【質問】地震だ! 火事だ! 洪水だ! 災害でボロボロになったHDDのデータ、救える?

細心の注意をもってPCを扱っている人でも、災害にはかなわない。しかも、地震で倒壊した家屋の下敷きになったり、水害で水浸しになったりしたPCは、自分でお茶をこぼしたり、ぶつけたりした場合とは比べものにならないほど悲惨な壊れ方に見える。火事にあったPCなんて、高温で炙られたうえに消火用の水もかけられて、データがどうなっているのかなんて、考えたくないくらいだ。

とはいえ、そうしたPCに重要なデータが保存されているケースもあるだろう。泥まみれ、水浸しのぼろぼろになったPC。専門家に送ろうにも、どうしてよいのかわからない状態だが、中のデータは救えるのだろうか? また、データを救いたかったらどうしたらよいだろうか?
  1. 運が悪かったとあきらめる
  2. 触らずに専門家を呼ぶ
  3. 迅速に応急手当をする

火事に洪水、災害にあったHDDからデータを救い出すことは可能なのだろうか? (イラスト ナバタメ・カズタカ)

【回答】あきらめないで応急手当を! 特に、大規模災害時は助けの手がある!!

災害でボロボロになったPCでも場合によってはデータ復旧事業者がデータを救出してくれる。それには、汚れた状態にあるPCをきれいな水で洗うことが先決だ。きれいになったPCは濡れた布にくるんで、データ復旧事業者に持ち込もう。

最近、大規模な災害時に各種メーカーが無償でPCのメンテナンスを行っているが、データ復旧事業者も同様のことを行っていることがある。災害で大変な時にそんなサービスを探す余裕はないかもしれないが、頭の片隅にでも置いておくとよいだろう。

災害にあったPC、とにかく水で洗って泥を落とそう

災害にあったHDDを救うには、まずはできるだけ早い段階で水洗いすることだ。PC本体がひしゃげていたり、HDDを取り出すための工具が手元になかったりという場合は、PCごと水洗いしてかまわない。純水レベルのきれいな水など用意できなくてもいい。とにかく泥まみれのPCを洗ってきれいにしてあげよう。

第2回で紹介したが、HDD内部の記録面にゴミがついているのはとても危険な状態なのだ。理想は完璧にきれいな水ですっきり洗い流すことだが、災害現場でそんなことが望めないのはわかりきっている。だったら、せめてドロドロの状態からは脱出させよう。時間がたって泥が乾き、こびりついてしまうとわずかな希望さえも消えてしまうかもしれない。

洗ったPCは、タオルでも毛布でもいいから、濡らした布にくるんで専門業者へ送ろう。泥だらけだったら輸送中に泥が乾いてダメになってしまうかもしれないが、素早く洗って湿らせたまま運んでもらえればデータを救える可能性はあるのだ。

携帯電話などでインターネット検索ができれば話は簡単だが、データ復旧業者が思い当たらない時はPCに詳しい知人を頼ろう。被災地の外に住んでいる人に電話をして、業者を探してもらえばよい。そんな知人はいないという場合に最後の頼みの綱になるのが電話帳だ。

おそらくどの地域の電話帳にも「データ復旧」とか「HDD修理」というようなピンポイントの項目はない。探すのは「パソコン修理」辺りだ。そこがたまたまデータ復旧を手がけているという可能性は低いが、提携業者があるかもしれないし、もしかしたら業者探しをしてくれたり、窓口になってくれたりするかもしれない。

災害で大変な時に「PCのことなんて思い出せない!」というのが実情だろう。また、「他人に迷惑をかけてまで救わなければならないデータなんてあるのか?」と思う人もいるかもしれない。しかし実際には、食べるモノや寝る場所に困っていても掘り出さずにいられないPCだってある。例えば、企業や役所のサーバなどだ。

水害や地震など、地域がまるごと被害にあうような大規模災害時には、復旧業者が「無償で復旧します!」と手を挙げていることもある。本当に大切なデータが失われようとしているならば、あきらめずに掘り出し、応急処置をしてぜひ業者に託してほしい。

対策できる天災「雷」には万全の準備を!

さて、災害にも被害例が多い割に対策がとれるものが1つだけある。それは「雷」だ。火事はどれだけ注意していても隣家からのもらい火という可能性があるが、雷だけは対策ができる。

なぜ雷の被害が大きいかというと、突然やってくるからだ。そして自宅に直撃しなくても、近くに落ちたり大きな雷が鳴ったりしただけでも、PCに影響を及ぼすこともあるのが恐ろしい。コンセントからPCが受け止めきれない量の電気が一気に流れ込み、壊れてしまうのだ。

これを回避するための対策は、遠くで雷が鳴り始めたら素早くPCを終了させ、電源ケーブルをコンセントから抜いてしまうことだ。伝わる線がなければ、PCに電気が流れ込む心配もない。一番簡単で、最も確実な手段がこれだ。PCだけでなくインターネット接続のためのルータやモデムも忘れずにコンセントを抜き、通信ケーブルも抜いておこう。

外出が多い場合や間に合わない場合に備えたいならば、「雷カード」や「雷サージ対策」と書いてあるマルチタップのようなものを買ってくればいい。使い方は普通のマルチタップと同じだ。

また、家電にとっては何でもない瞬間的な電圧低下である「瞬電」も、PCにとっては命取りになることがある。こちらの対策は、停電時でも蓄電池から一定期間電力を供給してくれる「UPS」が有効だ。雷ガード機能を搭載しているUPSもあるが、蓄電池を持っているだけに有効期間がある。

UPSは買ったらずっと使い続けられるわけではないし、いくつもの機器が接続できても、「雷ガード機能があるのは2つだけ」「UPS機能は1つだけ」というように、コンセントの役割が決まっている製品も多い。購入時はしっかりと調べ、定期的に買い換えなければならない。

雷ガードはPC以外の家電にも役立つし、UPSはブレーカーが落ちた時などにPCを正常終了する場合の時間稼ぎもしてくれる。「雷の多い地域じゃないから大丈夫」とタカをくくらず、ぜひ使ってみよう。

ワイ・イー・データに持ち込まれた火事にあったPC。同社はこのPCからデータを救い出した

空中分解したスペースシャトル「コロンビア」のHDDも復旧できた!

2003年に宇宙からの帰還途中に空中分解してしまったスペースシャトルが「コロンビア」だ。高度3,000mから地上に叩きつけられたものの中には、宇宙での実験結果を保存したHDDもあった。なんと、このHDDから90%のデータを取り出せたという。

2008年に米国Ontrackがこれを成功させたと報道された時、一緒に公開されたHDDの写真は一部は溶け、錆なのか土塊なのかわからないものがこびりついていた。博物館の展示物のようなイメージで、とてもここからデータを取り出せるとは思えない代物だった。

それでもデータ復元ができたというのだから、驚きだ。おそらくいくつかの好条件があったのだろうが、絶対に成し遂げるという気持ちと高い技術が合わさればこうしたことも可能になる。

災害にあった時、人は目の前の対応に追われるし、呆然としてしまうだろう。それでも、本当に大切なデータならばあきらめずに専門家を頼ってほしい。奇跡的かもしれないが、そうした事例も確かにあるのだ。