モレスキンのノートを素材にした作品を展示「Detour」世界巡回展

黒一色のシンプルなカバーで、やや厚手の少しだけ黄みがかった白地のペーパーを綴じたモレスキンのノート。200年以上の歴史をもち、文豪ヘミングウェイも愛用していたという。その伝説的なノートを素材に、世界で活躍するアーティスト、建築家、映画監督、デザイナー、グラフィックデザイナー、イラストレーターたちが作り上げた作品を展示する世界巡回展「Detour」が東京・表参道で開催。

世界各地の五都市を巡回し、いよいよ東京に

この「Detour」プロジェクトはモレスキンと、ミラノを拠点に世界の貧困地域で教育普及活動を行う非営利団体「lettera27」によって2006年からスタートし、これまでにロンドン、ニューヨーク、パリ、ベルリン、イスタンブールと巡回してきた。無地のノートにカラフルなアートワークをスケッチしたもの、日々の記録をぎっしりと書きこんだもの、彫刻作品と言えるまでに変化したもの、会場には50人の作家が自らの創作活動のフィールドを生かしながら創り出した作品が展示されている。

ジャンルを問わずさまざまなクリエイターの作品を展示

自由に使えるモレスキン最大の魅力を表現

「Detour」がユニークなのは作品の展示法。筒状のトンネル空間に作品が入った透明のケースが設置されており、鑑賞者は白い手袋をはめてケースに開けられた穴から手を差し込み、作品に触ることができるのだ。そのため、鑑賞者はキュレーターが選んだページだけではなく、自分でページをめくって作品を眺めることができる。

会場に設けられた筒状のトンネル空間

またこれまで各会場で開催地にゆかりの深い作家を招聘してきたように、東京会場でも招聘された50人のうち半数近くが日本人の作家。テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんによるノートを美しくカッティングしたカットワーク作品など日本人らしい感性を生かした作品も多い。

空間デザインはロンドン展以来、イタリアのデザインオフィス「ゼータラブ」が担当

同展覧会キュレーターを務めるラファエラ・グイドボーノさんは、この巡回展を通じて、「モレスキンのノートは自分の好きなものを表現できる道具であり、自分が好きなようにクリエイトできる素材でもあるということを一番に感じて欲しい」という。

さらに続けて、「50人の作家は多種多様な分野から選びました。そうすれば、同じようにさまざまな分野で活動する人々に興味をもってもらえますから。それと、まだやりたいことを決めかねている若い人にも、たくさん見て欲しい。多種多様な作品からインスピレーションを受けて、"こんなこともできる"、"あんなこともできる"と自分の可能性をどんどん広げていってもらいたい」と語る。

「Detour」のキュレーター、ラファエラ・グイドボーノさん

確かにまっさらなモレスキンのノートを手にすると、自由な感性と想像力が広がっていくようでワクワクする。作品を眺めているとその時と同じ高揚感が得られ、自分もモレスキンのノートで何かを作り出したくなってくる。まさに、若いクリエーター必見の展覧会といえそうだ。

キュレーターが感じる「TOKYO」

最後に、キュレーターのラファエラ・グイドボーノさんに、東京で「Detour」を開催する意味を聞くと「今や時代の最先端をいっている街は、ニューヨークではなくて東京だから」と、うれしくもあり、ちょっと気恥ずかしくもある答えが返ってきた。「東京はアクティブでスピード感もあり、最先端の技術をもっている街だけれど、同時にどこか街の雰囲気がスローで、人々には立ち止まる余裕があるように感じます。日本には深く考える文化があって、そこがとてもいいと思う」。

つまり、"モレスキンのノートがよく似合う都市"ということなのだろう(と解釈したい)。だとすれば、それはかなり光栄なことだ。

展示作品の中から、ラファエラさんが注目する作品

ジョセッペ・アマート(アーティスト、デザイナー)「1年間の日記として、彼の大規模な建築プロジェクトNautoscpioについてスケッチやTO DOリストなどが細かく書き綴られている。ノートブックには彼の時間が凝縮しています」

須藤玲子(テキスタイルデザイナー)「繊細なカットワークは日本人らしい紙の使い方がとてもいい」

ヨープ・ファン・リースハウト(アーティスト、デザイナー)「「ノートブックを普段自分が作品に使っているゴム素材で密封して、まったく新しいものを生み出しています。ノートを素材として使っている好例」」

展示作品より

松井えり菜(アーティスト)

押井守(映画監督)

伊東豊雄(建築家)

河瀬直美(映画監督)

フェルナンド&ウンベルト・カンパーナ(デザイナー、建築家)

ジュリア・ローマン(デザイナー)