注目
一番流れる時期ってことですな。とはいえ、ふだんは「え? ピークだったの」という感じです。が、今年はちょっと注目。なぜかというと、この10月りゅう座流星群(という名前なのです)のもととなるジャコビ二・チンナー彗星が7年ぶりに接近しているからなのです。流星群は、彗星がばらまく砂粒が、地球に突っ込んでくることで起こります。いうならば彗星が流星群の素なのですが、それが地球に近づくのですから流星の数が多くなることも期待できます。観察はほぼ一晩中OK。
なお、流星の研究をしている人では、次の7年後の2025年は見えるが今回は、特に多いという予報はないですね。さてどれくらい見られるでしょうね。
10月19日には、日本の水星探査機「みお」が打ち上げ
「みお」、は水星磁気圏探査機MMOの愛称で、ヨーロッパの探査機MPOと2個イチ。まとめてベピ・コロンボ(BepiColombo)計画といって、ESAヨーロッパ宇宙機構のアリアンロケットでの打ち上げですな。水星探査機はこれまでに、1974~1975年のアメリカのマリナー10号、2011~2015年のメッセンジャーの2機しかなく、まだ謎多き、太陽に近い灼熱の惑星のナゾに挑みますのですよ。ちなみにベピ・コロンボは、20世紀のイタリアの数学者で、マリナー10号の軌道計画に貢献したジュゼッペ・コロンボのニックネームでございます。
9~10月のロケット打ち上げなど
これを見ると、まあ、たくさんあるのですが。
9月11日に、日本のH-II Bロケットによる「こうのとり7号」国際宇宙ステーションへの補給機の打ち上げが予定されていますね。日本最大のロケットの打ち上げです。迫力でしょうなー。
10月1日は、NASA60周年でございます。
今年は記念年ということで、コラボグッズがあれや、これやと出ています。
もちろんイベントも、アメリカで、ですが、いろいろです。米国に行かれる機会があれば、ぜひ。
11~12月
11月28日 火星探査機インサイトが火星着陸
アメリカの火星探査機インサイトが、いよいよ火星に着陸です。この探査機は、「火星に温泉があるかをさぐる」…まあ、ざっくりいうと火星がまだ温かい惑星かを調べるのが目的です。
惑星は誕生の時は多数の物質が落下して大きくなる結果、熱くなります。また、岩石の内部には放射性元素があり、これも熱を帯びます。その熱はだんだん宇宙に逃げていくのですが、その過程で地震がおこったり、火山が噴火したり、温泉がわいたりするわけですなー。で、地球はまだ冷えきっていないのは、温泉に入れるから明らかですね。そして、地球とほぼ同じ大きさの金星もごく最近火山が噴火した後が見られるので、これまた内部も熱いことはわかっています。内部があつければ、鉄もとけ、それが自転するので磁場ができるわけです。
が、火星は地球の8分の1しか体積がないので、もう冷え切っちゃってるんじゃねと思われていました。火山もあるけど、もう死んでいる火山だと。磁場もあるんだかないんだかわからない程度だと。そのあたり「温度計つっこんで白黒つける」のがインサイトの仕事なんでございます。ということで火星に温泉あるといいですなー。
12月中旬、早起きすると水星が見やすい
日本の探査機「みお」も向かう水星ですが、太陽のそばにあるため、日が沈んだ直後か、日が昇る直前にしか見られません。そのため、かなり見つけるのが大変です。ほとんど太陽と重なったところにありますからねー。
で、2018年12月14日前後は水星が精いっぱい太陽から離れている時期にあたるんです。夜明け前! の南東の空、明るい木星と一緒に見られますよ。特に23~24日がおすすめ。23日が休日なので、空気も澄んでいますからね。クリスマス前にはサンタさんじゃなく水星もチェック。どんな感じかは、国立天文台の紹介がわかりやすいです。
12月14日には、ふたご座流星群の極大
通常の8倍から10倍増しで流れ星がながれます。夜半までは月明かりにじゃまされますが、まわりが明るい都会だとあまり関係なし。一晩中見えるのがいいところで、夜9時から1時間とか、そういう観察もOKですね。
これはまた、近くなったら記事を書かせてもらおうと思います。
12月16日にウィルタネン彗星の地球接近
今年は火星が6000万kmまで接近して話題になりましたが、12月16日はビルタネン彗星が地球に1000万kmあまりまで接近します。この彗星は直径1.2kmと推定されていて、直径6000kmの火星と比較しちゃーいけませんが、氷でできている彗星が蒸発してホワーと広がり、その分太陽の反射も増えますので、そこそこ見えそうです。
予報では大都会では肉眼では無理で、双眼鏡ならわかるかもの3等級。ふだん、星が100個は見える郊外の住宅地ならギリ肉眼で見えるかなくらいです。1948年に発見され、5.4年周期で太陽をめぐるこの彗星としては、計算上前後100年はない地球接近とのことでございます。オリオン座の東隣りにある、おうし座~ぎょしゃ座を移動していくようです。
11月~12月の宇宙ロケット打ち上げ
インサイトにもってかれそうな感じですが、中国が月探査機「嫦娥四号」を打ち上げ予定です。これは、はじめて月の裏側に着陸させるという意欲的な計画。中継衛星もセットですね。
次の1月にはインドも月探査機「チャンドラヤーン2号」を打ち上げ。これも着陸機が予定されているんですね。
日本もSLIMという月着陸計画はあるんですが、ちょっと遅れているもよう。小惑星に着陸できたのだから、月なんて楽勝…ってわけにはいかんのでしょうね。重力がまったく違いますからね(小惑星ほぼゼロ、月は地球の6分の1)
まあ、月の知識は世界共有されるので、外国の活躍も楽しいですが。身近で日本語をしゃべる科学者や技術者が、月について語ってくれると、やはりワクワクしますし、未来を感じます。応援したいところでございます。
著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。