FLAGSHIP2020プロジェクトの概要
FLAGSHIP2020プロジェクトの目標は、京コンピュータの後継となる日本の旗艦となるスパコン(当初はPost-Kと呼ばれ、その後、正式に富岳と名付けられた)を建造することである。また、社会的、あるいは科学的な問題を解くため、富岳で動作する広範なHPCアプリケーションを開発することが目標である。
理研のR-CCSが富岳の開発を担当することとし、ベンダパートナーとして富士通を選択する。
スケジュールは2014年にプロジェクトを開始し、2015年末に基本設計を行い、2019年のQ3-Q4に設計と実装を終り、製造、システムの設置、チューニングを行い、2021年のQ3ころから稼働と言うものであった。
そして、富岳がターゲットとすべき9つの目標分野を設定した。
- 革新的な創薬
- 個人向けの薬品や予防薬の開発
- 地震や津波による被害の低減
- 観測によるビッグデータを使った環境変動の予測
- 高効率のエネルギー生成、変換/貯蔵、使用
- 革新的なクリーンエネルギーシステム
- 高性能の新機能デバイス
- 近未来の製造業のための革新的な設計、製造プロセス
- 基本的な物理法則と宇宙の進化
図8には、各目標分野の研究の担当機関も書き込まれている。
そして、富岳の性能を表す次の3つの鍵となる性能指標(Key Performance Indicator:KPI)を選択した。
1. 非常に高い電力効率のシステムであること
- システム全体で30~40MWの消費電力で最大性能を発揮できること。
2. ターゲットアプリケーションの効率的な実行ができること
- いくつかアプリケーションで京コンピュータの100倍の性能を持つこと。
3. 広い範囲のユーザに取って容易に使えるシステムであること
FLAGSHIP2020プロジェクトを開始する前の状況を整理したのが次の図10である。その前のフラグシップスパコンの京コンピュータ開発プロジェクトは2006年から2012年に実施され、2012年-2013年はプランの実現可能性を確認するFeasibility Studyが4チームで行われた。そして、2014年の初めに汎用スパコンとアクセラレータを組み合わせる案が作成された。しかし、その後、開発予算の不足から、アクセラレータを使う案はキャンセルとなった。
(次回に続く)