エンタープライズデータの統合分析のための論理DWH

前回、ビッグデータ時代の到来により、データウェアハウスとデータレイクによるデータ・アーキテクチャにおいて、スケーラビリティ、データレイテンシ、コストにまつわる課題が生じ始めたと説明しました。そこで、登場したのが論理DWHです。これは、Gartnerによって最初に表されたものですが、業務アプリケーションとデータソースとの間に据えられたセマンティックレイヤーのことで、エンタープライズDWHも含まれます。

このセマンティックレイヤーはインタープリターとして機能して、業務アプリケーションが任意のデータソースと通信できるようにします。このため、論理DWHはその下の物理アーキテクチャを統合し、すべてのエンタープライズデータを統合分析に利用できるようにします。論理DWHには実際のデータは含まれておらず、各ソースにアクセスするためのインテリジェンスのみが含まれています。

論理DWH構築のためのデータ仮想化

論理DWHを構築する上でカギとなるテクノロジの1つがデータ仮想化です。データ仮想化は最新のデータ統合手法です。データ仮想化では、データを中央のリポジトリに複製するのではなく、複数の異種システムに存在するデータの統合ビューを提供します。データ仮想化ソリューションでは、エンタープライズデータアクセスレイヤーを確立して、すべての組織のデータソースを誰もが利用できるようにします。

データ仮想化レイヤーの実装方法に応じて、企業は、エンタープライズDWHだけでなく、その他のデータソース(リレーショナルデータベースやデータレイクなど)も含む論理DWHを作成できます。データ仮想化によって、エンタープライズデータに、1つの場所にすべてがそろっているかのようにアクセスできるようになり、論理DWHに物理DWHのような姿形が与えられると同時に、エンタープライズデータの統一的な分析が可能になります。これは、長い間データ統合テクノロジーの最終目標とされてきたことです。

  • 「データ仮想化」の進化

Logitechはデータ仮想化で何を実現したのか?

Logitechの急増する製品ラインは、同社におけるビジネスレポートの性質を一新させました。

ビジネスユーザーが必要としていたのは、小売サイトでの価格違反、テキストマイニング、ソーシャルメディアやゲーミングWebサイトでのLogitech製品に対するセンチメント分析、需要予測、販売チャネル管理、その他の領域に関連する問題の答えを見つけることです。

同社はERP、POS、DRM、MDMシステムなど複数のオンプレミス・システムにデータが閉じ込められることによって生じる、断片化した分析の問題も抱えていました。さらに、Logitechは近年、製品の垂直展開を強化するため一連の企業を買収しましたが、買収した企業のデータがエンタープライズ規模の最終レポートにまったく反映されず、経営トップはビジネスの全体像を描くことができずにいました。

Logitechでは、ビジネスユーザーが高度な分析を簡単に実行できるだけでなく、データをサイロから解き放ち、パフォーマンスを犠牲にすることなくエンタープライズ規模のレポートや分析でこうしたデータを使えるようにしながら、TCO (総所有コスト)も低く抑えることができるような、ツールに依存しないプラットフォームを必要としていました。こうした目標を達成するために、Logitechは、オンプレミスシステムの主要部分をクラウドに移行する計画を立てました。

データ仮想化は、クラウドへの移行を可能にしただけでなく、これをライブマイグレーションとして実現し、ビジネス運用に対する影響を最小限に抑えました。この結果、Logitechではビジネスの継続性に何の影響も与えずに、Amazon Redshift から Snowflake に移ることができました。

さらにLogitech は、分析も加速化させています。Denodoプラットフォームを実装する前、毎週の需要予測プログラムの実行(Rと Oracle Exadata の組み合わせで実行)に3日間かかっていましたが、実装後はわずか数時間に短縮されました。

また、EUの一般データ保護規則(GDPR)やその他の地域のデータ保護法の適用が進むにつれ、Logitech ではクロスセルおよびアップセルの機会に関する消費者データの使用方法を再検討する必要が生じました。ここでもLogitech では、データ仮想化によって、マスターデータ管理(MDM)ソリューションを作成し、消費者のオプトイン/オプトアウトをエンタープライズレベルで一元的に管理することが可能になりました。

未来に向かって

ビジネスインテリジェンスの始まりから、データ分析は長い道のりをたどってきました。

ビジネスの未来に向かって進んでいくために、企業は自社のデータ・インフラストラクチャにデータ仮想化機能を備えた論理DWHを加えることを真摯に検討する必要があります。これによって、従来型のデータウェアハウスとレガシーのデータベースを完全にサポートしながら、データ仮想化ソリューションの最新機能すべてのメリットを享受できます。

次回は、デジタルトランスフォーメーションとデータ仮想化について見ていきます。

著者プロフィール

Denodo Technologies 最高マーケティング責任者 Ravi Shankar(ラヴィ・シャンカール)


製品マーケティング、需要創出、コミュニケーション、パートナーマーケティングを含むDenodoのグローバルマーケティング活動の責任者。カリフォルニア大学バークレー校のハースビジネススクールでMBAを取得した後、OracleやInformaticaなどのエンタープライズソフトウェアリーダーから、25年を超えるマーケティングリーダーシップの実績を持っている。