こんにちは。織田隼人です。
前回は「決める技術」をテーマに、「重要な決断は朝一番で行おう」というお話をさせていただきました。現代の社会人は、勤務時間のほとんどをメールのやりとりに費やすようになってきています。しかし、重要な決断を行う際には、メールに書かれている情報はノイズとなり、決断の精度を鈍らせる可能性が高いのです。朝一番にメールをチェックするという習慣から抜け出すのはなかなか大変かもしれませんが、騙されたと思って数日続けてみてください。優先してこなすべき作業の質がぐっと高まりますよ。
さて、今回は「決めさせる技術」、すなわちマーケティングの技術にテーマを戻します。今回は、購入後に満足感を覚えてもらうためにはどうすればいいか - 男性向け商品と女性向け商品の設計方法の違いについて解説していきます。
「希少価値」に惹かれる男性
さて、男性読者の皆さんにお伺いします。
最近、何かを買うことで満足感を覚えた経験はありますか?
車や家、パソコンなどの高額商品を買った人、あるいは、自分の趣味にお金を使った人は「はい」と答えるでしょう。そうでない場合は、「いいえ」と答える人が多いのではないでしょうか。
男性が満足感を得ることのできる買い物の性質が、上記の質問に凝縮されています。
苦労して集めた限定品も、価値がわからない輩にはただのコーヒー缶… |
男性は、単にものを購入するだけでは満足感を得られません。日用品の買い物など、細かな買い物自体は、男性にとって「必要だから行うけれども、それ自体が楽しい作業ではない」と認識されます。スーパーに行けばいつでも陳列されている食品のように、買おうと思えばいつでも買えるものは、男性に満足してもらえる商品にはなり得ません。男性が重視するのは、手に入れるまでにそれなりの苦労を要する商品なのです。
たとえば、男性ファンの多いアニメ業界の商法を見てみましょう。あらゆる商品に「数量限定」や「店舗別特典」の文字を見つけることができます。これは、あえて特典を手に入れにくくすることで、男性の購入意欲を喚起させ、購入後に満足感を覚えてもらおうという手法です。そのプロセスを経て数量限定の商品を購入した男性は、「ほかのファンに先立って数量限定の商品を手に入れた自分」を維持するために「次も」買おうという好循環に陥ってくれますから、次の生産数の目安にもなります。
このように、男性向けの商品は「あえて、手に入れるために努力を要する」売り方をすることで、顧客に満足感を与えることができ、息の長い商品にすることができます。
「積み重ね」の女性
では、前の項と同じ質問を、女性の皆さんにも伺ってみましょう。
最近、何かを買うことで満足感を覚えた経験はありますか?
おそらく、女性の皆さんはたくさんの記憶が想起されることになると思います。なぜなら、女性は買い物自体を楽しんでいるからです。
女性の買い物で最も重要な要素は、「何を買うか」ではありません。もちろん、個々人の趣味や気分によって買いたいもの、買っても満足できないものはあるでしょう。しかし、女性の買い物の特徴は、日用品の買い物などでもそれなりに楽しめるところにあります。
デパートに行くと、楽しそうに買い物をしている女性グループを目にすることが多いと思います。彼女たちは次から次へと店を変え、品を変えては、買い物を繰り返していきます。
女性にとっての「満足できる買い物」の要素には「量」、つまり買い物の回数が含まれています。男性は一点豪華主義になるのに対して、女性は質もさることながら、何度も購入するという「購入体験」によって満足を得ているのです。
質のほかに「量」を重視する女性は、小さな幸せの積み重ねによって、その総和以上の満足を得る傾向にありますから、「ショッピング」という行為を一度きりで終わらせてしまうと、「今日の買い物はあっさり終わってしまったな」という印象を持たれてしまい、購買欲を満たすことができません。
つまり、女性向け商品は、男性向け商品のように入手の難しさを前面に押し出すよりも、いくつも変える、というように商品の組み合わせを作り上げた方が商品への印象が良くなります。女性は「苦労して買った一品」ではなく、「楽しかった買い物」の中で購入できた「ワン・オブ・ゼム」のほうに満足感を覚えるのです。
「マメな男がモテる」という格言があります。これは、小さな幸せを積み重ねられる男性の方が、女性にとっては好意的に映るということの証左ですね。
男女の違いを意識した商品作りを
男性と女性では、どのような商品に満足感を覚えるのか、という傾向に大きな違いがあります。満足できる買い物ができた人間は、その後も同じ商品に対して好意的な感想を広めてくれます。商品を購入するという「決断」に対して、男女の心理の違いを理解したマーケティングは不可欠なのです。
女性へのプレゼント、とくに高価なモノは、一緒にショッピングへ行って買おう。こっそり買って驚かせても、それが喜びにつながるとは限らない |
(イラスト ナバタメ・カズタカ)
執筆者プロフィール
織田隼人 (ODA Hayato)
心理コーディネーター&経営コンサルタント。心理についての解説の仕事をメインにしながら、経営のコンサルティング業務も行っている。元々は経営コンサルがメインで、マーケティングに関わりながら心理学を学んできた。心理の仕事では特に「男女の心理の違い」や「意思決定」を専門としている。男女の心理の違いを解説したブログに「男心と女心」があり、月間アクセス数は100万を超える。ほかにも心理学を学べるWebラジオやアニメーションも配信している。Webサイトはこちら → 知りたい! 相手の気持ち