近年、ビジネスシーンで「デザイン思考」というフレーズが多く見られる。これは、デザイナーの思考法を取り入れ、ブレインストーミングによるニーズの洗い出し、プロトタイプの開発、ユーザーを交えたフィールドワークといった3つのフェーズを柔軟に行き来して、新規性のあるモノ・コトを作っていく手法を指す。
世界的なデザインエージェンシー・IDEOがフレームワーク化したこともあって、日本企業の中にも取り入れているところは増えてきている。しかしながら、大きなうねりになっているとは言えず、「自社では/自分の業界では耳にしない」という人もいるかと思われる。
前回、クリエイティブエージェンシーのロフトワークでは「デザイン思考」という言葉を掲げた活動を行っていない理由について聞いた。引き続き、棚橋弘季氏と渡部晋也氏に、いま同社と協業する企業の傾向を聞いていく。
――「デザイン思考」という言葉を掲げるかどうかは別として、近年、フィールドワークやブレインストーミングを含む、ユーザー理解をベースとしたアプローチを取り入れる企業は増えてきているのでしょうか?
棚橋: 増えています。僕らがいっしょに共創活動をしている企業の方々は、僕らのパートナーであるクリエイターの方々を交えてブレインストーミングを行ったり、商品の潜在的なユーザーとなりうる人を集めてワークショップをしたりといった活動をプロジェクトに普通に取り入れるようになっています。4年前くらいからやり始めて、今はかなり定着してきた感があります。
「ワークショップを交えた取り組みだから、ロフトワークとやると面白いだろう」、とお声がけくださる企業もあったりしますね。そういう意味で部分的にデザイン思考のメソッドを取り入れているのは確かです。
――どういった部門の方からのオファーが多いのでしょうか。
棚橋: 研究開発部門の方からのお声がけが多いです。そもそも「今すぐ売れる何か」を作るのでは無く、未来の新しい価値を生みだすことをミッションとしているような方々です。
業態としては、BtoCもBtoBも両方ありますね。BtoCは成果物が見えやすくはありますが、根底にあるのはユーザーを中心にする考え方だったりするので、むしろお客様と直接接する機会も多いBtoBのほうが声がけいただくことが多いと思います。
従来は技術ありきで、「こういう技術があるから新しいものを作ろう」という流れでメーカーは開発を行っていました。でも、今はそれだけでは難しくなっている。そこで「ユーザー主導、ニーズ主導」の開発にシフトしようとしている。そこにデザイン思考を取り入れているというのが一つの流れですね。
――御社と共同でプロジェクトに取り組まれている企業に関して、業種などの傾向はありますか?
棚橋: 僕らとかねてから縁のある企業というのが、比較的メーカーが多いんです。その意味での偏りはあります。