Microsoftは先日、Copilot in Windowsに「Copilot for Microsoft 365」を統合したと発表した。MicrosoftはCopilot for Microsoft 365の最低購入数要件を撤廃するなど、敷居を下げる取り組みを行ったばかりだ。Copilot for Microsoft 365のCopilot in Windowsへの統合もこうした流れの一環ではないかと見られる。今回はこうした有償サービスとCopilot in Windowsとの関係をまとめる。

連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照

Copilot for Microsoft 365をCopilot in Windowsへ統合

Microsoftは2024年2月5日(米国時間)、「Copilot for Microsoft 365 capabilities now available in the Windows desktop - Microsoft Community Hub」において、Copilot for Microsoft 365をCopilot in Windowsへ統合したと発表した。

前回の連載でCopilot in WindowsからMicrosoft Wordのドキュメントに対して概要生成といった指示を行っても機能しないことを取り上げた。今のところCopilot in Windowsから概要生成を指示できるのはMicrosoft Edgeなどのみだ。

このような状況になっている背景として、MicrosoftはOfficeに対してCopilot for Microsoft 365という有償のサービスを提供しているため、そのサービスとの差別化を目的として、Copilot in WindowsとOfficeアプリケーションとの連携はできないのではないかという可能性を取り上げた。こうした疑問に対するMicrosoftの回答が今回の発表である、Copilot in Windowsとの統合ということになる。

  • Copilot in Windowsへ統合されたCopilot for Microsoft 365

    Copilot in Windowsへ統合された「Copilot for Microsoft 365」

ただし、こちらの機能は無償では使うことはできない。Copilot for Microsoft 365のライセンスを所有しているユーザーに対して機能が有効になる仕組みになっている。

Copilot in Windowsに上部に「Work」「Web」というトグルは存在していないが、Copilot for Microsoft 365のライセンスを持っている場合には「Work」「Web」というトグルが表示されるようになる。

「Web」はAIチャットであり、本来のCopilot in Windowsとほぼ同じだ。機能としては従来のBing Chat Enterpriseと同様で、商用データ保護が備わっている。「Work」の方はCopilot for Microsoft 365への機能にアクセスするトグルとなっており、プロンプトからの書類の自動生成であったり、Web会議の要約作成であったりといった、Copilot for Microsoft 365で提供されている機能を直接実行できるようになっている。

緩和されたCopilot for Microsoft 365のライセンス条件

これまでMicrosoftはCopilot for Microsoft 365を企業向けライセンスのみの提供で、かつ、購入は300ライセンス以上という条件を設けてきた。1ライセンスあたり30米ドル/月であり、大企業でも気軽には導入できない価格帯になっている。

Microsoftは2024年1月15日(米国時間)、「Bringing the full power of Copilot to more people and businesses - The Official Microsoft Blog」において、ライセンス条件を見直し、1ユーザーライセンスから購入可能にしたことを発表した。対象となるのは次のプランを契約している企業とされている。

  • Microsoft 365 Business Premium
  • Microsoft 365 Business Standard

1ユーザーあたりのライセンス料は30米ドル/月と変わっていないが、1ユーザーライセンスから購入可能になったことで中小企業でも導入しやすくなった。さらに、上記プランに加えて、次のプランに関してもCopilot for Microsoft 365が利用できるようになった。

  • Office 365 E3
  • Office 365 E5

MicrosoftのCopilotに関する取り組みはかなりアクティブだ。矢継ぎ早に新しい機能やサービスの提供を始めているし、条件も早い周期で変わっている。

Copilot Proが登場

Copilot for Microsoft 365はどちらかと言うと企業向けの色が強いサービスだ。では個人向けのサービスはないのかと言えば、そうではない。

前述したCopilot for Microsoft 365の300ライセンスという購入条件を1ライセンスまで緩和するという発表と同時に、Microsoftは「Copilot Pro」という新サービスを発表した。こちらはどちらかと言うと、個人向けの新しいサブスクリプションサービスとなっている。

Copilot Proが提供する主な機能は次のとおりだ。

  • Web、パソコン、アプリ、モバイルなど複数のプラットフォームに対応
  • Microsoft 365 PersonalまたはMicrosoft 365 Familyを契約している場合にはWindows、Mac、iPadにおけるMicrosoft Word、Microsoft Excel、Microsoft PowerPoint、Microsoft Outlook、Microsoft OneNoteにおいてCopilotを利用可能
  • OpenAI GPT-4 Turboへの優先アクセス。ピーク時であってもGPT-4 Turboへの優先アクセスが可能で、より高速なパフォーマンスを提供
  • Microsoft DesignerにおけるAI画像生成機能を強化。より詳細な画質と横長画像に対応するとともに、1日あたり100ブーストを実現
  • 新しく提供されるCopilot GPT Builderにおいて特定のトピックにカスタマイズされた独自にCopilot GPTを構築可能

Copilot Proは1ユーザーあたり20米ドル/月で提供されている。

このようにMicrosoftは企業から個人まで幅広い有償サービスを提供し、Copilotの使用を促している。

Copilot in Windowsはデフォルトの機能

Copilot in WindowsはWindows 11とWindows 10にデフォルトで搭載される機能になった。この機能を使うのにサブスクリプションは必要ない。機能はすぐに使うことができる。

しかし、Copilot for Microsoft 365やCopilot Proとはちゃんと線引がされていることを認識する必要がある。MicrosoftはCopilotに関する新サービスの発表を頻繁に行っているが、無償で提供されているものに対してはかなり限定的だ。ライセンスを購入しているサービスとしての機能追加や機能改善が主になりつつある。

Copilot in Windowsからもこうした有償サービスで提供されているような機能を実現することはできるが、ある程度の制限が存在している。最大の制限はプロンプトに入力できる文字数が最大で2000文字に制限されていることと、文字、音声、画像以外の入力を受け付けないことだ。

Copilot for Microsoft 365で提供されているような機能を無償のCopilot in Windowsだけで実現しようとする場合、この2000文字という制限が大きな障壁になってくる。ちょっとした編集作業などであればこのCopilot in Windowsでもこなせるのだが、文書が少し多くなってくると利用するのがかなり難しくなってくる。その場合、有償版を検討してほしいというのがMicrosoftの考え方ということになるだろう。

有償機能のお試し版としての意味も

Copilot for Microsoft 365のサブスクリプション契約を行っていると、Microsoft WordやMicrosoft ExcelといったアプリケーションそのものにCopilotの機能が組み込まれるようになる。文書の構成も作成もシームレスに行うことができるし、Copilot in Windowsのような2000文字制限はないので使いやすい。

Copilotに限らず、ある程度のデータ量を前提とした処理を行わせようとした場合には何らかのサブスクリプション契約をする必要があるというのが現状だ。この状況はしばらくは変わらないものと見られる。

Copilot in Windowsはそうした有償サービスのお試し版という意味合いも強い。この機能を使って利便性を感じるようなら有償版も検討してほしいということだ。当然、コストに対して得られるメリットが大きければ契約する方が良いだろう。

本連載では無償で利用できる範囲での機能を主に取り上げていく予定だが、興味が出てきた場合にはそれぞれのプロダクトやサービスで提供されている有償のCopilotについても検討してもらえればと思う。

付録: ショートカットキー

ショートカットキー 内容
「Windows」+「C」 Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え

付録: 対応バージョン

OS バージョン
Windows 11 Windows 11, version 22H2以降
Windows 10 Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome

参考