英Omdia主催の「第40回ディスプレイ産業フォーラム」が2021年1月末にバーチャル形式で開催された。従来は、Omdia(元IHS Markit)所属の日台韓中駐在FPDアナリストを集めて年2回開催してきたが、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う渡航制限や三密回避のため前回(2020年夏)からバーチャルオンデマンド形式で開催されるようになった。
フォーラムの冒頭、OmdiaのFPD技術担当アナリストであるCharles Annis氏(日本駐在)が恒例のFPD産業天気予報を示し、「FPD業界にとって、 2019年はひどい年だった。 2020年は最も変化の激しい年だった。そして2021年はディスプレイ業界のほぼすべてのセグメントにとって史上最高の年になると予測されている。ただし例外的に製造設備投資は大型投資のはざまで雨模様だが、2022年には投資再開で回復する」と述べた。
このほか、Annis氏は以下のような8点を指摘した。
- 新型コロナウイルスよって強制された在宅ライフスタイルは、少なくとも当面の間、FPDパネルの相対的な価値を高めることになる。つまり、FPD業界は巣ごもり需要の恩恵を受ける。
- 2020年下半期、供給は非常にタイトだったが、2021年には需給とも成長すると予測されており、よりバランスの取れた市場に向かう。ただし、特にドライバICの場合、材料とコンポーネント不足が依然として問題である。材料供給不足の問題は現在、パネル価格を押し上げており、需要の伸びをある程度制限している。
- 2021年、FPD機器市場は、現在の需要の急増から恩恵を受けると予想されている。2022年と2023年の見通しは有望である。
- ITパネルを対象とした大規模な新しいIPS LCD工場を建設するという、中ChinaStarのこれまで予想されていなかった計画は歓迎すべき展開である。
- ITアプリケーション用の有機EL(OLED)生産能力は、2022年から段階的に拡張する。RGB蒸着OLEDを完全なGen6またはGen8.5(TFT)/Half Gen8.5フロントプレーンに拡大することを長期的に検討することでさらに上向きに推移するだろう。
- 2022年の見通しは明確ではないが、主要な業界指標は、現在、市場が健全なままである可能性が高いことを示唆している。
- 主なリスクは、パンデミック後の需要の減少であり、人々は以前のライフスタイルに戻るということである。
- 家庭や電子機器への支出を優先する一種の「ニューノーマル」が期待できる。より優れたOLEDや、ミニ/マイクロLEDなどの他の新しい「ハイエンド」FPDテクノロジーも需要増加が期待できる。
Omdiaが選んだFPD産業の10大トピックス
OmdiaのFPDシニア調査ディレクタのDavid Hsieh氏は、2020~2021年のFPDの10大トピックスとして以下の10項目を挙げて今後の動向を予測した。
- ディスプレイ面積需要:新型コロナウイルス感染症の終息後、V字回復し2021年には前年比6%増が予測される。
- 中国のFPD製造:急速に製造拡大が続いており、2025年に中国のTFT LCDの世界シェアは74%、OLEDは47%に達する。
- 韓国TFT LCD生産能力再構築:2021年上半期ではなく下半期に影響が出る。
- 大面積ディスプレイ:2021年の要求の伸びは前年比6%増、生産能力の伸びは同8%で、2021年後半には供給需要が心配である。
- ITパネル:2021年に6億8000万枚に達し、仕様がアップグレードされ、新たな技術が登場する。
- 新たなFPD技術の登場:2025年にTVディスプレイの30%をハイエンド製品が占める。ミニLEDバックライト、QLED、QD OLED、QNED、WOLEDそして マイクロLEDなどが次々登場する。
- スマートフォン用ディスプレイ:2021年にOLEDが4割を占める。
- 中国のOLED:Appleの品質認証を受けて中国のスマートフォン用OLED出荷は2021年に1億枚を超えるが、中国のOLED市場自体はまだ低調。稼働率は低く製造歩留まりも低い。
- AMOLEDの発展:2025年までにAMOLEDディスプレイの売上高は480億ドルに達するが、短期的には信頼性とコストが課題である。
- FPD業界の再編:韓国メーカーのLCD生産からの撤退後、韓中で業界再編が生じ、新たな協業や買収により、トップ5社による市場シェアは2022年に76.4%に達する。LCDファブ拡張は2022年から始まる。