今回の税制改正で、キャッシュレス決済で受領できるデジタル明細を適切に保存することで、領収書を受領しなくてもよくなったことについて、前回説明しました。
第2回では、実際のデジタル明細の例と、経費精算分野において、どのようなキャッシュレス決済手段があり、それらのデジタル明細をどのように保存すれば法的な要件を満たすのかについて説明します。
加えて、それぞれのキャッシュレス決済手段が、どのような場面で利用されるかの想定についてもご紹介します。
キャッシュレス決済におけるデジタル明細の例
これまでの企業におけるキャッシュレス決済の代表例は、コーポレートカードおよび交通系ICカードでしょう。多くの弊社製品の顧客企業でも、コーポレートカードを導入しています。特に近年目立つのは、一部の役職者だけではなく全従業員に配布するケースが増えてきたことです。
交通系ICカードについては、ご存知の通り電車やバスに乗る際によく用いられますが、首都圏においてタクシーの初乗りが1kmになった頃から、タクシーの支払いでも利用されるケースが増えました。
これらのキャッシュレス決済の利用が増えてきた理由の一つには、利用後のデジタル明細が経費精算システムに連携しやすくなったことが挙げられます。
では、実際にどのようにデジタル明細が連携されるのかについて、弊社製品であるConcur Expenseの画面の例を見てみましょう。
図1は、Concur Expenseと連携するコーポレートカードを利用した際に送信される明細の画面です。ここには、領収書に記載されるべき項目である、日付、金額、および支払先の3つが書かれています。
また前回説明した通り、連携されるデジタル明細により領収書の受領を不要とするためには、「訂正・削除を行うことができないこと」もしくは「訂正・削除した場合、その履歴を残しておき、確認できること」のいずれかの要件を満たしている必要があります。
では、それがシステム上、どのように対応するのかの例も見てみます。
図2は、Concur Expenseに連携されたデジタル明細の値を用いて行う経費精算の画面です。
この画面では少々わかりにくいですが、「取引日(=日付)」「金額」「支払先」の3つの項目が、編集できないようになっています。これは、クレジットカード会社からデジタル明細が従業員個人のアカウントに連携された時点で、すでにこのように「訂正・削除ができない」状態になって保存されているためです。
これにより、電子帳簿保存法で規定する要件(第8条第1項)を満たすため、別途領収書を受領してくる必要がなくなります。加えて、以下のようなメリットも生まれます。
・金額や日付を操作するような不正を行うことができなくなる
・経理部門において確認する際も、クレジットカード会社から送られる値であるため、ダブルチェックが不要になる
つまり、これが「キャッシュレス=ペーパーレス」と呼んでいる所以であり、従来の「電子化」である、「紙の領収書やレシートを受領して、スマートフォンで撮影し、タイムスタンプを付与する」といった作業も不要になりました。
経費精算システムと連携しているキャッシュレス決済手段にて支払うことで、経費精算を行う従業員だけではなく、経理部門においても業務が格段に楽になります。
では、経費の立替払いを行えるキャッシュレス決済の種類や、実際に利用されるシーンにはどのようなものがあるのかについて説明します。
「ビジネスキャッシュレス」の今
最近では、経費精算にて利用できるキャッシュレス決済を「ビジネスキャッシュレス」と呼んでいます。ここでは、Concur Expenseと連携するキャッシュレス決済を例にとり、実際に利用されるシーンについて説明します。
①コーポレートカード
前述の通り、コーポレートカードは弊社顧客企業の多くで利用されています。利用シーンの多くに共通するキーワードとしては、利用金額が「比較的高額」であるということです。
例えば宿泊代や新幹線・航空券代や、高額な接待交際費などで用いられるケースが多くみられます。
コーポレートカードの支払方法には「個人決済型」と「会社決済型」の2種類があります。個人決済型は個人口座、会社決済型は法人口座から利用金額が引き落とされます。
前者の場合は従業員による通常の立替払いになるため、デジタル明細を活用して領収書受領が不要になれば経費精算の簡略化に大いに役立ちます。
後者の場合は、クレジットカード会社から別途送られる請求書の内容と、個々の従業員が利用した際に連携されるデジタル明細を活用することで、経理部門における照合や消込をしやすくなる、というメリットもあります。
②交通系ICカード
Suicaに代表される交通系ICカードは、もはや多くのビジネスマンにはなくてはならないキャッシュレス決済手段と言えるでしょう。電車やバスでの利用だけではなく、前述のようにタクシー乗車の際の料金の支払いや、最近ではコインパーキングの精算機でも利用可能なところが増えています。
これら交通系ICカードの利用履歴は、近年ではICカードリーダーにタッチすることで、ICカード内に保存されている、上限20件までの履歴データを読み取ることが可能です。しかしながら、これらのデータのうち、電車・バス以外のデータ、すなわちタクシーやコインパーキング、その他商品購入などのデータについては、「支払先」の情報はICカード内に保存されていないため、読み取ることができませんので注意が必要です。
弊社ではJR東日本と連携し、Suicaの利用履歴データを直接連携するサービスの実験を行いました。これにより、電車・バス以外の利用でも支払先を受領でき、デジタル明細として活用可能になります。
現在商用化に向けて準備をしております。
③QRコード決済
PayPayに代表される、スマートフォンアプリでのキャッシュレス決済です。近年急速に加盟店を拡大しており、クレジットカードや交通系ICカードを利用できる店舗等でも、QRコード決済にて支払うことが可能になってきました。
弊社では、PayPayとの連携をすでに開始しており、PayPayで支払った履歴の中から、経費精算として連携したいものを選択し、図3にある「レシート登録・経費申請する」をタップすることで、Concur Expenseに連携することが可能です。
ちょっとした買い物だけでなく、今後の加盟店の拡大状況によっては幅広いシーンでの活用が期待できます。
以上が、実際にキャッシュレス決済を利用した際にデジタル明細の連携、法的に対応するために必要な保存方法、およびビジネスキャッシュレスの利用シーンの例です。
次回第3回では、6月末に国税庁から発表になった電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】について、特に重要な問と回答について説明します。