データ連携の強い味方「DataSpider Servista(以下、DataSpider)」の特徴や機能については、前回、前々回で紹介した通りだ。今回は、DataSpiderの生みの親、株式会社アプレッソの代表取締役副社長CTOの小野和俊氏とユーザー企業の対談をお届けする。

ユーザー企業の代表として登場するのは、本サイトを運営する株式会社マイナビの情報システム部門を束ねる薄井照丈氏だ。同社は、BIツールを活用するための社内システムのデータ連携基盤として、2010年12月にDataSpiderを導入した。年が明けてから具体的な開発に取り掛かり、2011年4月と7月に営業部門向けのシステムをリリースした。開発したスクリプトは、大きなものから小さなものまで57本。DataSpider導入の決め手や、実際に製品を使ってみた印象、今後の展望について話が及んだ。

抜群の使いやすさを実現した驚きの方法とは?


小野 : まず、DataSpiderを導入された決め手と、他にどのような製品を検討されたかをお聞かせください。

マイナビ 薄井照丈氏

薄井 : 選定の候補は、DataSpiderを入れて5つです。国産とアメリカ製のデータ連携ソフトを1つずつと、ETL(Extract, Transform, Load)寄りの製品を2つ検討しました。これらの製品を次の3つのポイントで比較しました。

1つ目が開発のしやすさです。弊社はユーザー企業ですので、プログラマをたくさん抱えているわけではありません。プログラミング能力に長けていないメンバーでも十分に使えるツールが必要でした。その点、DataSpiderは直感的で分かりやすいユーザー・インタフェースで、弊社のメンバーでも十分に使いこなせると判断しました。

2つ目が、スモールスタートが可能なライセンス体系です。弊社はシステム化投資が抑制傾向にあり、大規模なシステムを導入することはできませんでした。DataSpider は、1CPUから始められて、他システムとつなぐアダプタも必要に応じて買い足していけばいいライセンス体系で、弊社の状況にぴったり合うものでした。

3つ目が、BIツールとの接続性の良さです。データ連携ツールが必要になったのは、BIツールを社員に提供するためです。BIツールにDr.Sumを使うことは先に決まっていたので、Dr.Sumとの接続性を詳しく調べてみると、DataSpiderのアダプタは、実にきめ細やかに作られていることが分かりました。さすが、国産のソフトウェアベンダーだと思いました。

以上の比較のポイントがそのまま決め手になって、DataSpiderを導入することにしました。

アプレッソ 代表取締役副社長CTOの小野和俊氏

小野 : ありがとうございます。お答えくださったことはどれも、弊社が力を入れているポイントです。そこをご理解いただけて非常に嬉しく思います。

最近のITシステムはアジャイルに開発していくことが求められています。それには、現場のニーズを把握している人が自分で作るのが一番早いわけです。プログラミングはできないけれど、作りたいものははっきりしている。そういう人や企業を支援するツールを届けたいと思っていました。そこをご評価いただいて本当に嬉しく思います。

「ソフトウェアは誰のためのものか?」という議論があります。ソフトウェアは使う人のためにあるというのが弊社の考えですが、そうは言っても、どう作るのが使う人にとって一番いいのかは、開発者ごとに基準がまちまちになりがちです。

そこで弊社は、DataSpiderの開発にあたって具体的な「ペルソナ」を設定しました。それも漠然とユーザー属性を定義するだけではなくて、そのユーザーの顔写真や履歴書まで用意して、徹底的にユーザーの人格を作り上げました。「神尾美香さん」という名の、IT系の会社に入社して2年目の文系出身社員です。ソフトウェアをどう作るか、エンジニア同士の議論になった際には、「神尾美香さんがストレスなく使えるかどうか?」を判断の基準にしています。神尾さんに代弁してもらう形で、使いやすいソフトウェアを追求してきました。

また、DataSpidereのようなデータ連携ツールは、きちんとつながってこそ意味があります。ところが、この世界では「いろんな製品とつながると聞いていたのに、導入してみたら国産ソフトとまともにつながらない」という悲劇をよく耳にします。弊社は国産ベンダーとして、グローバルに使われている製品とつながるのはもちろんですが、Dr.SumやHULFTなどの国産製品ともきちんとつながるソフトウェアを提供したいと思っています。

「代表取締役プログラマ」のこだわりとは?


小野 : 実際にDataSpiderをお使いになられての印象はいかがでしょうか?

薄井 : インストールが簡単で非常に助かりました。コストを抑えるため、インストール支援サービスをお願いせずに弊社でセットアップを行いましたが、とりあえず動かすところまでスムーズに辿り着けました。スクリプトを作る段階で苦労するのは覚悟していましたが、その前のインストールで躓いてしまうと、実際使ってみるモチベーションが削がれてしまいます。インストールに力を使わずに済んだのは大きなポイントでした。

小野 : この手のソフトウェアは、「簡単なことを簡単にできる」というのがポイントだと思っています。それを可能にしてくれたのも「神尾美香さん」なんです。「ペルソナ/シナリオ法」という開発手法にもとづいて、ペルソナがどういう流れで操作するか、神尾美香さんだったらどこに躓くのかを徹底的に検証しました。パッケージの封を切ってからインストール完了まで5分、IPアドレスやCPUの構成を調べて入力するような操作はさせない、という目標を立て、<次へ>ボタンとラジオボタンとコンボボックスだけでインストールできるように作りました。

薄井 : 使いやすさにそこまでこだわられていらっしゃるんですね。今の話ともつながると思うのですが、Dr.Sumとの接続性の高さが想像していた以上の出来栄えで驚きました。特に、スクリプトからDr.Sumの機能を呼び出せるのが非常に便利で、実際の業務で使わせていただいています。

小野 : 「アダプタがあります」という言葉には気を付ける必要があると思います。アダプタには、ただつなぐだけのシンプルなものから、細かいことができるネイティブなものまで非常に幅があるからです。マーケティングメッセージとしてはアダプタの種類が多い方が耳触りはいいんですが、完成度が低いものを見栄えのために並べても、現場の人にとってはあまり意味がありません。

私自身がプログラマ出身、というか、今でも業務時間の半分ぐらいはプログラミングをしている「代表取締役プログラマ」なんです。実のところプログラマは、何でも「自分で作るのが早い」と思う人が大半です。C言語のライブラリやデータベースについても「自分で作った方が早い」と言っていた人もいたほどです。

弊社は、そういうプログラマの視点から見ても便利なツールを提供したいと思っています。現場の生産性が上がることに一番重きを置いています。アダプタも、数をとりあえず揃えるのではなくて、きちんとつながって、やりたいことが簡単に実現できるものを今後も提供していきたいと思っています。

使えば使うほど費用対効果が高くなるDataSpider


薄井 : まさに現場の開発効率が上がって大いに助かっています。データ整形などの細々した用途にもDataSpiderを使わせていただいていて、ExcelやAccessを使って手作業で1週間くらいかかっていたものが3日で済むようになりました。データ整形は、単純なようで、やってみると意外にうまくいかないことが多くて苦労していました。DataSpiderはスクリプトで手順を書けるので、やり直しも簡単で非常に助かっています。

とにかく、やりたいことを自分たちですぐにできるというのが大きなポイントです。こまごましたスクリプトであっても、SIerに外注すると1週間から1ヶ月ぐらいの時間と、数十万円単位から百万円単位の開発費はすぐにかかってしまいます。まず、そのタイムラグを解消できたことはお金に代え難い利点ですし、金額面でも、大小あわせてスクリプトを57本動かしているので、単純計算しても、今の時点で桁が一つ違うぐらいのコストメリットが出ている肌感覚があります。今後、DataSpiderの使い道は広げていく予定ですし、作成したスクリプトの改修も都度発生していますので、金額面では十分すぎるほどペイしているのは間違いありません。

小野 : お役に立てているようで、嬉しい限りです。今後は、使い道をどのように広げていかれるご予定でしょうか?

薄井 : 弊社にはさまざまな部門がある中で、今回はその一部にしかBIツールを提供できていません。全部門に提供できなかったのは、部門ごとに必要なデータが違っていたからです。これまでは裏側でプログラムを手作りしていましたが、DataSpiderを使って、可読性・保守性の高い仕組みに置き換えていく予定です。

また、BI用途以外にも適応業務を広げていきたいと思っています。具体的には、営業支援のデータを提供したいと考えています。そのためのデータは既にあって、今は人手を駆使して提供していますが、その時間の使い方は生産的ではありません。データを整形・加工するところはコンピュータに淡々とやってもらって、人間の手と頭は、考えるところに使ってもらえるようにしたいと思っています。それができていなかったのはわれわれの怠慢なわけですが、そういう場面でもDataSpiderにもっと働いてもらおうと思っています。

小野 : ありがとうございます。DataSpiderは、一度お使いいただくとさまざまな業務に活用されるお客様が多いです。例えば清水建設さんは、最初は夜間バッチでお使いいただいていましたが、昼間空いているのはもったいないと、一日フル稼働、骨の髄までご活用いただいている状態です(笑)。DataSpiderは、データが流れるあらゆるところで使えるソフトウェアですので、幅広い業務で是非ご検討いいただければと思います。

薄井 : サポートのレスポンスも非常によかったですね。弊社は製品購入前からトライアルで使わせていただいていましたが、そのときから迅速かつ丁寧に対応していただきました。

小野 : サポートも、国産ベンダーとして力を入れているところです。私はSun Microsystems(現Oracle)にいたことがありますが、そこでは、日本からの声はグローバルの一部という位置づけにしかなりえませんでした。もっとお客様に近い所で、きめ細かく柔軟なサポートを提供したいと思っていたので、そこを評価していただけたのも嬉しいですね。