市場の変化や消費者のニーズを迅速かつ的確に捉える――これはビジネスを展開していく上で、当然であり、いつの時代も考えられてきたことだ。技術の進歩に伴い、大量のデータを収集・分析することも可能になった今、データに基づいた経営、すなわちデータドリブン経営が注目を集めている。

だが、実際のところ、データドリブン経営にはどのようなメリットがあるのだろうか。また、着手にあたってどのように進めればよいのだろうか。

本稿では、データドリブン経営の基本概念と4つのメリット、さらに実践に向けた6つのステップを説明する。

データドリブン経営とは

データドリブン経営とは、経営者や管理者が意思決定を行う際に、直感や経験ではなく、具体的なデータに基づいて判断を下す経営手法のことである。企業活動に関するデータを収集・分析し、その結果をもとに戦略の立案や業務の改善を進めていくわけだ。客観的なデータに基づいた精度の高い分析を行うことで、従来の経験や勘を重視した意思決定に比べ、より適切な判断を導き出せるようになる。

データドリブン経営が注目される理由

なぜ今、データドリブン経営が注目されているのか。現代のビジネス環境は、急速な変化を続けている。この変化に対応するために、経営者には迅速かつ的確な意思決定を行っていくことが求められている。これが、データドリブン経営が注目を集める理由の一つだ。

また、業務自体が複雑化していることも挙げられる。グローバル化やデジタル化を進める多くの企業では、業務の幅が広がり、あらゆるリソースの管理が一層難しくなっている。データドリブン経営により、こうした業務の状況を整理し、効率や生産性の向上が期待できる。

さらに、ビジネスの変化スピードが加速していることも大きな要因である。刻々と変化する市場のトレンドに即応していくには、リアルタイムのデータ分析がもはや欠かせない。こうしたことから、迅速かつ的確な意思決定を可能にするデータドリブン経営が脚光を浴びているのだ。

データドリブン経営とDXの関係

データドリブン経営とDX(デジタルトランスフォーメーション)は、現代の経営戦略において密接に関連している。

DXは企業のビジネスプロセスや文化、業務の効率化や新たなビジネスチャンスの発掘、顧客体験の向上などの手段としてデジタル技術の活用を推進するものだ。一方、データドリブン経営では先述の通り、ビジネス上のあらゆる意思決定においてデータを中心に据える。大量のデータの収集や分析には、デジタル技術の存在が不可欠であることは言うまでもない。

例えば、社内DXの実践による価値創出を目指すNECでは、全社的なエクスペリエンス改革として「働き方のDX」「営業・基幹業務のDX」「運用のDX」の3つを掲げている。このうち、営業・基幹業務のDXにあたるのがデータドリブン経営とマネジメント変革だ。同社のデータドリブン経営では、経営者がきちんと経営のハンドリングをできるように、CxO領域ごとのダッシュボードを100種類ほど用意し、そのためのベースとして、プロセスの標準化やデータの骨格となるベースレジストリの整備も行っているという(参考記事:必要なのは変わり続ける力と文化 - NECが推進するAI活用と三位一体の社内DX)。

データに基づく洞察を基に新規市場の開拓や既存市場での差別化を図っていく上で、DXとデータドリブン経営は切っても切れない関係なのである。

データドリブン経営の4つのメリット

データドリブン経営のメリットは多岐にわたるが、ここでは特に注目すべき4つのメリットに焦点を当てて解説しよう。

まず1つ目のメリットは、迅速かつ正確な意思決定が可能になることだ。データに基づく分析を行うことで、経営者や管理者は直感や経験に頼らずに、具体的な数値に基づいて判断できる。このため、業務改善や新たなビジネスチャンスの発見が速やかに行える。

2つ目は、顧客ニーズを正確に理解し、サービスの改善に役立てることができる点だ。顧客の行動データやフィードバックを分析することで、マーケティング戦略の最適化や新製品の開発が実現可能となる。

3つ目に、データドリブン経営では、客観的なデータに基づいて強みや課題を発見できる。得た情報は、経営資源の最適な配分や、組織全体のパフォーマンス向上に役立てられるだろう。

4つ目は、生産性向上と収益率の改善に寄与する点である。データ分析の結果を基に、プロセスの最適化やコスト削減を実施することで、企業の収益向上につながるはずだ。

このように、データドリブン経営には「迅速な意思決定」「顧客ニーズの把握」「客観的なデータによる強みや課題の発見」「生産性向上と収益率の改善」という4つのメリットが期待できる。以降では、それぞれについてもう少し詳しく説明しよう。

迅速な意思決定

迅速な意思決定が可能になることは、データドリブン経営の大きなメリットの一つだ。従来の意思決定は少なからず経験や直感に依存し、それが故に判断が遅れることも少なくなかった。しかし、データドリブン経営では、蓄積されたデータから客観的な分析が行われるため、結果を基に迅速かつより適切な判断ができるようになる。例えば、ECサイトの運営事業であれば、商品の売上データや顧客の閲覧履歴を分析し、最適なプロモーションや商品配置を即座に導き出すといったことが考えられる。

また、データドリブン経営は、組織全体での情報共有を促進する。統一されたデータを共有することで、異なる部署間でのコミュニケーションが円滑になるからだ。こうしたことも、意思決定のスピードが飛躍的に向上する一因だと言えるだろう。

顧客ニーズ理解によるサービス改善

ビジネスを展開していく上で、顧客ニーズの正確な理解は欠かせない要素だ。すでに多くの企業は、顧客が本当に求めているものや最適なアプローチ方法を見つけるために、継続的にデータを収集し、解析しているだろう。

例えば、ECサイトでは購入履歴や閲覧履歴を解析することで、個々の顧客に最適な商品を提案することが可能である。このデータに基づいた提案は、顧客の満足度を高め、リピート購入の促進につながる。また、定期的に顧客アンケートを実施し、そのフィードバックをサービス改善に反映させることで、顧客の声を直接経営に活かすことができる。

顧客ニーズを正確に理解することで、企業は競争優位性を確立し、マーケットシェアを拡大させることができる。さらに、顧客との信頼関係を深めることも可能となり、長期的なブランドロイヤルティの確保にも寄与する。データドリブン経営を成功させるためには、顧客ニーズの理解とその情報を基にした迅速なサービス改善が鍵となる。

客観的なデータに基づく強みや課題の発見

データドリブン経営の重要な側面として、客観的なデータに基づく強みや課題の発見が挙げられる。このプロセスにより、企業は感覚や経験に頼らず、実際のデータに基づいて自社の現状を把握できるようになる。また、具体的な数値や事実に基づいて分析することで、誤解や偏見を排除し、より正確な意思決定が可能となる。

例えば、売上データを詳細に解析することで、特定の製品やサービスがどの市場で最も受け入れられているかが明確になる。逆に、売上が伸び悩んでいる製品やサービスを特定し、改善の余地を探ることもできる。このように、データに基づく分析は、企業がビジネス戦略を最適化し、競争力を高めるために必要な情報を提供する。

さらに、マーケティング活動に関連するデータを活用することで、顧客のニーズや行動パターンを詳しく理解することができる。これにより、ターゲットマーケットに対するアプローチを洗練させるとともに、効果的なマーケティング戦略を構築することが可能となる。このように、データドリブン経営は、正確な情報に基づく経営判断を促進し、企業が成長し続けるための土台を提供するものなのだ。

生産性向上や収益率の改善

データドリブン経営を推進することで、企業は生産性向上と収益率の改善を期待できる。データ分析を用いて業務プロセス全体を見直し、効率化のポイントを明確にすることで、無駄な作業を削減できるからだ。例えば、在庫管理におけるデータドリブンのアプローチでは、リアルタイムの需要予測を行うことで過剰在庫や欠品を防ぎ、コスト削減につながる。

また、収益率の改善も期待できる。顧客データを活用してターゲットセグメントを精緻に分析することで、マーケティング施策の精度を高め、コンバージョン率を向上させることができる。パーソナライズド広告やキャンペーンを展開することで、顧客一人ひとりに最適な提案を行うというのはその一例だ。

さらに、データ分析は従業員のパフォーマンス向上にも活用できる。従業員に具体的なフィードバックを提供することで、個々の弱点と強みを明確にし、教育・訓練の効果の最大化を図るのである。このように、データドリブン経営は、企業全体のパフォーマンスを底上げする強力な手段になり得るのだ。

データドリブン経営を実現するために必要な3つの要素

データドリブン経営を実現するためには、次の3つの要素が欠かせないとされる。これらの要素を確実に整えることで、データに基づく意思決定の精度とスピードが向上するのである。

  1. データ活用基盤の構築:データを効果的に活用するためには、データの収集・蓄積から分析・可視化までを一貫して行うための基盤が必要である。これにより、様々なソースからのデータを適切に統合し、意思決定に役立つ情報へと変換することが可能になる。
  2. 分析ツールの導入:膨大なデータを迅速に分析し、インサイトを引き出すためには、適切な分析ツールが必要となる。これらのツールを活用することで、データの可視化やパターンの発見が容易になり、ビジネスの重要な指針を得ることができる。
  3. データを活用する文化の醸成:組織全体でデータ活用の価値を認識し、部門間でデータの共有や連携が適切に行われる環境作りが求められる。これにより、データに基づいた意思決定が浸透し、ビジネス全体のパフォーマンスを向上させることができる。

これらの要素をしっかりと整え、継続的に改善を図ることが、データドリブン経営の成功に不可欠である。以下にそれぞれについてもう少し詳しく説明しよう。

1.データ活用基盤の構築

データドリブン経営を実現するためには、まずデータ活用基盤の構築が不可欠である。データ活用基盤は、企業が保有するデータを一元管理し、迅速にアクセスして分析を行うための土台となる。特にデータが企業内に散在している場合、その集約と整理が最優先課題となる。

具体的な構築プロセスとしては、最初にデータの収集元を整理し、データウェアハウスやデータレイクといった収納先を決定する必要がある。これにより、データの一貫性と信頼性が確保できる。次に、データのクレンジングと標準化を行い、不適切なデータや重複データを除去する。

合わせて、データの可視化や分析に必要なツールの検討も行わなければならない。例えば、BI(Business Intelligence)ツールを活用することで、データの視覚化やリアルタイムの分析を容易に行えるようになる。また、セキュリティ対策も重要だ。データの機密性やプライバシーを保護する策としては、アクセス制御や暗号化技術の導入が考えられる。

データ活用基盤をしっかりと整備することは、企業がデータに基づいた意思決定を迅速かつ的確に行っていくための第一歩である。

2.分析ツールの導入

分析ツールは、収集したデータを迅速かつ効率的に解析し、ビジネスインサイトを提供する役割を果たす。分析ツールを効果的に導入するためには、自社のニーズや業務内容に適したツールを選定することが肝要だ。あまたある選択肢の中から、機能やコスト、ユーザビリティを比較し、目的にマッチしたツールを選びたい。

また、分析ツールの導入・運用にあたっては、相応のデータ分析の知識が欲しいところだ。並行して従業員への適切なトレーニングや、サポート体制の整備も行っておきたい。こうした環境を整えて初めて、ツールの効果を最大限に引き出し、データに基づいた精度の高い意思決定が可能となるのだ。なお、ツール導入後も継続的なメンテナンスとアップデートを行い、常に最新の技術を取り入れていくことがデータドリブン経営の成功につながる。

3.データを活用する文化の醸成

データドリブン経営を成功させる上で、思いの外重要な部分を担うのがデータを活用する文化の醸成だ。データを活用する文化とは、つまり、従業員一人一人がデータの重要性を理解し、日常業務にデータを取り入れる意識を持つということである。そのためには、まず経営陣が率先してデータドリブン思考を示し、モデルケースを提供することが求められる。

加えて、データリテラシーの向上が欠かせない。それには社内研修やワークショップを通じて、データの収集や分析、活用方法について教育するのが効果的である。また、データを共有するためのプラットフォームやツールを整備し、部門横断的なデータの利用を促進することも有効だ。経営層に限らず全ての従業員がデータドリブンなアプローチを日常的に行える環境を整えることで、データ活用が身近になり、全体のリテラシー向上につながるのである。

こうして醸成した文化の定着に役立つのが、「データに基づいた意思決定が評価される仕組み」を導入することだ。データを活用した成功事例を社内で共有し、成果を出した従業員やチームを正しく評価することで、データドリブン経営が企業全体に根付いていくのである。

データドリブン経営を始めるための6つのステップ

データドリブン経営を導入することは、多くの企業にとって大きな変革となる。以下に、その成功への具体的な6つのステップを示す。

  1. データドリブン経営を行うスコープの定義:経営においてどのような領域でデータを活用するかを明確にする。ビジネスゴールや業務プロセスを見直し、それに基づいてデータ活用の範囲を設定する。
  2. データの収集・蓄積:必要なデータを効率的に収集し、蓄積するための基盤を構築する。これには、顧客情報、取引履歴、ウェブサイトの解析データなど、さまざまなソースからのデータが含まれる。
  3. 収集したデータの可視化:ダッシュボードやレポートを活用し、リアルタイムでデータを把握できるようにする。
  4. データ分析:可視化されたデータを基に、具体的な分析を行う。このステップでは、データサイエンティストやアナリストが統計分析や機械学習の手法を駆使して、ビジネスインサイトを引き出す。
  5. 分析結果に基づくアクションプランの立案:得られたインサイトを基に、具体的なアクションプランを策定する。
  6. アクションプランの実行と検証:立案したプランを実行に移し、その効果を検証する。PDCAサイクルのような仕組みを導入し、継続的に改善を図っていく。

これらのステップを踏むことで、データドリブン経営の導入を円滑に進めることができる。以降では、各ステップを順に詳しく見ていこう。

1.データドリブン経営を行うスコープの定義

データドリブン経営を成功させるためには、まず経営活動全体のスコープを明確に定義することが必須である。スコープの定義とは、データ分析の対象となる領域や範囲を明確にすることであり、具体的には業務プロセスやビジネスユニット、顧客セグメントなどが含まれる。このステップにより、組織全体において一貫したデータ活用が可能となる。

例えば、製造業においては生産ラインの効率を最大化するために、各製造プロセスで収集されたデータを分析対象とすることが考えられる。また、小売業であれば、顧客の購買履歴や在庫管理データを基に最適な販売戦略を見つけ出すことが可能である。スコープを定義する際には、経営目標と一致する具体的なKPIを設定するとよいだろう。これにより、データ分析の結果が経営意思決定に直結し、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができる。

2.データの収集・蓄積

データドリブン経営を実現するための最初のステップは、適切なデータの収集と蓄積である。ここで言う「データ」には、内部データ(売上、顧客情報、在庫データなど)と外部データ(市場トレンド、競合情報、顧客のオンライン行動など)の両方が含まれる。

収集したデータを効果的に活用するには、データの正確性と一貫性が重要である。データの質を高めるには、データ入力の自動化や定期的なデータクレンジング(データの整理と確認)の実施が有効だ。また、クラウドストレージやデータベース管理システムを利用して、膨大なデータを効率的に蓄積し、迅速にアクセスできる環境を整えるのもよいだろう。

3.収集したデータの可視化

データドリブン経営を推進していく上で、収集したデータの可視化は重要なステップとなる。いくら正確なデータを大量に収集したとしても、ただ数字が並んでいる状態では十分に活用することはできない。データの可視化により、複雑な数値や情報を直感的に理解でき、意思決定プロセスを迅速に行うための基盤が整う。例えば、売上や顧客行動の変動をグラフやダッシュボードで視覚的に表示することで、問題点やトレンドを瞬時に把握できる。

主なデータ可視化ツールとしては、TableauやPower BI、Google Data Studioなどが挙げられる。これらのツールは、ユーザーフレンドリーなインタフェースと多彩なチャートタイプを提供し、複数のデータソースを一元管理できる点が特徴である。さらに、可視化によって得られたインサイトをチーム全体で共有することで、全員が同じデータに基づいて業務改善策を検討できるというメリットもある。データの可視化は、単なる情報の見やすさを追求するだけでなく、経営戦略をより効果的に実行するための強力な策となるのだ。

4.データ分析

データドリブン経営を実現するための要となるのが、データ分析である。データ分析を通じて、企業は膨大な情報の中から有益なインサイトを抽出し、ビジネスの意思決定に役立てることができる。 データ分析の第一歩は、収集されたデータの整理と可視化である。可視化されたデータは、経営者や意思決定者にとって理解しやすく、具体的な課題や機会を見つける手助けとなる。次に行うべきはデータモデリングだ。これは、収集されたデータセットを利用して、将来の動向を予測するための数理モデルを構築するプロセスである。

さらに、機械学習やAI技術を活用することで、より精度の高い分析が可能となる。これにより、リアルタイムでの意思決定や、予測モデルによる戦略の最適化が実現できる。 データ分析の成果は、その後のアクションプランに反映され、組織全体の生産性向上や収益性改善につながる。例えば、顧客行動の分析によって、マーケティングキャンペーンの効果を最大化し、さらなる売上向上を図ることが可能である。このように、データ分析はデータドリブン経営における中心的な役割を担っている。

5.分析結果に基づくアクションプランの立案

データドリブン経営において、最も重要なプロセスの一つが分析結果に基づくアクションプランの立案である。正確な分析結果を手に入れることで、客観的な現状分析や新たなビジネスチャンスの発見が可能となる。それに基づいた具体的なプランによって、企業は効率的な業務改善や市場ニーズへの迅速な対応を行えるのである。

それにはまず、データ分析の結果を多角的に検討する必要がある。これは、単に数値やグラフを見ただけでは得られない洞察を得るためだ。例えば、顧客の購買傾向を分析し、特定の期間や特定のプロモーションがどのように影響を与えたかを確認する。次に、その結果に基づいてターゲット戦略やマーケティング計画を立案するといった具合だ。

アクションプランはSMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)の原則に従って構築するとよいだろう。具体性・測定可能性・実現可能性・関連性・時間制約を持つプランが策定でき、実行可能性が高まる。定期的な進捗確認やフィードバックの環境も整えておくことで、柔軟にプランを見直し、適宜修正しながら進められる。

6.アクションプランの実行と検証

データドリブン経営を成功させるには、データに基づいたアクションプランの実行と、その結果の検証が必須だ。アクションプランを実行に移す際には、計画に基づく具体的な手順を明確にし、必ず担当者と締切を設定する。実行フェーズでは、綿密なフォローアップと問題の早期発見を心掛ける。

プランの実行が完了したら、その成果を検証するプロセスに移行する。検証では、設定したKPIや、目標とする成果を達成できたかどうかを評価するためのデータを収集・分析する。また、予測と実際の成果とのギャップを分析することで、次回のアクションプラン改善に役立つ貴重な知見が得られる。このように、アクションプランの実行と検証は、PDCAサイクルを繰り返し、企業の継続的な成長を促進するための重要なステップとなる。

データドリブン経営を成功させる「4つのポイント」

データドリブン経営を成功させるためには、次の4つのポイントを押さえることが必要だ。

  1. 専門スキルを持った人材の育成や採用:データ分析やITツールを活用できる人材がいることで、適切なデータ収集と分析が可能になる。
  2. 組織文化の醸成およびデータドリブンの実践力向上:データ活用を重視する文化が根付いていなければ、全ての意思決定がデータに基づくものとはならない。これには、従業員への継続的な教育やトレーニングが有効である。
  3. ITツールの効果的な活用:最新の分析ツールやプラットフォームを導入することで、データの可視化や分析が容易になり、迅速な意思決定を支援する。
  4. データはあくまで手段という意識:データの収集と分析自体が目的となってしまうと、思わぬ誤りを犯す可能性がある。データは経営課題を解決するための一助であることを常に意識して運用しなければならない。

以下、それぞれについてもう少し詳しく説明しよう。

1.専門スキルを持った人材の育成や採用

データドリブン経営を成功させるためには、専門スキルを持った人材の育成や採用が必要となる。データサイエンティストやデータアナリストといったデータ分析に特化した人材が重要な役割を果たす。これらの専門職は複雑なデータを解析し、経営判断に役立つ洞察を提供してくれるからだ。また、ITスキルや統計知識だけでなく、ビジネスの知見も求められることから、総合的なスキルセットを持つ人材が理想的である。

売り手市場の今、採用に関しては魅力的な求人内容を用意するしかない。データドリブン経営の重要性や企業のビジョン、新たなチャレンジの機会を強調することで、優秀な人材を引きつけることができるだろう。専門スキルを持った人材を確保することで、企業はデータ活用の高度化を図り、競争優位性を一層強化することが可能となる。

とはいえ、そうした人材は市場で大きく不足しているのが実情だ。そのため、社内で育成することも積極的に考えていく必要がある。一般の従業員はデータ分析の知識こそないかもしれないが、すでに自社の事業や業務を知っているという点はアドバンテージになるだろう。人材育成の方法としては、トレーニングプログラムの実施や外部の教育機関との提携が考えられる。実務に即した演習も行うことで、現場で直面するさまざまなデータ課題を解決する能力も養えるはずだ。

2.組織文化の醸成およびデータドリブンの実践力向上

組織全体の文化としてデータ活用を根付かせること――これもデータドリブン経営を推進していく上で必須である。そうした組織文化の醸成に向けては、経営者が率先してデータの重要性を示し、データ活用の成功事例を共有することが肝要だ。また、定期的な研修やワークショップを通じて、社員全員がデータリテラシーを高めるのも有効である。

データドリブンの実践力向上には、日々の業務において、実際にデータを活用する経験が必要だ。プロジェクト単位でデータを活用した意思決定を行う仕組みを構築してみるのもよいだろう。こうした取り組みを通じて、組織全体のデータドリブンの実践力が向上し、ビジネス市場における競争力を強化することが可能となる。

3.ITツールの効果的な活用

データドリブン経営を成功させるためには、ITツールの効果的な活用が不可欠である。具体的には、DMP(データ管理プラットフォーム)やMA(マーケティングオートメーション)ツール、CRM(顧客関係管理)ツールなどが挙げられる。これらのツールを用いることで、企業内外のデータを効率的に管理・分析し、迅速な意思決定や業務の最適化を行えるようになる。例えば、CRMを導入して顧客情報を一元管理し、ターゲット顧客へのマーケティング戦略を最適化するといった具合だ。

ITツールは一度導入して終わりではない。ツールの利用状況を定期的にチェックし、必要に応じてカスタマイズやアップデートを行い、常に最新の機能と情報を活用する姿勢が求められる。この過程で重要なのが従業員への教育だ。新たなツールの導入やアップデート時には徹底したトレーニングを行い、全員がきちんと活用できる環境を整えなければ導入効果は半減してしまう。

ITツールを適切に活用するためのポイントとして、目的を明確にし、自社に合ったツールを選定することが挙げられる。もう一つ、ツール間におけるデータの一貫性を保つことにも留意しておきたい。

4.データはあくまで手段という意識

データドリブン経営を成功させる上で大切なのは、データそのものに執着するのではなく、あくまで手段として用いる意識を持つことである。最終的な目的は、企業の成長や顧客満足の向上であるはずだ。データの活用に過度に依存すると、本来のビジネス戦略を見失いかねない。

データの分析結果を盲目的に信じるのではなく、現場の知見や市場の動向と照らし合わせて判断する姿勢が必要だ。例えば、あるマーケティングキャンペーンの結果が期待通りでない場合、その原因を解析データだけでなく、担当者のフィードバックや顧客の直接の意見も統合して検討するといった具合だ。

データを手段と捉え、その結果を元に戦略を練り直す柔軟性が、データドリブン経営の真の成功につながる。データの精度や量も重要であるが、それ以上にデータを活かした総合的なアプローチがビジネス成果を最大化するのである。

データドリブン経営で競争優位性を確保するために

繰り返しとなるが、データドリブン経営は、データに基づいた意思決定を行うことで、企業の競争力を高めるための強力な手段である。適切なデータ活用基盤を構築し、分析ツールを導入することで、迅速かつ的確な意思決定が可能となる。また、データを活用する企業文化も重要であり、この文化が根付くことで、従業員全員がデータの価値を理解し、積極的に活用するようになる。

データドリブン経営を実践することで、業務効率や生産性の向上だけでなく、新たなビジネスチャンスを発見し、市場競争においても確固たる優位性を保てるようになるだろう。現代のビジネス環境において、データドリブン経営は企業の競争力を維持するために不可欠な戦略なのだ。

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