【質問】データを絶対に復旧したい! 信頼できる業者はどうやって探す?

PCやサーバのデータは不注意、事故、原因不明のトラブルなど、さまざまな原因で失われてしまうことがある。毎日バックアップをきちんと取っても、バックアップデータを保管している家やビルが火事や水害にあったらそれまでだし、データをバックアップした光学メディアがいつの間にかダメになっていたということも少なくない。しかし、仕方がないと諦められるデータばかりではない。

「絶対このデータだけは救い出したい! 何が何でもこれは必要!」というデータを復旧するとなったら、業者は慎重に選びたいところだが、大抵の場合は初めての経験だろう。さて、どのような業者なら信頼できるのだろうか?

  1. 検索して結果のトップに表示された業者がよい?
  2. 比較サイトで高評価な業者がよい?
  3. 電話で適切な情報を提供する業者がよい?

どのような業者なら大事なデータをちゃんと復旧してくれるだろうか? (イラスト ナバタメ・カズタカ)

【回答】ネットだけで探すのは無理! 電話の応対でスキルを探ろう!

インターネットはいろいろな情報を得ることができて便利だが、その正体をよく考えるとデータ復旧業者探しには向いていないことが見えてくる。

ネット上の情報は大きく「業者自身が発信している広告」と「第三者が公正に行った評価」と「利用者の生の声」の3つに分けられる。広告が当てにならないのはともかく、データ復旧に関しては残る2つも怪しい。

結局信用できるのは、自分の評価だ。業者に直接電話をして、「カギとなる質問にどう答えるか」、「どう対応してくれるか」を見極めよう。

データ復旧技術の公正な評価はネットでは見つけられない

企業で情報システム部門の担当者をしているという人でもなければ、高額でデータ復旧を依頼する機会はそうそうないだろう。ましてや、何度もデータ復旧業者を使ったり、毎回違う業者に依頼したりするケースは皆無のはずだ。

つまり、データ復旧業者の評価は「初めての依頼に基づくもの」か「おなじみの業者だけを使った結果に基づくもの」がほぼすべてと言える。同業他社を比較して語れる人はほとんどおらず、クチコミが当てにならないのだ。

そもそも、技術力を評価する基準が難しい。「復旧率95%!」などと掲げる業者もいるが、95%が何を基準に算出されたのかを考えると、真偽は怪しい。100GBのハードディスクのうち95GBを修復できたから95%なのか、失われたデータ100件のうち95件を修復できたという意味なのか、さっぱりわからない。

HDDは同じような状況で破損しても、破損状態は千差万別だ。例えば、100GBのHDDを2つ同時に1メートルの高さから落下させただけでは「同等の破損状態」にはならない。壊れ具合が異なるものを100個集めて修復テストをすることに意味はあるだろうか? さらに言ってしまえば、100GB中95GBを修復してもらえても、その中に必要なデータが含まれているかどうかはまた別問題だ。

自社技術をアピールする広告とはいえ、こんな不確かな数字を掲げていること自体がうさんくさい。ある意味、避けるべき業者を見分けるポイントになる。

検索エンジンにトップで表示されることも当てにはならない。多くの人が検索したり、紹介したりするページが上位に表示されるのは確かだが、提供しているサービス内容の良し悪しに関係なく検索結果の上位に表示させるテクニックもある。

また、比較サイトは誰が作ったのかわからないものもある。誰かがいいかげんに作ったかもしれないし、ある業者が自社を1位と表示するために作ったものかもしれないのだ。なかには、広告欄に業者のサイトを掲載しているにもかかわらず、「掲載会社からは広告費・宣伝費を一切いただいておりません」とうたっている比較サイトもある。

「ファイルリストは提供してもらえますか?」と電話で言おう

業者探しで最も頼りになる手段は電話だ。応対する人の態度や声の調子などからも、なんとなく信頼できそうかどうかは感じ取ることができる。さらに、注目したいのは返答の内容だ。

丁寧な言葉使いと明るい声で感じの良い女性だけれど、突っ込んだ質問にしどろもどろでは困ってしまう。言葉の調子はぶっきらぼうだけれど、質問にはしっかり答えてくれる業者は、技術者自身が電話をとっているのかもしれない。単純な丁寧さだけで判断せず、「どういう仕組みでデータを復旧できるのか」、「どういう手順で作業するのかな」、簡単な質問をしてみて様子を探るのだ。

もちろん、1社にだけ尋ねては意味がない。最低でも3社くらいは電話をして比較してみよう。同じ質問に対する答えがどれくらいバラついているのかを知ることができるし、数件目には聞くほうも慣れてくるから、「他社ではこう言われたけど、どうして違うのか」といった質問もできるようになる。

そして、切り札となるのは「ファイルリストは提供されるのか」という質問だ。この質問で、実際に復旧作業をする前にどれだけのファイルが復旧できるのかを判断できる。これが提示できないということは、「きちんと準備せずに一か八かで作業を始めてしまいます」と言っているようなもの。そんな業者には絶対に頼んではいけない。

ただし、安価なサービスを提供するためにあえてファイルリストを出さないという業者もある。例えば、企業向けサービスではリストを提供するが、個人向けサービスではコストを抑えるために出していないといったケースだ。そうした業者はリストが出せない理由を説明できるし、費用がかかってもよければリストを出すといった提案もできる。これなら安心だ。

人質を出す先は「日本データ復旧協会」所属業者がベター

HDDの復旧作業は一発勝負だ。「安いA社が失敗したら少し高いB社へ、それでもダメなら高額だけど技術のあるC社へ」といった乗り継ぎはできない。A社が手をつけて失敗したHDDは、どれほど技術のあるC社でも手の施しようがないことがほとんどである。つまり、必ず最初にアタリを引かなくてはならないというわけだ。

そこで、業者選びの手段の1つとして使いたいのが、データ復旧業界の健全化をめざして技術レベルの向上と正しい情報発信を推進している「日本データ復旧協会」だ。登録に資格が必要なわけではないが、この取り組みに賛同しているというだけでも安心できる。登録業者のサイトを回ってみると、1つとして「復旧率」という怪しい言葉は出てこない。どのような技術を使っているのかを淡々と語る地味なサイトばかりだが、信頼感はある。

データ復旧業者探しでは、「大事なHDDを預けるからには相手を見極めてやる」といった心構えが必要だ。大切なHDDを預けるということは、人質を差し出すようなもの。見かけの派手さや強気なPRに騙されることなく、技術力のある業者を選び出そう。