さまざまな動きが活発化するテレビ市場
IHSの鳥居寿一シニアデイレクターは、テレビ市場について説明した。
2017年はテレビ用大型パネル価格上昇によるセット価格・需要への影響が大きく、価格弾力性の高い中国・北米中心に需要減が続いた。2018年は日本含めて景気回復・株価上昇の継続への期待があり、平昌冬季五輪、ロシアでのサッカーW杯などイベントの開催もあり、少し陽が射すとの景況感が多い。
2017年は、社内にパネル部門を持つ垂直統合型のブランド(中国TCL、シャープ)、グローバルに積極拡大を目指すブランド(中国HiSense)のシェアが上昇。一方、韓国Samsungは利益重視へと舵を切った結果、規模の減小が続き、プレミアムテレビで有機ELを打ち出すソニーや韓国LG Electronicsと競合したほか、セカンドおよびサードTierブランド(HiSense・TCL以外の中国ブランド、米国Vizio)は中国市場の低成長もあり当面厳しい状況が続くという。
また、有機ELテレビは、2017年にブランド数の増大、画質の向上、差別化仕様・デザインの登場によりプレミアムテレビとして一定の地位を確保したと言えるが、2019年以降の生産能力の拡大、第10.5世代ラインへの投資、新技術開発、韓国LG Display以外のパネルメーカーの参入の有無など普及への課題も残るという。
加えて、8Kテレビの立ち上がりは緩やかで2018年後半以降、有機EL対抗でSamsungやシャープが製品を市場投入することが見込まれるが、それについては注視を要するという。日本での放送を除けば8Kのコンテンツは2020年までほとんど無いためで、あまり需要の増加を急ぐと不必要に価格を下げ、プレミアムテレビのポジションと相反する動きとなる懸念があるとした。
結果として、2018年は、中国BOEの第10.5世代ラインでの量産開始、2017年末に韓国政府からの認可を受けたLG Displayによる中国での第8.5世代有機EL工場に対する動きなど、いろいろな面で目の離せない1年になるという。
用途に応じた対応が求められるパブリックディスプレイ市場
IHSの氷室英利ディレクターは、パブリックディスプレイ市場は堅調に拡大しており、ディスプレイメーカー以外の企業参入、中国市場の拡大、中国メーカー動向など引き続き注目を要するとしたほか、LCD対LEDなど異デバイス間の競合状況も注視していく必要性や、中国メーカーの動きが速い点にも注意が必要とした。
用途別では、店舗に設置するサイネージが中心だが、今後は付加価値モデルを中心に交通(耐久性、保守性)、文教(低価格IFP)、企業の会議室(高機能IFP)の需要が加速的に拡大することが期待されるとする。そのため、セットブランドは今後、用途や目的により「適材適所」の最適ソリューション提案力、製品ラインアップの整備が求められるとした。
デスクトップモニタ市場は新たな価値を見出せるか?
また、氷室氏は、デスクトップモニタ市場の動向にも言及。各メーカーは、大型化、高解像度化、色度域拡大、HDR、ゲーミング、カーブド(曲面)、スリムボーダーなど高付加価値製品に向かっていることを指摘。表示する情報のうち、静止画であれば表示色域の拡大が必須要件となっていくとしたほか、ゲーム用途やストリーミング視聴といった動画の占める割合が今後ますます増加するとし、そうしたニーズに対応するために、性能としてはテレビを追随する形となり、HDR10互換・準拠などの動画対応仕様を多く盛り込んでいくとの見通しを示した。
さらに、高付加価値化に伴い、新しい需要の創出と買い替えサイクルの短縮が期待されるとしたほか、2020年のWindows7、企業系ではWindows 2008サーバのサポート終了に向けた需要の盛り上がりも買い替え喚起の機会となると指摘し、次の需要ピークは2019年になるとした。
なお、同氏は、モニタの本分は、「受信した映像信号を正しく表示すること」であるとしつつも、今後は単純な「デスクトップPC用の画面」から脱却し、ノートPCやタブレット、スマホなど多様な映像ホストに接続する機会が増え、さらにモバイルデバイスにできない大画面(単体の大画面のみならず2画面以上のマルチディスプレイ含む)、高解像度といった新たな価値が、モニタ需要を再拡大させるポテンシャルになるともしていた。
(次回は2月6日に掲載します)