みなさんこんにちは。織田隼人です。
前回は「決めさせる技術」をテーマに、「男女の視野の違いを活かしたマーケティング」の方法を紹介しました。ジェンダーフリーが叫ばれている昨今ですが、だからこそ男女の生物学的/文化的な差異から生まれる心理の違いを理解して、仕事に活かしていきたいですね。
さて、今回は会社の内部に目を向けてみましょう。今や、誰もが異性の上司/部下と日常的に接しなければいけない時代です。彼ら/彼女らと上手に付き合っていくにはどうすればいいのでしょうか? 今回は「男女の会話の違いを知って、仕事上のやりとりをスムーズにする方法」をテーマにしてみようと思います。「異性と一緒に仕事をするときのコツ」や「自分の行動のうち、異性になじみの薄い部分はどこか」を知るつもりで読んでみてください。
女性社員へは「結論」をうまく引き出す会話を
男性の方は、女性の部下の話を聞いていて「どうしてこんなに回りくどい話し方をするのだろう」と思ったことはありませんか? 雑談であれば気にならないかもしれませんが、一刻を争うような仕事の最中にそのような話し方をされると、イライラしてしまう場合もあるかもしれません。
だからといって結論を急かすのは逆効果です。女性の話は、相手にわかってもらえていないと感じるほどディテールの部分が増える傾向があり、余計に話が長くなってしまうからです。
女性の話が長いのは、彼女らが「話しながら考える」ことのできる能力を持っているからです。男性は基本的に脳内で情報を整理してから口を開きますが、女性は口を開いてからストーリーを組み立てていくのです。そのため、必然的に結論は最後の部分に来ることになり、男性に回りくどい印象を与えるのです。
このようなときは、第一に女性の話にしっかりと耳を傾けてあげましょう。話を理解している姿勢を見せれば見せるほど、女性の話は円滑になり、結果的に結論へ早くたどり着くことができます。
あるいは、最初の発問で結論を答えさせるような尋ね方をするのも効果的です。「社員旅行の件はどうなった?」のように、ストーリーを求めるような尋ね方ではなく、「社員旅行の宿は予約できた?」のように、より具体的に、自分の欲しい情報だけを得られるような質問をするのがコツです。
また、女性の方であれば、男性に報告する前に結論をまとめておくことをお勧めします。同僚の女性と予め話しておく、パソコンでストーリーを作ってみるといった方法を用いて、男性への報告の場では結論から話せるような準備を整えておくと、会話がスムーズに進みます。
男性社員には「沈黙の時間」を与えよう
逆に、男性社員と話す際に女性が注意すべき部分はどこでしょうか? この問いに対する答えを考える際は、先に書いた「女性は話しながら考える、男性は考えてから話す」という特徴がヒントになります。
話しながら考えることのできる女性同士の会話には、基本的に「切れ目」がありません。女性は共感能力にも長けているので、相手の話が終わる前に自分が結論を予想して口を開くことさえできます。これは、女性同士の会話の場合には非常に心地いい流れなのですが、男性にとってこの女性の会話のテンポは非常に大きなストレスになります。
男性の発言には、原則として「沈黙」が必要です。男性/女性にかかわらず、会話のやりとりは
- 相手の話を聞く
- それを受けて自分の答えを考える
- 自分が話をする
というプロセスに基づいていますが、女性が2と3を同時に行えるのに対して、男性は2と3を順序立てて行う必要があります。つまり、2を行っている間、男性は沈黙して考える必要があるのです。
ところが、女性は会話の最中に沈黙が挟まることを苦手としています。自分が話したあとに相手が黙ってしまうと、「あれ、私何かまずいことを言ったかしら」と不安に駆られてしまうのです。
女性の方は、男性社員と話す際は「沈黙の時間ができること」を前提としておくと、気が楽になります。多くの場合、その時間は男性が考えをまとめるのに必要な時間なのであって、自身の失言のせいではないわけです。これを知らないで、「で、どうなんですか?」とまくし立ててしまうと、男性社員は考えをまとめきれずに、ストレスを感じてしまいます。
女性が多い職場での会議では、往々にして女性ばかりが話すという展開が生まれがちです。これは女性同士の会話のテンポに従って会議が進むからで、男性が沈黙して考えているうちに、別の女性が話し始めてしまうことに由来します。男性社員の意見が欲しい場合は、「○○君はどう思う?」のように、名指しして意見を求めてあげると、男性は発言しやすくなります。
今回は、「男女の会話の違い」から、異性の上司/同僚/部下とストレスなく付き合っていくための方法を紹介しました。「女性は話しながら考える、男性は考えてから話す」という特徴を知っておくことで、不要なストレスを抱え込まないようにしていきたいですね。
ランチタイムに女性が2人以上あつまれば、そこはもう男子禁制の世界。機関銃の連射のように交わされる会話のスピードとテンポに、男性がついていくことはまず無理。オフィスで会話するときは、男女の会話の違いを意識しておくと、お互いにストレスを抱えなくてすみそうだ |
(イラスト ナバタメ・カズタカ)
執筆者プロフィール
織田隼人 (ODA Hayato)
心理コーディネーター&経営コンサルタント。心理についての解説の仕事をメインにしながら、経営のコンサルティング業務も行っている。元々は経営コンサルがメインで、マーケティングに関わりながら心理学を学んできた。心理の仕事では特に「男女の心理の違い」や「意思決定」を専門としている。男女の心理の違いを解説したブログに「男心と女心」があり、月間アクセス数は100万を超える。ほかにも心理学を学べるWebラジオやアニメーションも配信している。Webサイトはこちら → 知りたい! 相手の気持ち