クリエイターにとって欠かせないアイテム、文房具。今回はドイツを代表する筆記具ブランド「LAMY」の企画展「LAMY ドイツデザインの精緻」を紹介する。展示・内容・構成などLAMYの哲学を深く感じさせる本展の内容に迫ってみたい。
ドイツを代表する筆記具ブランド「LAMY」の企画展が松屋銀座で開催中だ。企画展のディレクションは、初のアジア人デザイナーとして「Lamy noto」をデザインした深澤直人氏が担当。会場はLAMYのイメージカラーであるシルバーを基調にまとめられ、中央のショーケースに歴代のアイテムが展示されている。ショーケースの形がこだわりのひとつで、ロゴマークの頭文字「L」を模っていて、斜体がかかったロゴマークの角度が忠実に再現されている。
機能的でシンプルで美しく
ショーケースの万年筆やボールペンは、内部のパーツもバラバラに解体した状態で展示。外観のフォルムだけではなく、見えないパーツひとつひとつにも「機能的でシンプルで美しく」というLAMYの哲学が貫かれていることがわかる。また、壁際には各アイテムがメモパッドと一緒に置かれていて、1本1本を手に取って書き比べできるようになっているのがファンにとってはうれしいところだ。
深澤直人氏から見たLAMY
企画展のスタートに際して行われたオープニングには、LAMY本社から来日したダニエル氏に深澤氏も参加し、LAMYらしいストーリーを披露してくれた。
「プロダクトデザインを目指す人にとってLAMYは憧れのブランドで、僕のヒストリーの中にLAMYでの仕事が加わったのは感無量です」と話す深澤氏。その出会いは、日本の深澤氏のオフィスに社長のDr.ラミーがひょいと訪れたのが始まりだった。Dr.ラミーは自ら資料を並べて会社について丁寧に説明し、最後に「LAMYに興味がありますか」と尋ねたという。「もちろん」と答えた深澤氏に、Dr.ラミーは「では、次はドイツで会いましょう」とほほ笑んだ。約束どおりドイツの本社を訪ねた深澤氏に、Dr.ラミーは1日かけてゆっくりと工場を案内して回り、また最後に「LAMYに興味はありますか」と念を押す。「実に慎重に、じっくりと確かめ合いながら物事を進めていく姿勢にとても共感できましたね」(深澤氏)
最初の出会いからデザインがひとつ決まるまで1年程度を要したというから、確かに今の日本では真似ができないぜいたくな時間の進め方だ。
日本人と共通する「モノづくりへのこだわり」
実際に仕事をしてみて、深澤氏が強く感じたのがLAMYには日本人のもっているモノづくりへの思想と共有する部分があるということ。「オフィスや工場はどこもきれいに磨きあげられていて、ドイツの質実剛健なイメージそのまま。どの部品もつくりが精緻で、ねじのかみ合わせなど細かいところまでこだわる。このような姿勢が日本にファンが多い理由でしょうね」
欧州の老舗文具メーカーの多くがアフリカやアジアに製造工場をもつなかで、現在もドイツ国内での生産を頑なに守り続けるLAMY。それはドイツのモノづくりの哲学を守ることでもあり、そこに価値があると深澤氏はいう。
その一方で、アイディアやデザインはどこまでもモダンかつ革新的。常に新しい万年筆やボールペンを生み出し続けている。LAMYには、チャレンジする部分と大切に守る部分が共存しているのだ。この哲学が込められた万年筆やボールペンは、圧倒的な輝きを放ち、世界中のクリエイターを魅了してやまない。
LAMY ドイツデザインの精緻
会期 | 7月22日(水)から8月17日(月) |
---|---|
会場 | 松屋銀座7階・デザインギャラリー1953 |
入場料 | 無料 |